16-2.ミルちゃん、地上の生活を始める
「サキちゃん?今日からはボクの家の部屋で寝てもらえるかな?」
「はい、アキさん!アキさんと一緒にいると不思議な体験ができて面白いです!」
「···ボク自身は面白くないんだけどなぁ~」
リオの家で寝泊まりしていたサキちゃんはうちに来てもらい、ミルちゃんはリオの家で寝泊まりしてもらうことになった。
同じドラゴン族なんだからその方がいいでしょ?
今日の夕食はうちで鍋をすることにした。せっかくみそが手に入ったんだからみそ煮込み鍋をしたかったんだよね~!
リオたちも大喜びだった!まぁ、リオの料理を食べたくない!ってのがあるんだろうけどね。いきなりミルちゃんにリオのビックリ料理は食べさせられないわ。
うちのリビングって8人までは余裕だけど、10人となるとちょっと狭いね···。ボクとハルはキッチンテーブルでいただくことにしたよ。
「こ、これは!?おいしいです!こんな味は初めてですぅ~!」
「気に入ってもらえてよかったよ。まだたくさんあるからゆっくり食べてね」
「ありがとうございます、アキさん!」
そしてミルちゃんには温泉にも入ってもらった。女性陣5人でミルちゃんを案内して温泉を堪能してもらったんだ。
えっ!?女性陣の入浴シーンがないとはどういうことだってばよ!?だって?···ちょっとだけだよ?ただし、湯煙ビーム全開だよ!冬だからね!
「へ~!これが温泉ってものなんですね~!」
「じゃあ、ミルちゃん!まずはお湯を体にかけるわよ~!アキパパが言うには、足先からかけて、ひざ、腰っていう感じで少しずつ上へかけていくんだって!」
「へぇ~、そうなんですね~、リナ。ではでは~!あ~!これは気持ちいいですね~!」
「かけ終わったら湯船に入るのよ!2種類あるから好きなほうに入ったらいいわよ!これも確か順番があるらしいけど···、忘れちゃったし!」
「じゃあ、こっちの濁った方に入りますね~!あ~!これはいいですね~!これが温泉ってものなんですね~!」
「そうよ!アキパパのおかげでうちのママも、ハルママもお肌ツヤツヤなのよ~!」
「わかります~!これのおかげなんですね~!私も気に入りましたぁ~!」
「さて!次は体を洗いっこしましょう!ドラゴン族だと背中が翼で洗いにくいしね!まずはわたしがミルちゃんを洗ってあげる!」
「おぉ~!これも初めてですね~!お願いしますね~!」
···これで満足してくれた?えっ!?湯けむりがすごすぎて真っ白で何も見えずに『SOUND ONLY』だったって!?仕方ないでしょ!?冬なんだから!!
どこからともなく猛クレームが入ってるけど、キニシナイ!···だって、どうしようもできないもん。
さて、ミルちゃんたち女性陣が温泉から出てきたね。みんな気持ちよさそうな顔してるよ。いい事だね~!
「アキさん、気持ちよかったです!初めて温泉ってのに入りました!」
「それはよかったよ。はい、冷たいお茶。冷えてておいしいよ~」
「んっ、んっ!おいしい~!ありがとうございます!」
「ナナ?冷えないうちに帰った方がいいよ。外はだいぶ冷え込んでるからね」
「そうね~。じゃあ、リナ、ミルちゃん。帰って寝る準備をしましょうね~」
「はーい!おやすみ、アキパパ!」
「今日はありがとうございました!おやすみなさい、アキさん」
さて、次は男性陣で温泉に行こうか!
「ふぅ~。外が冷え込んでると温泉がさらに気持ちよくなるよよよ~」
「パパは温泉に入ると変わっちゃうよね~」
「まー、それだけ楽しんでるんだろうけどなー」
「いいじゃん。気持ちいことに変わりないんだから。そうそう、リオ?ミルちゃんを送り返してあげる件だけど、ボクたちが浮遊大陸行くのって大丈夫なのかなぁ~?」
「うーん···。行けたとしてもいい顔はされないだろうなー。すぐ追い出されるのは間違いないと思うぞー」
「そうなると、ミルちゃんは大丈夫かなぁ~?」
「大丈夫って、何がだー?」
「地上に落っこちた事でつらい目にあったりしないかな?って事だよ。それだけ内向的な考え方だと、外に出て行って戻ってきた者に対してもボクらと同じような態度をとらないか心配なんだよね。元の世界の田舎だと、そういう考えの人が多いんだよ」
「あー、ありえそうだなー。でも、本人が希望してるのなら叶えてあげたいけどなー」
「···もしそんな事になったら、ぼくたちと一緒に住むっていいのかな?」
「ケン?どうしたんだ?」
「フユ、もしそんな目にあうのがわかってるなら、ぼくは最初から浮遊大陸に帰らないほうがミルは幸せなんじゃないかな?って思うんだよ」
「あ~、そうかもしれないけど、それってケンが思ってるだけでミルは帰りたがってるぞ?」
「うん。それもわかってる。だからパパ!もしミルが浮遊大陸に帰ってひどい目にあいそうだったら、うちで一緒に暮らしてもらってもいいかな!?」
「ケン。別にオレはいいけど、それはミルが言い出したらにしろよー。オレらからこの話をしたらダメだぞー」
···ん?もしかして、ケンはミルちゃんの事を心配してる?これはもしかするのかもね?
