16-1.浮遊大陸ってなんだろう?
すいません!少し遅れました!
本日より第16章全15話を投稿します。ここから物語は最終局面になりますよ~。
年末の寒い日だった。アクロでは珍しくそこそこ雪が積もっていた。
子どもたちが巨大雪だるまを作って遊んでいたその時、空から女の子が降ってきたんだ。
金竜のドラゴン族。リオによると、浮遊大陸に住んでいる一族と言ったんだ。
浮遊大陸なんて聞いたこともなかったから驚きだった。このエーレタニアで生活し始めて早10年。まだまだボクが知らないことがあるんだと思い知らされた出来事でもあったね。
「リオ。浮遊大陸って、空に浮かんでいる島みたいなものなの?」
「···アキには説明してなかったなー。その通りだぞー」
リオはあんまりいい顔してなかったけど、説明はしてくれたよ。
浮遊大陸はこの世界の上空に浮かんでいる島の事で、世界のどこかをいつも飛んでいるらしい。ただ、10年も暮らしていたらちょっとは見かけたかもしれないし、学園でも話にはなるはずだ。
···理由は簡単だった。見たことが誰もないからなんだ。常時ステルス迷彩を展開しているので、空を見上げてもまったくわからないそうだ。
地上ともまったく交流がないから誰も存在を知らない。リオが知っていたのは、約500年前に起きた、リンさんがいた世界から侵略を受けた際に決戦兵器として投入された空中庭園が、この浮遊大陸の一部だったからだそうだ。攻撃のために浮遊大陸よりは高度を大幅に下げていたみたいだけどね。
侵略を追い返した後はステルス状態の無人で世界中の空を漂っていたところをムーオに乗っ取られて起きたのが11年前の争乱だった。
地上には一切かかわらない鎖国状態の浮遊大陸なので、自分たちに火の粉が降りかからない限り行動には一切出ないから、空中庭園も放棄していたようだった。
浮遊大陸にはいくつかの種族が住んでるそうで、金竜はその1つだそうだ。最古のドラゴン族で、高高度を飛行できるのが特徴だそうで、地上にはほとんど住んでいないそうだ。
···むしろ、地上にいる金竜は『浮遊大陸になんらかの事情があっていられなくなった』事情があるみたいだ。これはどのドラゴン族にもあてはまるね。
「リオ。浮遊大陸で何かあったのかな?」
「それは聞いてみないとわからないなー。···ただ、何かあったとしてもオレたちが干渉することは嫌がるだろうなー」
「そんなに嫌ってるんだね?」
「オレも行った事はないけど、神が言うには『はるか上空からずっと見下ろしていたから、地上の人々を見下すようになった』って言ってたからなー。見下していた連中に助けを求めないだろうし、オレたちが行ってもいい顔はされないだろうなー」
「う~ん···。みんな差別とかほとんどない世界のにやっぱりあるところにはあるんだなぁ~」
「多少は地上でもあるけどなー。あからさまなのは浮遊大陸だけだなー」
そんな事を話していたら、女の子が目を覚ましたんだ。
「···ん?···え?···ここは?」
「気が付いた?どこも痛くないかな?回復魔法はかけておいたんだけど···」
「···うん、大丈夫。···人間?···って事は、ここは地上?」
「そうだよ。ここはボルタニア大陸のレオナード王国にある、アクロって温泉街なんだ」
「···聞いたことないね。そもそも地上に降りたのって初めてだから、よくわからないの」
「そうなの。ところで、きみの名前を聞いてもいいかな?ボクはアキ。あとハル、フユ、ナツだよ」
「···私はミル。ここじゃない空の上にある浮遊大陸の集落に住んでた金竜よ」
「オレは白銀竜のリオだー。あとリナと青竜のナナとケンだー」
「白銀竜に青竜?集落じゃないのに?」
「そうだぞー。オレたちは家族で人間たちと一緒に暮らしてるんだぞー」
「そうなのね···」
とりあえず名前は聞き出せたね。ソファでこんな大勢で相手するのもなんだし、ちょっとお茶を入れて一息入れつつ話を聞こうかな?
「みんな。ちょっと質問は後にして、おやつタイムにしようか?外は冷え込んでるからあったかいお茶をいれるよ。テーブルのところで座って待ってて」
「おー!そうだなー!アキの世界のお菓子食べながら話をするぞー!」
「···おやつに釣られたわね」
ナナ、そう言わないであげてね。今回の出来事はリオに協力をお願いしないといけないと思うしね!
