ナツ編-03.(番外編)アキ、ナツの店の匠になる!?
ナツが王都で開く飲食店の場所と許可が、結婚式の段取りを始める前に決まったんだ。
ボクはナツとハルと一緒に王都に転移して、さっそく内覧をしたんだ。
以前は喫茶店だったみたいだね。結構古い作りのお店で歴史を感じるよ。客席定員は30名。夫婦が経営するなら最大級だね。
ただ、ナツは喫茶店ではなくて飲食店としていろんな料理を提供したいんだって。そうなると、今のままの厨房だとちょっと不都合が多いね。
「ナツ?予算はどれぐらい?」
「···1000万ジール」
「そ、そんなに稼いだんだ···。ボクよりも儲けるのか···。って事はフユも!?ま、まぁ、それは置いといて、それだけあれば十分だね!どんな厨房にしようか?」
「···パパの元の世界の厨房みたいなかんじにしたい」
「あぁ~、確かに効率を追求してるからなぁ〜。わかったよ!じゃあ、調べてみようね~」
調査した結果、この店には水道が来てるから水の確保は問題ない。ただ、ナツは水魔法も使えるから、使わない魔力はもったいない!水道代は元の世界よりも高いしね!
そこで、『飲食外用の水』という工業用水っぽい概念を導入した。2階には大きなベランダがあるし、貯水槽を新設して飲食に供さないお皿洗いやお風呂、トイレの洗浄水は水魔法で2階の貯水槽に貯める方式にした。元の世界で建物管理してた経験からすると、1日5立方メートルぐらいだろうから5トンだけど、柱は太いから強度的に問題ないだろう。
水魔法は清潔だけど、純水だからミネラルを含んでいないのでマズすぎるしね。
あと、下水はシヴ湖に垂れ流しだったんだよ!下水道はここには来てなかったようだ。これはさすがにマズいので、簡易的な『浄化槽』を新設する方向だ。アクロの排水処理場からスライムくんを分けてもらったんだよ。
元の世界で下水道がない場所には浄化槽って言う装置を設けて下水を処理して川に流すんだ。微生物による分解洗浄効果が、このエーレタニアではスライムくんが担ってくれている。このスライムくんは優秀で、元の世界の浄化槽で必要なブロワ(送風機)も必要なく、月1回分裂するのでその分裂体を取り出して倒せば畑の肥料に早変わり!
···とんでもなく便利な生物をエレさんは創ったなぁ〜。
この浄化槽は店の裏側に新設するんだよ。そこまでの配管工事が必要だね。
トイレは汲み取り式から水洗式に一気に進化させた!ポールタップ止水のタンク式だぞ〜!ホントはシャワートイレにしたいんだけどね···。実はパスさんにお願いして魔道具として開発中だぞ!
さて、厨房レイアウト変更だけど、まずは半分以上を占める食糧庫は全撤去だ。ナツが無限収納ポシェットを持ってるから、そこで保管できるし、棚卸しも楽チンだぞ~!
空いた空間は休憩所とちょっとした物置にしておくよ。
そして、ここからがリフォーム本番だ!厨房を現代日本風にっていうオーダーだからね。
効率よくするには動線を整理して、可能な限り交差せず、その場で動かずに調理タスクをこなせばいい。
ここで料理の手順をおさらいしようね!
・食材の洗浄
・食材の加工(包丁で切るとか)
・混ぜたりする
・焼くまたは煮込む
・盛り付け
・提供
大まかにはこんなものかな?
今回は厨房区画がほぼ正方形なので、時計回りにぐるぐる回る方式にした。これなら動線がぶつからないからね!
食材の洗浄及び加工コーナーを広めに作り、コンロ・オーブン区画で調理し、さらに回って盛り付けを行い、完成した料理を提供台に乗せて持っていってもらう!
うん!完璧じゃないかな?将来的にはテイクアウトも可能なように、ドライブスルー方式で注文して、某ファストフード店と同じように軽食が台の上を滑るように移動させれば最高だね。
そうそう!床は防水仕様にするよ!簡単に床を水洗いできるようにしておくんだ。排水溝にはグレーチングでフタもできるし、排水口には引き上げる時に便利な取っ手付きのザルも用意したから、掃除は楽ちんだぞ!
簡易な図面をボクが描いていくと、ナツは食い入るように見つめていた。
「ナツ?こういうのはどうかな?」
「···完璧。···やっぱりパパにお願いして正解だった」
「ははは!そう言ってもらえると嬉しいなぁ~!じゃあ、この図面持って、一緒に工務店に発注しに行こうか!」
「···ん!」
ちなみに発注する工務店は女王様御用達のお店で、一般客はお断りの店らしい。女王様のはからいで、特別に請け負ってくれるんだ。
それに、パスさんに開発をお願いしてる資材も投入するからね!エーレタニアで最先端の仕様に『魔改造』だ!
