2-3.観測者(オブザーバー)
本日2回目の投稿です。
ここから読み始めた人はこの前に1話投稿してますので、そちらから読んでくださいね。
ボクとリオは、連れてこられた屋敷の一室の外にあるテラスへ招かれた。メイドさんがいい香りのするおいしい紅茶を入れてくれたよ。
「じゃあ、自己紹介するとしようかね。あたしはリン。またの名を観測者とも言われるね」
「ボクはアキ。こっちはリオです。あなたが見抜いた通りのものです」
「ひっひっひ!正直でよろしい!あたしゃね、観測者なんて力があるもんだから、いわゆる『鑑定』が常時発動してるようなもんなのさ。だから、その人を見ただけで情報は丸裸さね。あたしにはウソは通じないよ」
「そういうことでしたか、納得しましたよ」
「ばあちゃん、オレはリオ。あんた観測者って言ったな?オレの整調者と同じく神に関係あるのか?」
「そうさねぇ~。関係あるといえば関係あるし、ないといえばないね」
「えっ!?それはどういうことですか?」
「あんたたちの言葉で言えば、あたしも『外の理の者』なんだよ。このメイドもそうだよ」
「ええっ!?」
「なんだって!?」
びっくりしたよ!ボク以外にも外の理の者がいたなんて。まぁ、たった一人だけしか存在しないってわけでもないからいいのかな?
「まぁ、アキの世界とは異なるけどね。あたしは今から60年前にこの世界に送り込まれたのさ。あたしの世界の神にね」
「別の世界の、神?」
「そう、あたしの目的は『観測すること』。あたしに与えられた観測者の力でこの世界の動向を調べ上げて、あたしのいた世界に逆侵攻してこないか?その兆候はないか?を調べて伝える役割を負わされてたのさ。それももうまもなく終了するけどね」
それって、別世界からのスパイって事だよね?まぁ、情報を仕入れて伝えるだけで、アニメの家族のような展開にはならないんだろうけどね。でも『逆侵攻』ってことはもしかして···。
「あなたの世界は500年前に侵攻してきた『外の理の者』ということなんですか?」
「ほう!なかなか鋭いじゃあないか!『逆侵攻』の言葉で気づいたね?その通りさ。
こっちの暦で500年前にあたしのいた世界が滅亡の危機に瀕した時に『別の世界へ逃れる』という方法を、多数の犠牲を払ってまで強行した神とバカどもがいたのさ。
結局作戦は大失敗。世界の滅亡も、あたしたちの人口が激減したことである程度解決されちまったのさ。皮肉なもんさね。
そしてその後、別の世界に侵攻したってことは逆襲されるかもしれないって別の神は考えた。
そこで、大きな穴を開けてしまって行き来がしやすいこの世界の情報を得ることでなんとかできないか?と考えた結果が観測者さ」
···とんでもない話が出てきたぞ?これってボクたちが聞いて良かったのかな?世界の根幹にかかわる話だと思うんだよね。
でも、世界を渡る技術があるってことは、もしかしてボクも元の世界に戻れる可能性があるって事かな?
確かに神様は『不可能に近い』ってぼかしたけど、『不可能』って言いきってないんだよね。でも、もうこの世界が気に入ってきたから帰りたくはなくなってきたんだよね。···トラブルは勘弁してほしいけど。
お茶菓子をいただきながら、話は続く。このお茶菓子ってリンさんの世界のものかな?だとしたらここを出ると食べれないってことだけどね。
「あたしももう寿命だし、もうすぐしたらここを引き払って神に頼んで元の世界に帰るのさ。
そんな時にあんたが通りかかったんだよ。通り過ぎる人を鑑定してもひとっつもいい情報はないんだけどね、あんたの情報はとびっきりだったよ!
まさか、あたしの世界以外からやって来たなんてね!しかも複数の神器持ちときたもんだ。死ぬ前にいいものが見れたんで、あんたにはあたしの正体をバラすことにしたんだよ。
どうせこんな情報、あんたもそうだしこの世界の奴らに知られたからって、どうにもできないしね」
「そうだったんですね。じゃあ、ボクの世界について少しだけお伝えしますよ」
「興味深いねぇ~。ただ、話が長くなりそうだね?もうすぐ夕方だ。日を改めて教えてもらえるかい?そんなすぐには出ていかないから、あんたの都合のいい時にあの店にやって来な。その時に面白いものをみせてやるよ」
「わかりました。それではまた近日中に伺いますね」
「ありがとよ。冥途の土産にいい情報を手に入れられそうであたしゃ満足だよ」
「そう言ってもらえると。じゃあそれではまた」
「ああ。玄関···って、表の店まで送るよ」
「ありがとうございます。それでは今日はさようなら」
そう言って戻ったら夕方だった。時間の進み方がちょっと違うのかな?でもスマホの時間はあってるようだ。不思議な場所だったなぁ~。
「リオ。今日の話、カーネさんとアイリさんにしておく?」
「もちろんだぞー。こんなヤバイやつが町中に潜んでいたなんて問題になる可能性が高いぞー。ただ、実害はなさそうだから、情報共有ってことでいいと思うぞー」
「そうだね!そうするよ。はぁ~、今日は疲れちゃったよ。思いがけない事になったけど、楽しい町中の散策だったよ!」
「オレは疲れたぞー。早く帰ってメシ食いたいぞー!」
「そうだね!それじゃあ、帰ろうか!」
前回とこの回は自分でもビックリするぐらいサクサク書けてしまいました。
まさにキャラに自我が芽生えて勝手気ままに暴走した『最初』の回でした。
書いてた作者自身が「これって本当に自分で書いたの?こんなのが書けるの?自信ないんだけど!」と困惑しちゃいましたね。
本当に小説を書くってのは新しい発見が多いですね~。
書き始めて良かったと思える瞬間です!
この先でさらに作者を置いてきぼりにして勝手に話を進めた回もありますので、お楽しみに!
今後は平日は1話、土日祝は2話投稿していきます。




