17-13.ワールド・エクリプス
大変お待たせいたしました!絶体絶命のアキくんはどうなるのか!?このお話で明らかに!
「「!!!」」
「どうしたの?フユ、ナツ?」
「「パパが危ない!!」」
「えっ!?ちょっと!?いきなり走って!どうしたのよ!?」
「アキに何かあったのか!?」
「···急ぐよ!!」
パパに何かあった!!急速にパパの魔力が減っている!!もう残り少ないよ!!急がなきゃ!!最大級の胸騒ぎを感じる!!
おれとナツは全速力で走った!!そしておれたちが寝泊まりしてる部屋の前で···!パパが倒れていた!!
「「パパァ!!!」」
おれたちの声を聞いてそばにいた男が振り向いた!右手には禍々しいどす黒い短剣が握られていた!!
コイツがパパを刺したのか!?許さないぞぉーーー!!
「「ウォオオオーーー!!!」」
おれとナツはトランスして全能力を解放して男に突進した!
「甘い」
「「うわぁ!!」」
男の前に見えない障壁があって弾き飛ばされてしまった!!
「もう気づかれるとはな。人を寄せ付けぬ魔法をかけているというのに。なぜかはわからんがな」
「パパに、何をしたぁーー!?」
「見てわからんか?こやつの血をこの剣に吸わせたまでのことよ。もう用は済んだのでな。さらばだ」
「···逃さないよ!!」
「ははは!威勢のいいガキだが、相手が悪かったな。貴様では余の相手には···、ならんわ!!」
「うわっ!?」
「ナツ!?」
「···フン。とんでもないガキだな。余に手傷を負わせるとはな。そんなに死に急ぎたいのか?」
「くっ!」
その時だ!リオパパたちが駆けつけてきたんだ!
「んなっ!?ムーオ!?」
···えっ!?コイツが!?大魔王ムーオだって!?
「ほう?あの時の白銀竜か。まぁ、今さら来ても手遅れだがな」
「アキに何をしたぁ!?」
「ははは!コヤツが余の目的のカギだったのだよ!···これで、『ワールド・エクリプス』は最終段階に入った!」
「ワールド・エクリプスだと!?ムーオよ!本気か!?」
「ジーンか···。これで、余の悲願が達成するのだ。余の100年に渡る計画の最終段階よ!これで、余はこの世界の···、神となる!!フハハハ!!」
「待て!!」
姿が消えてしまったよ···。いや、それどころじゃない!パパ!!
「アキ!聞こえる!?しっかりして!!」
ママが呼びかけてるけど、パパは反応しなかった。おれとナツで合体回復魔法をかけてるけど···!ほとんど効果がないんだよぉ!!
どうしよう!?このままだと···、このままだと!パパが死んじゃう!!
「リオパパ!!どうしよう!?パパが!!」
「オレも加わるぞ!リナ!アイリを呼んでこい!あいつの蘇生魔法が効くかもしれん!ケンはコルとデジアを呼んでこい!整調者の力でなんとかなるかもしれん!」
「「わかった!!」」
「ハルはアキにそのまま話しかけとけ!ナナ!魔石をありったけ準備しろ!オレらの魔力が足りないと思う!」
「わかった!アキ!みんながいるから!頑張って!」
「リオ!これでいいかしら!?あとはどうする!?」
「女王に伝えろ!大魔王が城内に侵入してるって!」
「わかったわ!」
ナナママが走っていった。その少し後にアイリさんたちがやって来た!
「アキさん!?これはかなりマズいですわね!回復阻害の呪いがかけられてますわ!呪いを解かないと蘇生魔法すら効きませんわ!」
「どうすれば!?」
「私が解きます!3人はそのまま回復魔法を続けて!呪いが阻害する効果を上回れば多少は持ちこたえれますわ!」
「わかりました!ナツ!!」
「うん!お兄ちゃん!」
しばらくすると、コルとデジアさんが走ってきた!
「アキさん!?」
「なんてこったい!これはひどいね!あたしも手伝うよ!」
5人がかりで回復魔法かけてるのにキズが塞がらない!呪いのせいなのか!?どうしたらいいの!?このままじゃ···、このままじゃ!パパァーー!!イヤだぁーーー!!!