えっ!?男性陣のシーンはいいから女性陣のシーンをもっと長くしろって!?それはボクに言わないでよ···。
グロー歴514年12月34日 曇
昨日までの大雪は峠を越えたようだね。今日は雪は降っていないよ。ちょっとずつ陽も差し始めてきた。
もしかすると、あの大雪をもたらした嵐の中に浮遊大陸があるのかな?···某アニメ映画みたいだけどね。
さて、朝食を作っておくか!今日はリオたちの分も作っておいた。昨日帰る前に伝えておいたからね。
うちのみんなは全員起きてきた。リオのところはちょっと遅いだろうから、先に食べておくとするか!
そうしてうちのみんなが朝食を終えてもリオたちは来なかった···。どうしたんだろう?心配になって様子を見に行った。
「お~い、リオ~!そろそろ起きなよ~!朝食が冷めちゃうぞ~!」
合鍵を使って中に入ると···。玄関で寝ていたよ···。ミルちゃんが···。
···リオと同レベルの寝相か?こりゃ浮遊大陸から落っこちるのもわかるわぁ~。
「お~い、ミルちゃん?朝だよ~!」
「ん~~?あれ···?アキさん···?もう朝ですかぁ~?」
「こんなとこで寝たら風邪ひくよ?顔洗っておいで。みんな起きたらうちで朝食用意してるからね」
「ふぁ~い。ありがとござます···」
···フラフラで洗面台に向かっていったよ。あっ!?壁に頭ぶつけたぞ!?···大丈夫か?
さて、リオたちを起こそう!まずはリナとケンを起こし、最後にリオだ!一番手間がかかるからね!
「リオ!ナナ!起きて~!朝食が冷めちゃうぞ~!」
「···うーー、寒いぞーー。もうちょっと暖かくなったら起こしてくれー」
「そんな事言ってたら冬眠しちゃうぞ!ほら!起きた起きた!」
無理やりふとんをひっぺ返して起こしてあげた。ナナも寒いのは苦手だから、ふとん取ったら震えていたね。
「あー、今日はアキが朝食作ってくれてるんだったなー」
「そうだよ。早く着替えて食べにおいで」
時刻はもう午前9時半。食べ終わったのが10時だよ。もうすぐしたら昼食だよ···。これは昼食もうちで食べる気だ。···作戦だな!?
昼食は簡単に済ませるようにあらかじめ仕込んであるから、今から航空工学について勉強だ!
「じゃあ、これからみんなに航空工学について勉強するよ~!」
「「「「はーい!」」」」
「え?アキさんって、なんでそんな事知ってるんですか?」
「ミルちゃん、話せば長くなるからここでは勘弁してね。じゃあ、まずは鳥とかがどうやって魔法なしで空を飛んでるのかを説明するね」
簡単に言えば揚力だ。翼の形状によって翼の上と下に流れる空気の速さが変わることで気圧差が生じて、その差を埋めようとして発生する力が揚力なんだ。
鳥が羽ばたく時に翼をバタバタさせるのは翼で押し出した空気の反作用で飛ぶ力を得てるんだね。だから鳥は反作用で飛び上がって、揚力で滑空して空を飛んでることになるんだ。
飛行機はジェットエンジンで飛行機の後方へ強烈に爆風を吹かせることによる反作用で前方へ進み、その時に周辺の空気が翼を流れることで揚力が発生して飛ぶんだ。
この時、翼が大きいほど揚力を得やすいけど抵抗も大きい。だから飛行機も離陸時は翼を大きくして上空を飛行する時は翼を縮めて高速飛行を行うようにしているんだ。
これが飛行機が飛ぶ簡単な原理だ。この事はケンが羽田空港の売店で買った本にも書いてある通りだね。
さて、ここからが本題だ!飛行機の飛ぶ原理を今度はドラゴン族の翼で再現しなくてはならないんだ。どうやって再現しようかな?
本作は温泉シーンがほかの作品に比べて多めになっておりますが、文字なので読者の皆様の想像にほとんどお任せしております(笑)!その点につきましてはご了承ください。冬は湯煙がすごいので、皆さんも足元の段差には十分注意して温泉をお楽しみくださいね~!温泉成分でヌルヌルして滑りやすくなってますからね。
さて次回予告ですが、ミルちゃんを浮遊大陸に帰してあげるために飛行機の原理を応用した高速飛行魔法の開発を始めます。航空力学とエーレタニアの魔法の融合が果たしてできるのでしょうか!?
そして、久しぶりのあの人物が再登場!さて、誰でしょうね~?
それでは次回をお楽しみに~!




