17-17.暴れん坊4人組、それぞれデートをする!フユ編後半
パパから『ユキとデートしておいで!』って言われてユキがいるリム流道場の総本山に来たら、いきなり勝負を仕掛けられて、さらにはユキのご両親からも勝負を挑まれちゃったよ!?
仕方ないからおれも構えたんだ。そうしたら警戒度が跳ね上がったよ!?
「···ほう?かなりできるようだな?スキがほとんどないな?」
「どうやら先に道場の全員を叩きのめしてるようですね?これは痛めつけ甲斐がありそうね?」
「どうしてもやるんですか?ユキ!?いいの?」
「えっ!?ちょ、ちょっと待って!お父さんもお母さんも!私のことで争わないで!!」
どうもユキのこのセリフもダメだったようだ。ご両親はさらにヒートアップした!
「ユキ、黙ってなさい。これ以上は言葉は不要!お互い武器を交えれば···、わかることだ!」
まずはお父さんから襲いかかってきた!速いよ!
鋭い突きを放ち、おれは右足を半歩引いてギリギリで躱し、魔力剣で下から槍を軽くすくい上げ、体勢が崩れたところを剣で上段から振り下ろして背中を斬りつけようとした!
ところが気づかれてしまったようで、お父さんは体をひねって避けられてしまったよ。
やっぱり強いね。ユキのお父さんだけあって簡単にはいきそうもないね。
「やるな!?そうでなければ娘と付き合うなんて認めるわけにはいかん!」
「ちょっと!?話を聞いて下さいよ!?どうしてそんな事になるんですか!?」
「言葉で惑わそうとしても、そうはいかんぞ!?まだまだこれからだ!いくぞ!!」
あぁ~!もう!?冷静になって聞いてほしいんだけどなぁ!?仕方ない。全力でやるよ!
「秘技、弦月斬」
槍だからおれの剣より間合いが大きい。おれの間合いの外から攻撃されると不利だ。だったら、向こうの間合いを外してやればいい。まぁ、パパみたいに魔力剣を伸ばせばいいんだけど、おれはあれ苦手なんだよね~。
斬撃を飛ばしてやると当然避けられるんだけど、おれに対してヘタに近づけないようにしてみた。
「秘技、斬月」
やっぱりね!こっちがカウンター主体に変えたら突っ込んでこなくなったよ。しかし、ユキもこの技の目的を気づいたけど、お父さんも気づいちゃったなぁ~。
「なかなかやるな。これまで娘に言い寄ってきた害虫とは一味違うようだ。···それに今まで見たことのない武器と剣術だ。技のキレがすさまじいから、なかなか骨が折れそうだ。···その構えから察するにこちらが動けば負けるな?···とんでもない技を使うのだな?」
「でしたら話を聞いていただけませんか?これ以上はやってもムダですよ?意味のない戦いは避けたいんですけど···」
「ははは!この私にそのような事を言ったのは初めてだ!···よかろう。話を聞こうではないか。いいな?ヒサメ?」
「···そうですね。この子に付き合うには実力として十分とみていいでしょう」
「ありがとうございます。改めて、フユといいます」
「わたしはここの総師範を務めるフブキだ。ユキの父でもある。そして妻のヒサメだ」
「ようこそ、リム流の総本山へ。少しお話ししましょうか?こちらへどうぞ」
ということでおれはフブキさんとヒサメさんの後についていった。ユキはまだ顔を真っ赤にしたままだったよ。
「さて、フユくん。『ユキとデート』と言ったな?ユキとはどこで知り合ったのだ?」
「去年の建国祭での試合会場です。ユキと試合しました」
「あら!そう言えばユキが言ってましたね。『強くてかっこよくてかわいい男の子に負けた』って。あなたの事だったのね?」
「えっ!?···あ~、それはおれですね。···ユキ?そんな説明しちゃったの?」
「ふぇっ!?あっ!そうだったっけ!?お、覚えてないわ···」
「こら、しっかりしなさい。ユキ!お父さんもちゃんと覚えてるぞ?私が『直々に実力を見極めよう』と言ったではないか?」
「そ、それは···」
「あらあら!そういう事ね~。お母さんは付き合うのを認めるわよ。さっきのお父さんとの試合である程度人なりは見えたわ」
「そうだな。私としても互角にやりあえるという点においては申し分ない。おそらく同年代でこれほどの実力者はいないだろうな」
「じゃあ、デートを認めていただけるということですか?」
「そうだな。ただ···、その前にフユくん。キミの剣術について教えてもらえないか?」
「おれの剣術···、ですか?」
「そうだ。私も昔は放浪して様々な流派の武術を見てきたのだが、キミの剣術はそのどれにも全く当てはまらない。我流だとしても、その若さで剣術体系を構築できるのは不可能だ。そこを教えてほしい」
「あ~···。まぁ、いいか。パパは言っちゃダメって言ってなかったしね。···わかりました。
この剣術はおれのパパの剣術です。おれのパパは···、『外の理の者』なんです。この剣術はパパの世界の剣術なんです」
「えっ!?フユ、アキさんって外の理の者だったの!?···あっ!?あの時の『この世界の剣術じゃない』って言ってたのはそういう事なの!?」
「···そういう事か。納得したよ。···はははっ!さすがにそれは見たことはなかったな!」
「これは大変貴重な武術ですね。よければ技とか型を見せてもらえないですか?」
「いいですよ。パパから見せちゃダメって言われてませんから」
「では、道場へ行こう。今日は素晴らしいものを見れそうだ!」
こうして再び道場へやって来た。でも、弦月斬って斬撃を飛ばすから屋内はちょっとマズいんだよね~。それを言って外でやらせてもらったよ。
「皆の者!これからこちらのフユくんが特別に剣術を披露してくれる!この剣術は私も知らなかったものだ!しかと見ておくように!」
「「「「はいっ!!」」」」
「じゃあ、始めますね!よろしくお願いします!」
まずは型だね。中段の構えからの斬撃、そして上段、下段と続き、抜刀術。そして7つ秘技だ!