さて、今日のお茶は元の世界で仕入れた紅茶のダージリンだ。砂糖もミルクも向こうで仕入れたものだよ。お菓子はリオが用意してくれたよ。···用意っていうか、ナナが勝手に無限収納カバンから出していたんだけどね。
リオは怒ったけど、ナナがお菓子の1つをリオの口に突っ込んで『物理的に』黙らせてしまっていたよ···。
「どう、ミルちゃん?おいしいでしょ?」
「うん!初めての味です。ありがたいです」
「さて、ひと段落したところでミルちゃんにはどうしてここに落ちてきたのかを教えてほしいんだけど、いいかな?」
「···はい。···実は」
みんな固唾を飲んで次の言葉を待った。地上と交流がない浮遊大陸から落ちてきたんだから、どんな深刻な事態が起きてるのか気になるからね。
「···浮遊大陸の端でお昼寝をしていたら、寝相が悪くて落っこちたんだと思います」
「···は?」
「···へ?」
「うん、お昼寝の前の記憶はあるんだから、多分そうだろうなぁ~って思います」
「じゃ、じゃあ、何か事件とかがあって逃げてきたって事じゃあないってこと?」
「事件?何もなくのんびりと過ごしてますよ?」
···ただのドジっ子だったか!人騒がせな!って、事件だって勝手に思ってたのはこっちだね。この子は悪くないわ。
「え~っと?ミルちゃん?これからどうするの?」
「もちろん戻りたいですね!···でも、浮遊大陸がもうここから去っちゃったから、しばらくは帰れなくなっちゃいましたね。まぁ、大陸があっても帰る手段ないんですけど」
「えっ?帰る手段がない?」
「はい。飛行できるけど、地上から浮遊大陸まで上昇できないです。浮遊大陸上は飛べるけど、上昇は苦手です」
「···リオ?どうしよう?」
「···うーん。しばらくうちで預かるかー。ミルちゃんー?誰か迎えに来れるのかー?」
「多分来ないと思います。みんな上昇苦手だし、迎えに来たらみんな帰れなくなります」
「あー、これは詰んでるなー。オレも浮遊大陸まで上昇なんてできないぞー」
「あたしもさすがに無理ね~。送り届けるのって無理なのかしらね~?」
リオたちはムリのようだ。そんな中、ずっと考え事をしていたケンがこんな事を言い出した!
「···ぼくならできるかもしれない」
「えっ!?ケンー?どういう事だー?」
「ほら、先日アキパパの世界に行って飛行機って乗り物乗ったじゃない?あれと同じことをすれば、ぼくでも浮遊大陸まで上昇できるかもしれないと思うんだ」
「それはアキの世界だからだぞー。オレたちの翼だとムリがあるぞー」
「でも、翼があればある程度まではできるはずだよ!?挑戦してみたいんだ!」
「リオ?ケンの言う通りにさせてみようか?」
「アキ?何か勝算があるのかー?」
「いいや?でも、ボクは可能だと思うんだよ。ケンは飛行が得意な青竜なんだし、飛行機のイメージで創作魔法を組み合わせればいけるんじゃないかな?」
「その理屈だとオレでも可能かもしれないのかー?」
「できるとは言い切れないけど、可能性はあると思うよ?時間がかかるかもしれないけど、試してみる価値はあると思うよ?」
「アキがそこまで言うならいけるかもしれないなー。よし!じゃあ、ミルちゃんを送り届けれるようオレたちは頑張るぞー!」
「「「おー!」」」
「あたしもできるのかしらね~?」
「ナナも大丈夫だよ。ボクもできる限り理論でアシストするから」
「···あ~、またお勉強ね?大丈夫かしら?」
理論上は可能なんだし、魔法があるんだからなんとかなると思うけどね!今年の年末年始は落ち着いて過ごせそうになくなったね。
新キャラの金竜の女の子ミルちゃんはリオくん同様寝相が非常に悪かった!でも落ちてきたところがアキくんのところでよかったですね~。全身骨折状態でしたが回復魔法で何とかなりましたんでね。
ここからのお話は浮遊大陸へどうやって行くか?がメインになります。ここで役立つのが第15章でケンくんが羽田空港の売店で買った航空機の資料や模型なんですね!あれはフラグだったんです。
書いてた時は考えてなかったですけど···(笑)。
さて次回予告ですが、一時的?に帰れなくなってしまったミルちゃんはリオくんの家で生活を始めます。何から何まで初めてなミルちゃんにあれこれ教えますよ~。まずは温泉だ!
それではお楽しみに~!




