5-3.しかし まわりこまれてしまった!
本日は土曜なので2話投稿するよ!
避難先だった王城公園を出て、すぐに出国のため門に向かったんだけど、魔獣レーダーを確認したら街中にアリがたくさん侵入しているのがわかった。
しかも、門の外にはかなりの数の魔獣がいることもわかってしまった。おそらくアリだろうね。
このまま向かうとエンカウントするのは間違いないと判断して、いったん建物の屋根に登ってリオと作戦会議をする事になった。
「リオ、街中にも外にもアリだらけになってるよ。このままじゃ国を出ることもできないね」
「そうだなー、これじゃあ逃げ切れないなー。近距離転移で出る事はできそうかー?」
「できそうだけど、アリのいる場所しか行けそうにないよ。ギリギリムリだった」
「う~ん、最後の切り札使っちゃうか?」
「変身する?でも、魔力剣使っちゃったし、戦闘も見られちゃったからバレちゃうよね?」
「確かになー。···そういえばこの国の軍隊って見てないよなー?どうしてだろー?」
「そう言えば、公園にいた兵士さんはあんまりいい装備してなかったね。って事は本隊じゃなかった?」
「まだ動いてない可能性が高そうだなー。もう少しここで隠れて様子を見るかー?」
「それならホテルにいったん戻る?アリは建物の中には入ってこないみたいだし、もし入っても単体だろうから籠城できそうだね」
「そうだなー。とりあえずこっそり戻って様子見とするかー」
「そうだね。屋根の上じゃゆっくりできないからね」
ということで、いったん宿泊先のホテルに戻った。入口は施錠されていたから、路地に入って近距離転移で部屋に戻ることにしたんだ。
まだ2泊分残ってるから転移が有効だったね!
···昼前になっても特に動きはなかった。
何かおかしいぞ?いくらなんでも遅すぎる。
街中までアリが侵入しているのに軍隊がやって来ないなんて、何かトラブルが発生したのかな?
魔獣レーダーを確認する限り、街の外壁は破られていないからなだれ込んでくるといった様子はない。
街中に侵入したアリは増えも減りもせず、街中を徘徊しているだけで、王城公園の避難民を襲おうとはしていなかった。
···どういう事だ?
なんでアリは王城公園の避難民には行かないんだ?襲ってきたのはボクたちが倒したヤツだけだった。
それにこれだけアリが入ってきたという事は王城公園の穴以外にもあるって事だ。
そこから新規にアリが来ないって、そもそも穴はどこにつながってるんだ?外だったらその穴を通って入ってきているはずだ。
···ということは、アリたちは人を襲うために侵入したわけではない?
何か目的があって、周囲を包囲しているだけ?
『しかし まわりこまれてしまった』以上にヤバい状況だ。
しかも、目的を持った魔獣だなんて聞いたことない···。いや、あるぞ!まさか!?
「リオ。ちょっと質問なんだけど、リオが倒した大魔王ムーオって魔獣を率いて攻めてきたって言ってたよね?」
「いきなりどうしたんだー?確かにそうだぞー。魔獣たちを統率して···。まさか!!ムーオが生きていた!?」
「大魔王以外に魔獣を統率ってできるのかな?もしできないなら、その可能性があるかもしれないかな?って思ったんだけど」
「アキ、アイリにつないでくれ!確認したいことがあるぞ!」
「うん!」
そうして緊急で『ちーむッス!』のアプリを使用してアイリさんにつないでリオと映像付きで通話し始めた。
『···その状況はかつてのムーオの時のようですわね。ただ、異なる点としては単一の種類の魔獣だということですわね。あの時はいろんな種類の魔獣がその特性を活かした攻め方をしてきましたけど、今回は単一の種類で単一の目的を果たそうとしている点ですわね』
「なるほどなー。アイリ、この前情報共有した際にムーオは消滅したけど死体は見てないって事だったな?」
『ええ。ですので確実に死亡したとは言えないですわ。まさか復活したとは断定できませんが、その可能性が出てきましたわね。
こちらとしても他にそういった兆候がないか、冒険者ギルドに確認してみますわ!
アキさん!リオ!ムリのない範囲で脱出を試みてくださいまし!』
「そうしたいんですけど街中アリだらけでして。そもそもなぜか軍隊が鎮圧に来ないんですよ」
『コレクタは軍隊を持っていませんわ。鉄壁の軍事国家であるベースに軍事力を委託してますの。···まさか、ベースは軍隊をコレクタに派遣できないほど攻め込まれている?』
「えっ!?それってマズくないですか?」
『どうやら滅亡寸前といった状態まで追い込まれてそうですわね···。アキさん!このままでは詰んでしまいますわ!そこで変身して強行脱出して下さい!時間がないですわ!』
「それって、変身してアリを倒しながら国を出るってことですか!?」
『いえ、そうではなくて全力で!アリを無視してです!逃げることに全力を注いで下さい!10分過ぎれば二人とも魔力が底をついて、その状況で襲われたら終わってしまいます!』
「でも···、滅んでいくのを見捨てるのって!···困っている人を見捨てるのは気が引けちゃうんですよ。多少の手助けはしたいんです!」
『アキさん!自分が何を言ってるのかわかってらっしゃいます!?あなたは整調者ではないのですよ!リオも『元』です!あなたがすべき使命ではないのですよ!』
「それでも!ボクは力を持ってるんです!人を助ける事ができる力を!全員助けるなんて出来もしない事を言うつもりはありませんよ。ちょっとだけお手伝いをするだけです。引き際は心得てますよ」
『私としては全力で否定したいところですが···。リオ!アキさんをフォローして下さいまし。そのホテルの一室を拠点に転移すればバレにくいと思いますわ』
「言われるまでもないぞー!アキにはムリさせないからなー!」
「···ありがとう、リオ!ボクのわがままを聞いてもらって···」
ボク自身わかってるんだよ?自分勝手だって。でも、このまま変身して全力で逃げて『この国が滅亡した』ってよそで聞いたら絶対に後悔すると思うんだ。
前にアクロ温泉でボヤいたよね?
『その時に思いつくできる限りのことを全部やろう』
って。それをここでもやらせてもらおう!
思ってた以上に深刻な状況の中、今回の事件の容疑者が浮上しましたが、実際のところはどうなのでしょうか?
トラブル巻き込まれる事は多々あるものの、自ら突っ込んでいくのはあんまりないですけどね。
さて次回予告ですが、アリ退治に乗り出そうとするのですが、どうやって場所の特定や女王を倒そうとするのか、作戦を立てて実行に移します!
次の投稿は今日中のいつかです。お楽しみに〜!




