17-6.新旧交流戦 その2
午前中の前半は新世代の整調者の実力を見せてもらった。後半はボクたちの実力を見てもらうよ。ただね···、イピムさんからこんな提案があったんだ。
「せっかくだから1対1で試合してみないか?まずはオレが出るぜ!」
「じゃあ、おれがまずはやります!よろしくお願いします!」
「おおっ!?フユくんか!いいぞ~!全力でかかってこい!」
「はい!では···、いきます!」
フユが先陣を切ってイピムさんに挑むよ。魔力剣鈍器モードで雷属性付与で立ち向かうようだ。
まずはイピムさんに真っ向から向かっていった!フユの魔力剣とイピムさんの斧がぶつかる!
「ほう!真っ向勝負か!素直な性格もあって潔いな!だが、強者に対してその行動は感心せんぞ?」
「でしょうね。でも、ここからがおれの実力の見せ場ですよ!いきます!···秘技、螺旋斬」
フユが一歩離れてから技を繰り出した!回転した2撃目でイピムさんをちょっとだけ後退させたよ!さらに追撃を繰り出す!
「秘技、紅葉!」
一気に懐に入って横一文字に一閃するけど、身体強化の倍率を上げてるイピムさんは防御態勢すらとらずに受けきってしまった!
攻撃モーションが終了した瞬間にイピムさんが斧を振り下ろし、フユに当たってしまったけど、そこは代わり身で躱した。
「なんだと!?」
「秘技、大噴火斬り!」
体勢を崩したイピムさんめがけてジャンプしたフユが上段から魔力剣を振り下ろした!!
「ぐっ!!」
「手ごたえあり!これで最後!!秘技、夢想烈波!!」
イピムさんは体勢が崩れてて防御が間に合わなかったために右腕でフユの技を受けた!持っていた斧を落としてしまったために最大のチャンスがフユにやってきた!
だけど、イピムさんはあきらめてなかったんだ!
「ウォオオオオオ!!!!」
「なっ!?うわぁ!?」
イピムさんが叫んだ瞬間!イピムさんの体から衝撃波が発生してフユはまともに食らってしまって吹き飛ばされてしまったんだ。
「はあっ!はあっ!ま、まさか奥の手を使わざるを得ないとは···。とんでもない子どもだな···。さすがは伝説の神狼族なだけはある···」
「いたたた···。あ~、おれの負けですね。ありがとうございました」
「いや、負けはオレの方だな。決してナメてたわけではないが奥の手を出さざるを得ないところまで追い詰められたからな!」
「そうですか。おれも、いい経験になりましたよ」
「ははは!末恐ろしいな!じゃあ、次はナツちゃん!やるかい!?」
「···もち。···燃えてきた」
フユの次はナツだね。戦闘スタイルが違いすぎるけど、どんな試合になるかな?
ちなみにさっきまで落ち込んでたヨウくんはフユの試合を見て『ありえねー。イピムを追い詰めるなんて···』って横でつぶやいてたよ。ヨウくんも勝ててないようだね。そんなヨウくんはナツの試合はフユの試合よりも集中してみていたよ。
さて、試合の方はフユの時と同様にナツから先制のようだね。
「···じゃ、いくね。秘技、疾風迅雷」
「なっ!?速い!?」
ナツは一瞬で間合いを詰めて胴打ちを決めてイピムさんの背後に回り、即座に居合い抜きを放った!居合い抜きは斧で防がれてしまったけど、一撃は食らわせることができた。
防がれたナツは即座に間合いを取り直した。そこをイピムさんが突っ込んできた!そこをナツは迎撃態勢に入る!
「···秘技、斬月」
「これはどうだーー!」
イピムさんは斧を振り下ろした!衝撃波も込みでナツを攻撃したけど、技が炸裂する直前にナツは懐に入ってまたもや技を決めてしまった!
