5-5.コレクタ国騒動のその後
今日は日曜日なので2話投稿しますよ~!
グロー歴505年1月10日 雨
次の日、アリは確実に減っていた。
まだ何体かいるみたいだけどね。
どうも街中のアリは囲い込みだけだったみたいで、休息も食事もしなかった事から、次々と餓死していったみたいだった。
やはり、何者かが指示を出していた可能性が高いね。
しかも捨て駒扱いにするなんて···。
いくら魔獣とはいえ、やることが酷すぎるよね!
ただ、目的がわからないんだよなぁ~。
人々を避難所に隔離して、いったい何をしようとしてたんだろう?
まぁ、そこまで首を突っ込むわけにはいかないか。身バレしちゃうしね!
ということで、ホテルにはまだ誰も帰ってこないので、部屋でゴロゴロして過ごしていた。
店も開いてないしね。動きようがないよ。
「···なんだと!?それは本当なのか!?」
「はい!王城公園にいた巡回兵によると、何者かがアリが空けた穴に飛び込んでからは明らかにアリどもの動きが鈍ったとの事です!そして、弱って次々と死んでいるようです!」
「助かったのか···?このままでは滅亡も覚悟していたが、その飛び込んだ者のおかげでかろうじて助かったようだな。して、その者はいったい何者だ?」
「報告では『かわいい何かの着ぐるみを着ていた』とあるのですが、よくわかりません。
あの極限状態で幻覚を見たのかもしれませんが、正体は不明です」
「···意味がわからんな。そんなふざけた格好で何ができるというのだ?正確な報告ではなさそうだな」
「申し訳ありません。速報なので精度が悪いのかと思われます。後ほど詳報をお届けいたします」
「うむ、そうしてくれ。巡回兵には順次休息を取らせるようにしろ。アリがいないことを確認でき次第、避難警報は解除しておくように」
「はっ!了解!」
···まさかここまでの事態になるとはな。
ベースが兵を出せないほどの事は大魔王の時でもなかった。
···アリが出始めたのはここ2週間ぐらいだ。
禁制品の持込みを疑ったが、どうも違うようだ。
まさか巣が作られていたとは思わなかった。
あとはベースの兵が回復する事を祈るしかあるまい。我々にはそれしかないのだから。
···しかし、アリの本拠地を叩いた人物には興味があるな。
たった一人で殲滅が可能な戦力を持つとは一騎当千なんてものではない。
どうやってそんな力を得ることができたのかは謎だが、こちらに取り込んでおきたいというのはあるな。
まだこの国にいるのだろうか?
···出国審査を厳しくしてしっぽを掴んでやれるかは不明だが、やる価値はありそうだな。
···なるほど、そういう事か。
アリの観測兵が、クイーンが倒された状況を見ていたのは幸運だったな。
すでに事切れてはいるが、情報を引き出せて良かった。
···しかし、こいつは何者だ?
ふざけた白銀竜の着ぐるみを着ているが、強さが尋常じゃない。
まさかクイーンと親衛隊が、ほとんど抵抗できずに一瞬で殲滅とは···。
複数都市を殲滅できる戦力だというのに、まさかの結果だ。
間違いなく強さはあの忌まわしき整調者以上だ。
ただ、新たな整調者が選ばれたという話は聞いていない。
では、こいつは『神の遣い』か?だが、神がこんなふざけたヤツをよこすとも思えぬ。
それか『外の理の者』か?ただ、かつてこの世界に侵攻した連中とも違うように思える。
···わからぬ。情報が少なすぎるな。わかった事は、計画を邪魔する存在がいるという事だ。
ここでの作戦は完全に失敗となってしまったのは全くの予想外で痛い。
余の計画をここまで狂わせる存在···。
間違いなく最大の障害だ。整調者以外にこんなふざけた輩が存在したとはな···。
···計画を練り直す必要がありそうだ。
···ちょっと気になった情報が入ったからジスタ3国に向かった。
確か、アキくんたちも向かうと言ってたわね。アキくんたちの後を追うような形となってしまったなあ。
そしてコレクタに着く直前、ものすごい数のエコロアリが国を囲うようにうろついていたんだ。
ただ、うろついているだけで襲ってはこなかった。まるでここから先には行かせないと封鎖しているような雰囲気がしていたわ。
魔獣がこんな行動をとるなんて、かつての大魔王の時と似ている。コレクタの国内でいったい何が起きてるんだ?アキくんたちは無事なのだろうか?
その場ではどうしようもなかったので、遠回りして鉄壁の軍事国家であるベースへ向かうと、国内のあちこちで煙が上がっていた。
門は破壊されていた。何かが侵入したようだ。
私は破壊された門から中に入った。すると、そこにはエコロアリソルジャーという戦闘に特化したアリが軍隊とぶつかっていた。
アリが放つ大量の酸によって、兵士たちの装備が溶かされていき、弱ったところを攻められていた。
軍はかなり劣勢に立たされており、ゆっくりと後退しながら戦線をなんとか維持しようとしていたが、もはや壊走は時間の問題だった。
その時だ!急にアリたちの動きが鈍くなりだした。
いったいなにが起きたのだろう?私もベース国の軍も一様に驚き戸惑っていたが、軍はここが勝機とみて一斉に攻勢に出た。
なんとかベース国が滅亡するといった危機は回避できたようだが、ダメージは甚大だ。回復するのには相当の時間が必要だろう。
まさか鉄壁の軍事国家といわれたベースがここまで追い込まれるとは···。
本国に急ぎ報告を入れないと、同じことが起きた際に対応が後手に回るとまずいな!
そしてベースを出た私はさらに驚く光景を目にした。
コレクタ国を囲んでいたアリたちも弱っていたのだ。やはり何かが起きたんだ!
もしかして、アキくんたちがやったのか?
門は閉まっているが、外壁をよじ登ろうとしていた、動きが鈍っているアリを踏み台にしたらなんとか外壁を超えることに成功した。
···不法入国なんて密偵の得意分野よ?出国も簡単にごまかせるから問題ないわよ。
さて、情報収集をしましょうか。···ふむふむ、なるほど。
やはりアキくんたちの仕業だったようね。着ぐるみだなんて、あの子たち以外に考えられないものね。
ということは、ジスタ3国は結果的にアキくんたちによって救われたって事ね。
話の内容から、あの二人だってことまではわかっていないようね。もしバレてたら何かしらの情報工作するつもりだったけど、必要なかったようね。
ただ、もしかしたら出国審査を厳しくして、あの二人を取り込もうとするかもしれないかな?ちょっとだけ工作しておこうか。
やっぱりあの時に二人に警告しておいてよかった。そして、その警告をちゃんと守ってくれているようだ。
···ふふっ。もしかしたら今後旅先でこうやって身バレないようにこっそり人助けをしていくのかしらね~。
それはそれで面白いかもね!こちらもこっそり応援させてもらおうかしらね。
···本国には流せない情報が多いけど。
今回はアキくんの周りの人のお話でした。
アキくん以外の他者視点って、本作では初めてなんですよね~。
作者は、他者視点は多用するとお話のテンポが悪くなるだろうなぁ~?との考えがありまして、今後もこういった他者視点はあまり出さないつもりです。あっても今回のように短めでしょうね。
さて次回予告ですが、アリ襲撃事件が終わって少しずつコレクタの国も日常の風景に戻っていく中を観光したり食料調達したりします。そこで、今回の事件の被害の大きさを少しずつ実感していきます。
次回は本日夜投稿しますので、お楽しみに!