棟梁さんからは···、
「はぁ~、とんでもない仕様じゃねえか···。こんな飲食店は見たことないぜ。城で改装工事が入ったら提案してみるわ!コイツはいい勉強になりそうだぜ!」
って、気合いが入ってたね。
さて、ボクは皇国へ行って技術開発部に依頼していた試験素材や試験機器、エーレタニアには存在しないステンレスのグレーチングを受取りに向かった。
技術開発部の人たちも興味津々で、寝る時間を惜しんで没頭したらしいよ。みんなめっちゃすがすがしい笑顔だったけど、目の下のクマがすごい事になってたし···。
あとはレジだね。こちらはエレさんが開店祝いで用意しちゃったよ!POSシステムまで入っていて、計算できないヨウくんのためにメニューの写真をタッチしたら自動計算されるという優れモノだ!しかもナツのスマホにもアプリがインストールされており、レジのメニュー変更、仕入れ管理、在庫管理、売上管理、税金申告書作成補助機能付きという、エーレタニアでは考えられないほど高機能だ!
···エレさんはフユとナツには激甘だなぁ~。人になったとはいえ、神様の能力がわずかながら使えるらしいから、惜しみなくやっちゃったらしい。
そして!元の世界の概念を大量に取り入れたナツのお店のリフォームは竣工した!それでは某リフォーム番組のように全体を見てもらおうか!
元々老夫婦が経営していた喫茶店だったこのお店は···、
なんということでしょう!!
最新の設備が整えられた飲食店に生まれ変わったのです!
動線を整理して調理工程ごとに時計回りで回っていき、完成すれば即提供してすぐに次の料理に取りかかれるのです!
コンロとオーブンは皇国製の最新魔道具。上の排気フードには、万が一火災になった時にボタン一つで消火剤が降ってくる、日本の厨房フード消火設備を匠が考案して採用!なんと!エーレタニアでは初です。
お店の入口カウンター横には、将来のテイクアウト用のカウンターを設置。なんと!そのカウンターに向けて料理が滑って手元にやってくるではありませんか!これもエーレタニア初の設備です!
さらに、浄化槽という排水処理設備を新設!これまで垂れ流しで環境に悪影響を与えていたお店は···、
なんということでしょう!!
汚水を流さない周辺環境に優しいお店に生まれ変わったのです!!
店内のトイレも水洗仕様になり、快適空間を実現しました。
店内および居住スペースは空調完備!匠が皇国技術開発部に冷凍サイクルを伝えてできたMHP(Magic Heat Pomp)試験機が設置されました!冷房時は排熱で湯を沸かし、暖房時は排熱で氷を作成するという、理想的な熱リサイクルを試験ながらも実現しました!
氷魔法や火魔法使用よりも使用魔力は2割に激減!魔力的にもエコロジーを匠は追求したのです。ここまでの設備はお城でもないでしょう!
レジカウンターには元神様からの粋なプレゼントが。なんと!メニューの画面をタッチするだけで自動計算するというPOSシステムが導入されました!計算できないヨウくんでも間違いなく(打ち込み間違いは避けられない)、店舗経営が楽になりました。
エーレタニア初の設備がこんなにてんこ盛りな今回の匠のリフォーム、なんとか予算内に収まりました(※デザイン費は匠が描いたので含まず、ちなみにボクとハルで少し資金援助)。
※皇国技術開発部の長期耐久試験として資材は一部無償提供かつ、定期的に観察及びメンテ付き
果たして、匠の仕事に、ナツとヨウくんはどのような感想を述べるでしょうか?
「···究極」
「さっぱりわからねえ···。なんだこりゃ?」
···ちょっとヨウくん?某リフォーム番組みたいにもっと感動してよ!そのノリでやったんだからぁ!!
某リフォーム番組的にやってみましたがいかがでしたでしょうか?
ナツちゃんの要望通り、現代風の厨房を可能な限り再現してみましたが、浄化槽やMHPはやり過ぎかなぁ~?と思ってます。まぁ、異世界転生あるあるってことでいいでしょう!
ちなみにエアコンはコンプレッサーの動力によってEHPやGHPと呼ばれることがあります。家庭用などは電気なので頭にE(Electric)が入り、大型の建物用には電気代を抑えるために都市ガスを使用するものもあり、頭にG(Gas)が入るんです。今回は魔力なので頭がMなんですね~。
ただ、実際に排熱を利用してってのはかなり難しいんですが、それは魔法だから!ということでご容赦ください(笑)!
あと、エレくんがさらっとPOSレジをプレゼントしていますが、神様を辞めても多少は神の力が特典として使えるんです。わずかな力を惜しみなくナツちゃんに注いだ結果がレジでした!
さて次回予告ですが、ナツちゃんのお店が正式にオープンします!ナツちゃんの料理の腕で魅了されてしまったお客さんたちのおかげで初日から大人気店になってしまい、店内は大混乱になってヨウくんが疲れ切ってしまいます(笑)!どう対策するのでしょうか?
それではお楽しみに~!
※2026/3/18追記
ナツちゃんのお店は作者の別作品である『税務署長は忙しい!』の時代である今から160年前には存在していた建物です。年季入ってますが、この国には地震がほとんどないので残ってるんですよ。
ですのでその設定を本作にも反映させました。
ちなみにこのPOSシステムですが、なんとスマホアプリでかなり近いものがありました!
即売会用のアプリでして、商品の絵をタッチするだけで計算してお釣り計算、在庫管理までできちゃうんですよね~。さすがに税金申告書作成はできませんけどね。
これ、書いた時にはこのアプリをまったく知らなかったので宣伝ではありませんよ。このアプリは作者のスマホに入れて文学フリマにて活躍予定です!