次の瞬間、回復魔法の反応が···、なくなった···。
「うそ···、そんな···。うそでしょ!!?起きてよ!!パパぁ!!!うぁああああ!!!」
「···パパ?···パパ!パパ!!いやぁー!!!」
「アキ!?ねえ!返事をして!!」
「アキ!?ちくしょう!!なんで!なんでこんな事に!!」
「アキさん!?蘇生魔法を!!そんな!?受け付けないなんて!?」
「アキパパ!!冗談はやめて!お願いだから!!」
「アキパパ!!そんな···。ひどいよぉ~!!」
「アキさん!···そんな。こんな事って!!」
「···今ほど自分が非力だと痛感したよ。こんな事に···、なるなんて···」
その場にいた全員が泣き崩れたんだよぉ···。
パパ···。『一人前になったね!』って言ってもらいたくて頑張ってきたのに···。何も···、できなかった···。合体回復魔法でも···、治せなかった···。
ごめんなさい···。パパ···。おれたちは···、パパを···、助けられなかったよ···。
絶望に打ちひしがれたその時だった!パパの体が突然光りだしたんだ!
何が!?何が起こってるんだ!?
光はさらに強さを増していく!目が開けられないほどの光に廊下は包まれ、収まるとパパのキズは塞がっていたんだ···。
どうなってるの···?すかさずママがパパの胸に耳を当てた。
「···生きてる。アキ、生きてる!!」
「え···?よかった···。良かったよぉ~~!うぇ〜〜ん~~!!」
「···パパぁ。パパ~!···ヒック、···ヒック」
「···奇跡が、起こりましたわ」
「今のは何だったんだい!?龍脈の力が流れ込んだようだけど!?」
何だっていいよ!!パパが···!パパが生きてるなら!!何だって!!
そのあと、パパはベッドで寝かされた。魔力が完全に枯渇しちゃってるようだから、ある程度回復するまでは起きないだろうって。
おれたちは作戦会議をすることになった。パパにはママがつきっきりで看病するって。
会議室には女王様、おれたち、カーネさんたちとコルたちが集められたよ。
「···まさか城内に大魔王が侵入していたとは。フユくん、ナツさん。ごめんなさい」
「女王様のせいではありませんよ。おれたちだって誰も気づかなかったんですから」
「そうですね···。しかし、ムーオはなぜアキさんを刺したのでしょうね?」
「それについては余が説明しよう」
ジーンの話だと、『ワールド・エクリプス』という儀式があるんだって。
その名前の通り、『世界を喰らう』んだそうだ。これは手っ取り早く神が入れ替わる方法らしいんだけど、やるには儀式用の『神殺しの短剣』に『その世界の神の力の核』を吸収させる事がカギとなるんだって。
「じゃあ、アキさんは···」
「女王の想像通りだよ。アキには『神の力の核』を宿されていたんだ」
ジーンの結論にみんな黙っちゃったよ。すると、アイリさんから、
「確かにアキさんの体は神が創ったとのことらしいですわね。
···もしかしたら、神はムーオに自分が狙われる可能性を考えて、アキさんに隠して核を宿していた、ということになりますわね。
あの嫌らしい神の考えそうなことですわ!」
「でも、奪われてしまったぞー。ジーン。今後どうなるんだー?」
「龍脈に一番近いところで儀式を行うんだ。そして、龍脈の経路を使って黒魔力が世界を、皆既日食のように覆い尽くしたら乗っ取り完了だ。明るくなった時にこの世界はムーオのものになってるんだよ。
···思ってた以上の速さだったよ。この方法を採らなければ100年以上龍脈の力にムーオ自身を適合させなければならなかったからね」
そうだったんだね。パパが神の力の核を持っているって知らなかったから、ジーンは100年以上かかるって言ったんだね。でも···。
「じゃあ、どうすればいいの、ジーン?もう、時間はないんじゃない?」
「その通り。儀式を妨害されないために全兵力で死守するだろうね。···おそらくはこの街のどこかが会場なんだろうね。
これは余の最後の願いだ。会場へ連れて行ってくれれば余が止めるよ。儀式を反転させて黒魔力を集めて、余の世界へムーオを送還するよ。そのために余はこの世界に来たんだから」
これで企みが明らかになったよ!これ以上好きにはさせないぞ!
まぁ、序章第3話で天寿を全うする直前のアキくんがいるんですから、生きてるのは確定なんですけどね。じゃないとタイムパラドックスになりますしね。実は本当に1回死んじゃってます。
そして、アキくんには『神の力の核』というものが神によって仕込まれていた事実が発覚しました!ジーンが説明していますが、その世界の神の力が奪われて儀式を行われると、あっさりと世界が乗っ取れてしまうシステムがあったのです。ラグビーみたいですね。
アキくんに仕込んだ理由は、神が顕現中に襲われてもワールド・エクリプスを成立させないためです。木を隠すなら森に!って発想ですね。仕込まれたアキくんとしてはたまったものではないですが。
さて次回予告ですが、アキくんが蘇生した理由が明らかになります!チートを超えるとんでもない理由なんですよ。
それではお楽しみに~!