2撃も食らってしまったイピムさんは懐に入っているナツを剥がすためにまた衝撃波を放とうとした!しかし、ナツはそれを察知して飛びのきつつ
「秘技、弦月斬」
「なあっ!?」
斬撃を繰り出してイピムさんの行動をキャンセルしちゃったよ···。
「ははは!まいった!ここまでにしようか!」
「···うん。···ありがとうございました」
「いやぁ~!双子なのに戦闘スタイルが全く違うんだなぁ~。バランスタイプのフユくんにスピード特化のナツちゃんか!これはコンビでこられたら厳しいな!」
「···ちょっとだけズルしたからね。お兄ちゃんの力を借りたし」
「え?借りたって?」
「···お兄ちゃんとナツには『意識の共有』という特殊能力でつながってる。···さっきお兄ちゃんが戦った情報を、ナツが使わせてもらったからお兄ちゃんよりうまく立ち回れた。それだけ」
「ほう!これが神狼族の『共有』か!素晴らしいな!うん。いい試合だったぞ。十分楽しめた!」
「···こちらこそ。ありがとうございました」
···なんだか、さらに強くなっちゃったなぁ~。これでまだ戦隊変身残してるからなぁ~。まぁ、それは午後の団体戦で披露するからね。
ちなみにヨウくんは口を半開きにして驚いていたよ。『俺はあんなのに勝とうとしてたのか···?』ってつぶやいてたけど、ちょっと実力差に慄いちゃったね。キミも十分すごいんだけどなぁ~。すると、次はハルが前に出たんだ。
「···じゃ、次は私かな?ヨウ?相手してくれる?」
「···ハルさん?俺なんかでいいんですか?」
「···うん。ナツじゃちょっと対応できないからね。私が相手するよ」
「···ママ?···ナツで対応できないってどういう事?」
「···見てればわかる」
あ~、そういう事ね。ナツだとヨウくんのプライドを容赦なくズタズタにしちゃうから、ハルがフォローしてくれるんだ。やっぱりハルはやさしいなぁ~!
そうしてヨウくんとハルの試合が始まった!
「···どこからでもどうぞ」
「···じゃ、遠慮なく全力で挑ませてもらいます!」
ヨウくんが姿を消した。これで居場所がわかっちゃうハルとナツってどういう感覚なんだろうね?
次の瞬間、ハルに向けて斜め後ろから投げナイフが飛んできたけど、ハルも後ろを見ずによけちゃったんだよ。
さらに正面からも投げナイフが飛んできたけど、半歩ずれてよけてしまう。5本同じ状況になったあとの6本目はハルの正面の斜め上方からだったけど、これも躱してしまい、ナイフはハルの影の部分の地面に刺さった。
その直後にヨウくんは姿を現した。···降参かな?そう思っていると
「···うん、なかなか。···敢えて影縫いの技を受けたけど、いい腕してるよ」
「···やっぱり思惑がバレてるんですね?」
「···2撃目で気づいた。できれば他の暗殺技を使用しつつ、仕込んでいけば気づかれないかな?」
「なるほど。敢えて受けたって事は、次に俺が何するかわかってるんですね?」
「···うん。···さて、ここで私が思ってないような行動ができる?」
「···と言うと?」
「···簡単なこと。手の数が少なすぎる。···里で教わるのは最低限のこと。···だから世界に出ていろんな人と出会い、そしていろんな技を知って、自分の技に磨きをかける。···それが、師匠の暗殺技の真骨頂。···里を出る直前に師匠が言ったでしょ?『世界に出て、自ら学べ』って。···それは、こういう意味なんだよ」
「···そうか、そういうことだったのか」
「···じゃ、影縫いを受けた状態で私がどうするかを見せてあげる。···里では教えてもらってない事だよ」
そう言ってハルは火魔法を手に出した。次の瞬間、ハルはスタスタとヨウくんに向けて歩き出した。
「···あっ!」
「···影縫いは影が動いてしまうと解除されてしまう。···師匠は『影を刺したナイフを抜くことで解除できる』しか言ってない。···里では魔法は身体強化以外厳禁だからね。···里を出て、魔法をちょっと教えてもらってから、こういう脱出方法を編み出した。···どう?これが私が世界に出て自ら学んだことだよ」
「···ありがとうございました」
「···ん。···何か掴んだようだね。···あとちょっとでナツに勝てるよ」
なるほどね。里で教えてもらった技は最低限の基礎部分ことで、そこから自分なりに自由にカスタマイズさせることができるのがチパさんの暗殺術なんだね。だからナツも応用技を編み出しちゃったのか~!
それに気づいたヨウくん。今後は周りに凄腕ばかりが勢ぞろいしてるから、技の勉強をしたら一気に化けるような気がするね!
イピムさんとのタイマン勝負は総合的にはフユくんとナツちゃんが勝った感じですね。一方のヨウくんはハルちゃんが実践でアドバイスしました。
手数が少ない事と経験不足がヨウくんの根本的な弱さなんですね。これを克服した時にナツちゃんに勝てるか?と言われると···、たぶん無理でしょうね(笑)!せっかく整調者の力を得てもうまく使いこなせないヨウくんでした。
さて次回予告ですが、アキくんとリオくん、リナちゃんの実力を見せた後は団体戦です!
新旧整調者がチーム戦を繰り広げますよ~!
経験抜群の旧チームに対して新世代組はどう立ち向かうのか!?
お楽しみに~!




