3-12.アキ、···至る!
おはようございます。
夜勤という名のモンスターと約24時間戦ってまいりました。(仕事の)経験値とお金(お給料と夜勤手当)を獲得しました!
今回は第3章最終話ですので、寝る前に投稿して、夜にネタバレ集と設定資料集を投稿します。
大量の魔物が迫ってきていた。音が、気配が、素人のボクですらはっきりと感じることができるほどの脅威だ。
でも、ボクには···、いや、ボクたちには解決する『力』があるんだ!
『力には正しい使い道がある』
アンペル学園のアピアさんが講義で言っていた言葉だ。
今、その力を···。全力で解放する!!
「アキ···!?魔力制御が落ち着いているぞ!これならいけそうだぞ!」
「うん!!リオ、いくよー!!」
「おう!せーの!!」
「「インテグレーション!!」」
まばゆい光が辺りに放たれ、収まると白銀竜の着ぐるみを着たボクが立っている。
···今日はなんだか心が落ち着いている。前回のような怒りは全くない。
なんだか今までよりも力が湧き上がってくる感じだ。自分自身の力が、リオの力が信頼できる!今なら、もう何も怖くない!
···もしかして、これが合体変身魔法の極意なのかな?いや、考えるのは後だ。今は目の前の魔獣を片付けることが最優先だ!時間制限もあるからね。
『「10分で片づける!!!」』
ボクとリオの言葉が重なった!!
そして、ボクは魔力剣を10mの長さ、切れ味全開で展開し、さらにはボクの創作魔法で体と剣に電気を纏わせた状態で魔獣の群れに飛びながら突っ込んでいった!
今回は大規模魔法は極力なしだ。超必殺技のレールガンも使わない。使ったら意味ないからね。できる限り魔力剣でなぎ倒すんだ!
「秘技!螺旋斬!!」
突っ込んだ先で、360°回転して半径10m以内の敵を一刀両断する!
魔獣たちはいきなり突っ込んできたボクたちにビックリして動きが止まる。
その瞬間を見逃さず、ボクはさらに魔力剣に魔力をありったけ注ぎ、長さをさらに伸ばして100m以上に、そして逃げられないよう太くして時計回りに横なぎをし始めた!
もともと魔力剣は束の部分だけだからポケットに入るほどの小型軽量だ。回転速度も普通の武器よりも速いし、剣の先端だと角速度の関係で音速に近い速さになって、避けることすらままならない。
そのまま3周回転してから止まった。ほぼ9割近くはこの攻撃で壊滅している。
ただ、中には耐えた魔獣もいて、攻撃したのに再生が始まっている。再生速度が速いと攻撃が無意味になってしまう。
そんな特殊な魔獣たちがボクたちの周りに集まってきた!
「リオ!炎系、威力高めで範囲の広い魔法っていけそう?」
『おう!この魔法なら黒魔力は少ないだろうからいいと思うぞー!そのまま動かず周囲を一気に焼き尽くすぞー!!』
「了解!じゃあ、一気に火葬してやるぞ!!」
『「クリメイション!!!」』
ボクを中心として猛烈な炎が上がり、その炎が壁になって周囲に広がっていく!
炎の壁に巻き込まれた魔獣や魔獣の死体は焼かれながら、炎と一緒に巻き上がっていく。
炎が収まると、森の延焼防止のためにリオの創作水魔法のレインを広範囲に展開する。
ボクの周囲にはおびただしい数の魔獣が転がっている。動いているものは···、もはや存在しない。
そして、ボクは合体変身を解いた。なんとか制限時間ギリギリだった。
魔力は多少残った。それはリオの方が多めに負担してくれたようだ。いつもよりも疲労が顔に出ている。
「リオ、大丈夫?顔色悪そうだけど?」
「ふぅ~、いや、オレ自身かなりはりきったからなー。ちょっとキツかったけど、とりあえずは大丈夫だぞー」
「ムリさせちゃったかな?ゴメンね。次はちゃんとボクも負担するから」
「だ~か~ら~!気にするなってー!オレが勝手にやってるんだぞー!アキは何も考えずにオレを頼ったらいいだけだぞー!」
「ははっ!ありがとう、リオ!」
「おう!さーて、食後の運動にしては暴れすぎたけども、そろそろ出発するかー!」
「うん!ゆっくり温泉浸かりたいよ~。そうだ!貸し切り温泉ってあるのかな?それならほかの人を気にせずにいられるね!」
「どうだろうな~?まぁ、行って貸し切り温泉がある宿に泊まるかー!」
「そうだね!今から楽しみだよ~」
「ははは!アキらしいなー!元気が出てよかったぞー。じゃあ行くぞー!」
「うん!!」
こうして、ボクが放った超必殺技のツケは全て払い終わった。
スッキリしたよ、後始末が済んで。そして、変身の極意に少しかもしれないけど至れたかもしれない。
『魔法はイメージだ』、『心が弱ってると魔法に悪影響が出る』、どちらも痛いほど理解できた。
そして、肉体的にも精神的にも万全の状態で、そしてリオとの強固な信頼関係の上で変身した後の力はこれまで以上だった。大魔王だって今なら倒せそうかもね!
