17-15.タイミング良くツーデン劇団来訪!!
新世代組を除く全員で魔獣討伐を行った結果、夕方までにはほぼ片付いてしまった。
今は王国軍が魔獣の亡骸を処分しまくっているよ。
魔獣レーダーを見る限り、街中に入りんだ魔獣は見当たらなかった。
おかしいな?魔獣を大量に発生させてボクたちを阻止するんじゃなかったの?それとも作戦変更?わからんなぁ~!
まぁ、とりあえずお城に戻るか!
状況を報告しようと会議室に入ると、労いの言葉とともに、驚きの事態になっていた!
「お帰りなさい。そうそう!魔王軍は撤退したわ。キミたちのおかげだよ。ありがとう!」
「···ヘ?て、撤退···ですか?女王様?」
「あたしがちょいと龍脈に細工しておいたのさ。整調者の力のおかげでね。ここら一体の龍脈の活動を弱めてやったのさ」
「デジアさん!?そんな事できるんですか!?」
「あたしもさっき知ったばかりさね!観測してたらいじれそうだったんでね!やってみたら成功しちまったのさ。まぁ、神の力だからできて当然かもしれないけどね!
···あたしも先日の件で無力を思い知らされたからね。自分の能力を見つめなおしたのさ。まぁ、これで大魔王にちょっと嫌がらせができたからスカッとしたよ!」
「そうか〜!龍脈に神殺しの短剣を刺さないといけないから、弱まったら意味ないのかぁ〜」
「これで当分は時間を稼げるよ。ただ、次は絶対にもっと強行になるだろうね」
「デジアさん!ありがとうございます!」
「まぁ、私たちも連携がまだまだだからね。時間がほしかったのはむしろこっちなんだよ。ムーオとしては私たちが成長する前に達成したかったんだろうけどね」
「確かにエイルさんの言う通りですね。これからはどうされるんです?」
「少しだけ休息してから訓練ですね。もしかしたら相手をお願いするかもしれないけどね」
「うちは構いませんよ。いつでもアクロに来てくださいね」
こうして、王都での大波乱は双方仕切り直しという形で幕を閉じたんだ。本当にドタバタだったし、ボクは2回目の死亡事件だったし···。精神的に疲れたよぉ~!
グロー歴515年3月16日 晴れ
今日の朝7時をもって王都中に発令されていた避難勧告は解除された。一般市民には死傷者がいなくて本当に良かったよ!
街中は魔獣が暴れたことによって一部の家屋に損壊が起きてしまい、半壊や全壊はほんの一部で済んだ。
まぁ、10万以上の魔獣が襲ってきた状況で、この程度の被害で済んだだけ『奇跡』みたいなものだと思われてるだろうなぁ~。
ただ、この『奇跡』が思わぬところで大混乱を引き起こしてしまったんだ···。
「えっ!?ツ、ツーデン劇団ですか!?」
「はい、ツーデン劇団の団長のタクトと申します。明日から1ヶ月ほど公演するのですよ。事前に届出してたと思いますが?」
「申し訳ないです···。昨日まで大規模なスタンピードがありまして···。国中それどころではなかったのですよ」
「そんな事が···。入国を見合わせた方がよろしいですかな?」
「いえ!新世代の整調者様とアニー様によって討伐されて先ほどから許可が出せるようになりました!」
「えっ!?ア、アニー様、ですか?」
「はい!私も遠目から見えましたが、白銀竜のかわいい着ぐるみを着た青髪の女の子っぽい人でしたね!顔まではわかりませんでしたけど!
凄まじい魔法を連発して迫りくる魔獣を薙ぎ払っちゃったんですよ〜!かっこよかったなぁ~!
兵士たちの中で評判がうなぎ登りですよ~!」
「そ、そうなんですか!?まさか実在していたとは···。これはちょっと混乱しそうですなぁ···」
「お任せ下さい!護衛をつけるよう、上席の者に具申しておきます!上席も活躍を見てましたので大丈夫でしょう!上席自ら喜んでやるかもしれませんね!」
「ははは···。ではお願いできますか?」
当劇団のトップタイトルになった『白銀竜の着ぐるみ少女の冒険譚』。まさか実在する人物を題材にしていたとは···。
しかも女の子との事だ。10年近く上演してるが、歳を取ってない?そんなバカな!もし存在してるなら立派なレディなはずだぞ!?