まだ変身したパパみたいにすべての秘技を連続して放つ『皆伝秘技』まではできないけど、それでも十分だったよ。
···でも、今ならトランス状態だったら皆伝秘技もいけるかもしれないかな?今度試してみるか!
「ふぅ~···。以上です。ありがとうございました」
大きな拍手が起きた。ちょっと恥ずかしいなぁ~!
「素晴らしいね。それに美しかったよ。何か奥深い意味みたいなものを感じ取れた。フユくんの父上はすさまじい使い手なのだろうな?」
「いいえ、違いますよ?パパも『見てマネしただけ』って言ってて、普段は使いませんから」
「そうなのか!?···という事はフユくんがその技の『理に至ってる』という事か。ははは!気に入ったぞ!ユキ!結婚はいつにするんだ!?」
「ふええ~~!?お、お父さん!い、いきなり何を言い出すの!?」
「その様子だと両想いのようだな?フユくんならユキも幸せになれるだろう。好きにしたらいいからな!」
「そうね。ユキには最高の相手だと思うわよ?お母さんも賛成だからね」
「ちょっと~~!!」
「え~っと、ユキ?これって、もうデートに出かけてもいいってことなのかな?午前で終わらなかったけど···」
「そ、そうね!もうここにいなくてもいいわ!行きましょう!」
「うん!では、フブキさん、ヒサメさん!行ってきますね!」
「ははは!楽しんで来い!フユくん。明日、フユくんの親御さんに少しあいさつさせてもらいたいが、いいかな?」
「大丈夫だと思いますよ。それでは!」
「行ってらっしゃ~い!」
こうしてなんとかユキをデートに誘えたよ!なんだか誘うまで大変だったけどね!
えっ?デートの中身がまだだって?特に面白いものはないよ?
おなかすいたから定食屋さんでランチを3人分おれが食べて、いろんなお店行って買い物して···、ぐらいだよ?
デートってやり方わかんないんだけど、ユキは最後まで楽しそうだったよ。これで良かったのかなぁ~?まぁ、喜んでくれたのならいいか!
「フユ!今日は楽しかったわ!こんなに楽しかったのは初めてよ!」
「そう、良かったよ。デートなんてやり方知らなかったけど、これで良かった?」
「何言ってるのよ!?これがデートなの!」
「そうなんだ!いい勉強になったよ。おれも楽しかった!それじゃ、今日はこれで。また王都に来たら会いに来るね~!」
「わかったわ!楽しみにしてるわ~!」
翌日、アクロに帰る前にユキのご両親がパパに面会に来ちゃったから、帰るのが夕方になっちゃったんだよね···。
フユくんの実力を知ったユキちゃんのご両親は、もうフユくんを受け入れてしまいました!
お気に入りにされちゃったので、結婚は秒読み段階に!?アキくんにごあいさつに伺うとまで言い出してしまいました。この様子は第18章(最終章)で出てきますので、もうしばらくお待ち下さいね。
さて次回予告ですが、次のペアはナツちゃんとヨウくんです!
ヨウくんはナツちゃんにバカ呼ばわりして見下されてしまってますが、ちゃんとデートできるんでしょうかね?恋愛関係ではなさそうなんですけど···。
明日と明後日は土日なので朝と夜に1話ずつ投稿します。お楽しみに~!




