4-9.シーケンスダンジョン(後編)
「うわーーー!···って、あれ?痛くない?」
「アキ!?···って、大丈夫かー?」
「これって見た目刃物だけど柔らかすぎる偽物だね。うん、ケガしてないよ」
そう、また引っかかってしまった。今回は落とし穴だ。
しかもこの落とし穴、底には刃物がズラリと仕掛けられていて、落ちたらもれなく串刺しになる仕掛けだったんだ。ただ、端にはご丁寧にハシゴが用意されて上に上がれるようになっていた。
その次は細い1本道で下が池になっており、道の上を歩くと左右から容赦なくサンドバックもどきが多数襲い掛かってきた!
身体強化を使ったけど、ボクもリオもサンドバックに吹っ飛ばされて池に落っこちた。
ここを通らないと2層目には行けない作りになってるので再度チャレンジすると、今度はタイミングを微妙にずらしたサンドバックを避けようと立ち止まったリオにボクが後ろから追突して、また池に落っこちた。
···なんだか昔あったアトラクションの殿様を倒す番組をやってる気分になってきたぞ?
「リオ、ここは一人づつ渡りきるまで待つってことでどうかな?」
「そうだなー。それがいいかもなー!じゃあ、オレは飛んで先に行くって事でお先になー!」
「ちょっとー!?リオ、ズルいよ!」
「仕方ないだろー!?せっかく翼があるんだからこういう時に使わないとなー!」
って、飛んで行ったリオ。しかし、そう簡単に問屋は卸さなかった!
サンドバック地獄を超えた先でホッとした瞬間に大きな金だらいが頭上に落ちてきて、痛恨のいちげき!そしてそのまま池に落っこちた。
···2段構えのワナだったか。ズルは許さないって事かな?
結局、身体強化5倍にして1歩1歩慎重に歩いていくことで通り抜けた。
もはやワナなのかアトラクションなのかよくわからなくなってきたぞ?
~2層目~
降りたとたんに今度はボクがワナを起動させてしまった。
ちょっと一息つこうと壁に手をかけた瞬間に何かを押した感覚がしてしまった。
すると、壁の反対側から弓矢が多数飛んできた!
リオはそのまま竜気でノーガードで防いだけど、ボクはまともに受けてしまった!
ただ、この矢も柔らか素材だったのでノーダメージだ。まぁ、身体強化5倍状態だったから本物でもぎりぎり刺さるか刺さらないか?ぐらいの防御力ではあったけどね。
その次のワナはリオが起動させてしまった。
今度は通路の壁がどんどん迫ってきてペシャンコにしてしまおうってワナだった!
慌てて全力で走り抜けようとしたけど、途中に油が塗ってあって思いっきり滑って転んでしまい···、壁にペチャンコにされてしまった。
ただ、こちらも柔らか素材だったので、まるでコンニャクを全身に押し付けられた感覚が30秒ほど続いて壁が元通りに戻っていった。
···もうやだ、このダンジョン!ストレスマッハなんだけど!?
「リオ、もう帰ろうか?疲れちゃったよ···」
「···そうだなー。そうするかー。オレも疲れちゃったぞー!」
「っていうか、ダンジョン経験者のリオですらここまでワナを全部踏み抜いちゃったね···。ここのダンジョンって、アトラクションじゃなかったらかなり高い難易度なんじゃない?」
「···いやー、実はワナ感知は超苦手なんだよなー。だから整調者のパーティーだった時は全部仲間に任せてたんだよなー」
「そういう事かぁ~。人には誰しも得手不得手があるからね。仕方ないよ。これ以外にリオはいいところいっぱいなんだからそんなに落ち込まないでよ」
「アキ~。そう言ってくれるのはアキだけだぞー!みんなそんな事言ってくれないんだからなー」
「それはみんなリオのいいところを知ってても口にしないだけだよ。じゃないとカーネさんもアイリさんもリオを助けてないよ?だからリオも気にしなくていいよ!」
「ありがとなー!じゃあ、帰るかー!」
「うん!今日のダンジョン探索で、ボクたちは全く向かない!って事がわかっただけでも大収穫だよ!」
というわけで途中リタイアしたんだけど···。帰り道でも同じトラップがあるのを忘れて、再度全部引っかかってしまったんだ···。
「お帰りなさい~!途中リタイアされたようですね?残念でしたけどリトライはいつでもできますから、今日の教訓を次回探索に生かして作戦立ててお越しくださいね~」
「あの~?このダンジョンって、クリアされた方っているんですか?」
「最初の1回でのクリアは数人いらっしゃいますよ~。ただ、ほとんどの方は10回以上リトライされている方がほとんどですね~。本格的なダンジョン探索と同じように事前準備をしっかりして、ワナの位置と回避方法をまとめて攻略法を編み出してからクリア!というのが王道でしょうかね~。クリア時の達成感がたまらなくて何度も楽しくチャレンジされる方がほとんどですね~」
「···なるほど、参考になりました。今日はこれで帰りますね」
「ありがとうございました~。またのお越しをお待ちしておりますね~」
···確かにスタッフのいう通りだよ。ダンジョン攻略なんて、何度も慎重に先に進み、ワナの位置や種類などの情報を持ち帰ってから次の探索の礎《いしずえ》にしてるんだよ。安全に攻略するのが目的だからね。
ボクたちは最初の『観光地』や『アトラクション』って言葉のイメージに完全に騙されてしまったなぁ~。
確かに命の危機になるようなワナじゃなかったよ?だから気軽にダンジョンアタックできるんだけど、それでも初めての場所の踏破ってストレスがマジでハンパなかった!
攻略本なんてないからなおさらだね。これで本物のダンジョンだったら魔獣まで襲い掛かってくるし、さらには魔力量の管理や食料の管理もしなきゃならない。
冒険者ってすごいんだなぁ~。
これまでの小説とかだと結構イケイケで攻略してる作品がそこそこあったけど、現実はそんなに甘くない。それが実体験できたのは大きかったよ。
この旅の先でダンジョン攻略する機会はないだろうけど、もしする事になったら専門家の人と一緒に行くことにしよう!
ボクたちだけじゃ命がいくつあっても足りないや。
最初の『観光地』という言葉の印象で楽勝モードで入ってみたらエライ目にあってしまいました。
この最初の説明って、いい加減な事が仕事だと多いんですよ。
そのイメージで現地に行くと『話が違うやんけ!!』って思い、準備しなおしたり出直したり···
そういった作者自身の経験をお話にしてみました。
···作者自身がイラっとした経験のお話なので、もしかしたら面白くなかったかもしれません。
そう感じられたのなら申し訳ありませんでした。
ただ、ここから先もいろいろとネタは仕込んでいますので、引き続き楽しんでいただけるとありがたいです。
さて次回予告ですが、温泉での湯治も終わりまして、旅の再開の準備をします。
そして、第4章最終話になります。
そのため、朝に最終話を投稿して夜にネタバレ集と設定資料集を投稿します。
というわけで、平日で仕事があるにもかかわらず3回投稿します!お楽しみに!