問題は公演だ。とんでもない数の観客が来そうだなぁ~。
あまりにも有名になりすぎて追っかけもさらに増え、純粋ではない悪意に満ちた商人まで追いかけられる始末···。
有名になりすぎるのも良くないよなぁ~。
グロー歴515年3月17日 曇
今日はのんびり王都の街を散策することにした。まぁ、早く自宅に戻って温泉三昧したいんだけどね?せっかく王都リスタに来てるんだからちょっとぐらいはね!明後日帰る予定なんだ。
はい、ウソです。実は魔力がまだ全快にならないんです。やっぱり死んで蘇生したせいか、回復が遅いんだよなぁ~。だいぶ戻ってきたんだけどね。
リオからも『変身は特に負担が大きいからなー。もうしばらく禁止だぞー!』って言われちゃったから転移できないんだよ。だから高速飛行で帰るけどね。
ということで、今日の散策は家族全員とリオ一家全員とミルちゃんも一緒だ。
『そんなにいっぱいついてこなくても···』、って言ったんだけどね?先日ボクが死んじゃったものだから、一緒にいたい!ってみんな言い出しちゃったんだよ。
モテる男はツライなぁ〜!···すいません。1度言ってみたかっただけです。調子乗りました。
と言っても、お店はほとんど開いてなかったよ。物流が完全に止まっちゃったから商品がないんだよ。仕方ないね。
でも、開いている店もあったけど、かなり品薄状態だ。完全に元に戻るには時間がかかりそうだね。
散策していると、以前の建国祭でハルとデートで入った喫茶店があって、営業してたからみんなで入った。デザート系は全滅で、ドリンクのみだったよ。リオが残念そうな顔をしていたよ。
ふぅ~。仕事の後の一服はいいよね〜。本当に大変な仕事だったけどね。死んじゃったし。
このお店のよくわからない長〜〜い名前の飲み物の別バージョンを、それぞれ頼んでみて、回し飲みしたんだ。ちゃんと全員分注文してるからOKだよ!
ただ、ミルちゃんはかなり苦い飲み物が好きだったのは意外だったよ。渋いところ攻めるなぁ~。
さて、喫茶店を満喫して、ボクたちはお城に戻ろうとしたところ、お城の前の公園は人だかりで大混乱になっていた!なんだなんだ!?事件かな!?
近づくと、なんだか見覚えのあるテントがあった。あれっ!?もしかして!?
「『白銀竜の着ぐるみ少女の冒険譚』、今回の公演分のチケットはすべて完売しました~!申し訳ないですが、お引き取りくださ〜い!!」
「そんな!?アニーちゃんがこの危機を救ってくれたのにお礼も言えないなんて!!」
「誰か!?チケット売ってくれ!!5倍まで出すぞ!!」
「チケット取れなかったそこのアナタ!ここでしか買えない『超限定!プレミアアニー抱き枕』と『超プレミア!等身大抱きぬいぐるみアニー』が少数だけ入荷してますよ~!今しか買えない貴重な品ですよ~!」
「本当か!?おっさん!それを1つずつくれ!今日は等身大抱きぬいぐるみアニーを抱いて寝るぞー!はぅ~。かわいいよ〜、アニーちゃん!これからおじさんと一緒だよ!」
「ハァハァ···。かっこかわいいよぉ~!アニーちゃ~ん!もう一度現れないかなぁ~!今度はおじさんが直接抱いちゃうよ~!!ハァハァ···」
ブフーーー!!
ボクは思いっきり吹き出した!ちょっと吐き気もしてきたよ···。まだ体調が本調子じゃないってのは関係なく、気分が一気に悪くなった!!
そんなボクをよそに、フユとナツは売られている海賊版のグッズをじーーっと見ていた。
「パパ?あれって変身したパパだよね?お話やグッズとかになってるけど、いいの?」
「···パパの等身大ぬいぐるみか。···ナツは欲しいなぁ〜」
「···見ちゃいけません。帰るよ!」
「えっ!?パパ!?おれ、気になるんだけど!?パパの抱き枕ってなに!?」
「···ナツのお小遣いで買えそうなんだけど?···あとで買いに来ようかな?」
ボクはフユとナツの手を引いて劇団のテントから猛ダッシュで離れたんだ!身体強化7倍で!!
ついでに女王様に海賊版を販売していた商人をチクっておいた。
その日の夜。初回公演の直前にたくさんの兵士たちが海賊版を扱う商人たちを逮捕して商品を押収していったそうだ。
さらに高額でチケットを転売していた連中も逮捕されたらしいよ。
しかも兵士たちは喜んで商人たちや転売ヤーを逮捕して海賊版を押収し、チケットを没収したそうだよ。
···絶対私物化する気だな!?それも犯罪だぞ!?
デジアさんの新能力で龍脈の流れを変えたことで、王都でワールド・エクリプスが発動することは避けられましたが、これは一時的な処置です。別の場所でやれてしまいますのでね。
そして、ツーデン劇団が王都にやってきました。つい先日にスタンピードをアニーが撃退したという話は王都中に広まってしまっていたので、空前の大混乱が発生してしまいました。
海賊版グッズに興味津々のフユくんとナツちゃんですが、違法品だから手に入らないぞ!しかし、後日に正式ルートで手に入れてしまうんです。これは番外編で公開予定ですので、乞うご期待!
さて次回予告ですが、王都に平和が戻ったのでアキくんは子どもたちにデートに行ってくるように促します。最初のお話はフユくんがユキちゃんのいるリム流の総本山へ行き、『ユキとデートしに来た』と申し出ると、とんでもない騒ぎになってしまいます。前後編2話に分割してお届けしますよ~!
それではお楽しみに~!