ただ、今回は人がいなかったから成り立ったんだ。人がいたら多分ここまでの力は出せないだろうし、精神的ダメージが大きいだろうから多用は厳禁だよ!
こうして今回の戦闘を振り返り、ひとつ成長を実感してからその場を後にした。
しかし、ボクたちが離れた場所を、呆然としながらも見ている人物が実はいたのにはこの時に気づいてなかったんだよ···。
···見てはいけないものだったのかもしれない。
あれは···、一体なんだったのだ?
あの二人と別れた後に変な胸騒ぎがして近くにあった高木に登って状況を確認した。私は遠くを見ることが得意だ。だから調査という仕事に向いていたんだよ。
すると、とんでもない数の魔獣が、私が追いかけられた場所からこちらに向かっていた。
このままではあの二人が襲われてしまう!いくら強い魔法が使えて、しかも少年ひとりはドラゴン族だとしても、あの数の暴力には適わない!
そう判断して逃げるよう一刻も早く警告しようと思い、木から飛び降りようとしたところ、あの二人がいた場所からまぶしいほどの光が出たのだ!
···何が起こったのかわからない。何かの魔法を使ったのだろうか?
そして気づいたら森のさらに奥で木がほぼ円状に倒れていくのが見えた。
いったい何が起きているのだ···?
さらに次は先ほどの円よりも広範囲の木がなぎ倒されていった。
そして視界が開けると、そこには白銀竜の着ぐるみを着た人物が立っていた。
顔はよく見えないが、背丈はアキさんと同じぐらいに見える。あれはいったい誰なのだ?
着ぐるみの周囲には動く気配のない魔獣が至る所に転がっていた。まだ生きているのもいるようだ。
そしてトドメなのか、見たことのない規模の炎魔法らしきものが放たれ、魔獣が巻き上げられながら焼かれていった。
アフターケアなのか、これまた見たことのないほど広範囲の雨を降らす水魔法らしきものが放たれた。
戦闘は終了した。その時間、10分弱。
魔獣は一体も残らず、文字通り殲滅された···。
私は木にしがみつきながら震えていた···。
あの力は···、ヒトが使うものじゃない。···そう、神の力!まさに整調者の力だ!!
いや、もしくはそれ以上か···?
そう思っていたら、着ぐるみが光りだして···。
なんと!着ぐるみがいたところにアキさんとリオさんがいたのだ!
もしかして、さっきのはあの二人がやったのか!?
でも、あんな魔法は見た事もない···。創作魔法だとしても、聞いたことがないぞ!
もしかして!あの二人は『神の遣い』なのか!?いや、神託は下されていない。
大魔王が討伐されて、整調者は全員任を降りたはずだ。
だとしたら彼らはいったい···?
···さすがにこの内容はギルドに正確に伝えるのはマズいと考えた。
ギルドに報告することで要注意人物になって情報が拡散してしまうと、我々と敵対する可能性が非常に高い。
万が一、彼らが世界に対して牙を剥いたとしたら、整調者が全員任を降りた現在、止める人も手段もない。そして···。
ただ、彼ら自身は非常におとなしそうで親切だったし、いい印象を持てた。
ならば、彼らにはこのまま旅を続けてもらった方がよさそうだ。
今日の真実は、一生私の胸にしまっておくことにした。
『白銀竜の着ぐるみを来た人物が魔獣の群れを殲滅した』なんて、おそらく話したところで信じてはもらえまい。
第3章 完
『···災難が続いた日々だったんだよなぁ。でも、自信を持つことができたし、リオとの強固な絆も築けた···。パスさんとの出会いも、今思えば運命だったんだよね···。まさかパスさんに全部見られていたなんて、当時は全く思ってなかったけどね···』
アキくんが変身の極意に一歩近づきました!
戦い方次第である程度はなんとかなりそうですね。ただ、今後はそう簡単にいかない強者が登場したりするので、その時にどう判断するのか?これも見どころになると思います。
ちなみに「10分で片づける!」のセリフは、作者が仕事でトラブルが発生した時に気合を入れるための言葉なんです(笑)!トラブルの内容によって時間を言い換えてますけどね。
そして、この戦いはこっそりパスさんに見られてしまいました。
このパスさんは、ネタバレ集にも書いてるんですが、アキくんとリオくんが勝手に設定を変更してしまった人物なのです。その内容は第4章にて明らかになります。




