3-9.その一言の失言が、アキたちの運命を変えた。
ちょっとだけ遅くなりました!
仕事終わる直前でトラブルに巻き込まれまして···
アキくん同様、作者もトラブル体質です(笑)
今日は部屋が空いてなくてダブルの部屋での宿泊となった。
フロントの人は『別に大丈夫でしょ?問題ないでしょ?カップルなんだしね~』となったので、まぁ訂正するとそれはそれでややこしい事になりそうだったから、ボクもリオも特に否定せずチェックインした。
部屋に入り、ベッドにお互い座って一息つく。
「ふぅ~。今回はカップルと勘違いされて良かったかな?男ふたりでダブルって、変な意味で勘違いされやすいしね」
「そんなもんかー?気にしなくてもいいと思うけどなー。どうせ会うのは今日だけなんだし、また会うこともないだろうから覚えてないと思うぞー」
「そんなもんかなぁ?これまでみんなボクが男だと知ってビックリしてたから強烈に印象深くなってそうだけど?」
「あー、確かになー。じゃあ、今回はアキが女の子だってみんな勘違いしているまま過ごせば印象に残らないんじゃないかー?」
「うーん···。それはそれでショックではあるけれどね。まぁ、リオの言う事も確かだし、今日はその作戦でいくか!」
「おう!普段通りしてれば大丈夫だぞー!」
···悲劇はその後すぐに起こった。
夕食を食べに酒場ヘ行き、今日はちょっとだけ酒を飲むことにした。多少のアルコールは精神的にもいいからね。多いとダメだよ!久々にチビチビ飲む飲み方にした。
陽気になったボクはリオと楽しく会話が弾み、これまでの悩みなんかふっ飛ばして楽しんだんだ。
そんなボクたちを見て、他の旅人からも声をかけられたんだ。
「やあ、キミたち!おたのしみのところ悪いんだけど、ちょっとだけ情報交換したいんだが、いいかい?」
「はい、こんばんは!どんな情報がいいです?」
「ありがとね~。お嬢ちゃんたちは北からやってきたのかい?」
「はい!そうですよ?」
「やっぱりそうか!今この北で山賊が出るってうわさがあってな~。山賊って本当にいるのかが気になってたんだ。で、山賊は見かけたかい?」
···今思えば、正しい情報を伝えなかった方が良かったかもしれない。酔ってたってのもあったんだろうけども、ボクは正直に言っちゃったんだ。
「あ〜、確かにいましたね。全部で11人でしたよ。1人除いて全員縛って放置しておきましたよ~」
「えっ!?それってどういうことだい!?縛って放置ってことは、キミたちが山賊を倒したって事なのかい!?」
その旅人が叫んでしまったがために、酒場が一気にざわつきだした!
やっべ!!やっちゃったか!?
「お嬢ちゃん!キミたちが山賊を退治したって、本当かい!?」
「それが本当なら明日出発しても大丈夫なんだね!?」
「しかし、キミたち2人で山賊11人相手にしたって本当なのかい?ボウズはドラゴン族だから大丈夫っぽいけど、お嬢ちゃんにはキツかったんじゃない?」
ボクたちのテーブルに酒場中の人が集まってしまった!な、なんとか誤魔化さないと!そしたらリオがゆっくりと席を立ちあがった。
「おう!オレが全員お仕置きしておいたぞー!だから安心しろよー。そうそう、縛った山賊は好きにしてくれていいぞー」
リオが真実を言ったことで、みんなが納得してくれた。やっぱり『ドラゴン族=強い』ってみんな思ってるんだね。
「そうなんだね!助かったよ~。もう2日も足止めされてたからなぁ~」
「ありがとう!まだ小さいのに彼女を守りながら山賊を懲らしめるなんてカッコイイじゃないか!!」
「お嬢ちゃんもこんなカッコイイ彼氏に守られるなんて···。うらやましいぞ~!」
「アツアツのカップルだね~。おばさんも若い時はこんな感じだったわ~」
···なんだろう?ボクが女の子に間違われるのはよくある事だと思っていたんだけど、リオが人型になってからはみんなボクたちが付き合っていてボクが彼女扱いされるんだよなぁ~。
いや、言い返したいんだよ!?『ボクは男です』って!でもそれやったらダブルの部屋に泊まっていると知られたとたんに変な関係に思われるじゃない!
もお~~!思いっきり恥ずかしいよ~!早く部屋に帰りたい···。
結局ボクたちはラブラブっぷりを捏造することで乗り切った。
だって否定すると『そんなこと言っちゃダメ!彼氏を泣かせる女は最低だ!』って説教されたんだもん···。違うのに···。本当は男なのに···。
さらには『どう?どこまで関係は進んでるの?』ってめっちゃ聞かれまくったんだよ!?みんな酔ってるし!どう答えろってんだよ!?
彼女を演じたボクのライフ(精神力)は根こそぎ削り取られてまた0以下になった。
部屋に戻ったボクはベッドに倒れこんでしまった。
「あ~、アキ。今回は失敗だったなー。女の子を演じても結局アキに精神的にダメージがいってしまったなー」
「···演じてないもん。途中から普通にしゃべっていたのに、みんなボクが男だって気付いてないもん。あぁ~、やっちゃったなぁ~。山賊倒したって口が滑ったのがいけなかったなぁ~」
「まー、そういうことになっちゃうかなー?でもオレたちで山賊倒したことに対してはみんな大喜びだったからいいんじゃないかー?」
「でも、みんなにボクたちの印象は強くなっちゃったよ?『山賊を倒したかっこいいドラゴン族の少年と人間の少女のラブラブなカップル』って。しかもみんなこれから北へ行くって事は前泊まった宿場町でもボクたちの話が広まるし、宿場町の人がボクたちを知ってたら『あ~!あのカップルね!』ってなるんだよ···。もうダメかもしれない···」
「う~ん。じゃあ、しばらくはキャンプで行くかー?街道から少し離れたところで誰も会わずに過ごすかー?そうした方がいいならそうするぞー」
「そうだね···、うん。人と会いたくなくなっちゃったよ。しばらくはキャンプしながらアクロ温泉に向かおうか」
「おう!魔獣レーダーを使って安全そうな場所でキャンプできれば大丈夫だろー!明日からはそうするぞー!って事で···。さーて、竜の姿に戻ったことだし、今日も添い寝してやるぞー!」
「あはは、ありがとう、リオ。今日もモフらせてもらうね」
「おう!気持ちよく眠るんだぞー。おやすみ、アキ」
そう、宿場町で泊まるからトラブルが起こるんだ。だったらキャンプにすればいいじゃない!って、パンがなければケーキを食べればいいじゃない理論で結論が出たが、これがさらにトラブルを招こうとはこの時思ってなかったんだよ···。
女の子を演じて印象を薄くしよう!作戦は失敗に終わってしまいました···。
もはや八方塞がりとなったアキくんは一時的な人嫌いになっちゃいました。
たった一言の失言がとんでもない事になるのは現実でもよくある話です。
ただ、何がフラグになってしまうのか、相手の気分次第の場合もあるので避けようがない事もあるんですよね。
某フェリーの歌に『一人きりになりたい時~』とあるように、誰しも人を避けたい時もありますから、その時は気分転換に見知らぬ土地へ出かけるのもいいですよ?船旅は作者おススメです!
さて次回予告ですが、キャンプ生活を始めたものの、ここでもトラブルがアキくんに容赦なく襲い掛かってきます(物理)。ただ、そのフラグを建てた犯人は···?
どうぞお楽しみに!




