1-14.知らなかったのか?オレからは逃げられない!
「えっ!?も、もしかして、あなた様は!?申し訳ありませんが、詳しく事情を聞くことになります。お連れの方と一緒に別室に案内させてもらいますね」
「えーっ!?ど、どういうことだー!?入れないのかー?」
リオが審査に引っかかった。一体なにやらかしたんだろう?即拒否ではなく別室案内だから、まだ入れる可能性はあるんだろうけど、厄介ごとに巻き込まれた可能性が高そうだ。
でも、この街にはリオの仲間である整調者のカーネさんとアイリさんがいるんだ!リオが何かやらかしているとしてもかばってもらえるはずだよね?
不安な中、せっかく審査を通過したボクも一緒に別室に連れていかれてしまった。
リオはめっちゃ困惑してるよ···。
「誠に申し訳ありませんが、担当の者が来るまでしばらくこちらにてお待ちください。机の上にある飲み物はご自由に飲んでいただいて構いませんので」
さっきの審査官が申し訳なさそうに伝えてきた。
小さな部屋だけどソファが置いてあって、取調室ではなく応接室っぽい感じだ。飲み物も用意されてるし、犯罪者扱いではなくお客さま扱いのようだね。
「なぁー、アキー。オレたちってどーなってしまうんだー?」
「リオはなにもやってないんでしょ?だったら少なくとも犯罪者ではないと思うよ。それに飲み物も用意されてるからお客さん扱いなんだと思う」
「でもでもー!担当の者って一体誰なんだー?オレは誰に担当されてるんだー?」
「それはわからないよ。ただ、待っていれば来てくれるんだからしばらく座って様子をみておこう」
「そうだなぁー。逃げるっていうのもマズそうだからなー」
「そうそう。そんなことしたらなおさら立場が悪くなっちゃうよ。飲み物用意してもらってるんだから、ありがたくいただいて待っていようね」
さすがに飲み物になにか仕込まれてるってことはないと思うんだよね。万が一そうだったとしてもボクの回復魔法である程度は回復できるだろうけどね。
···1時間近く経過し、今は午後6時半だ。結構待たされているよ。担当の人って今日中に来てくれるのかなぁ?
そう思っていると、廊下からドスン!ドスン!と大きな音が近づいてきた。んっ?これって足音?にしては音が重たいような気がするんだけど···。
そうして扉の前で足音っぽい音は止まった。その直後、バーーン!と扉が開いた。勢いで開いた扉は蝶番が壊れてしまい、ボクたちがいる部屋のほうへ倒れてしまった。
一体何ごと!?と驚いていると、部屋の入口に身長2m近くの大きな体格の男が立っていた!
えっ!?どちら様です?ズンズン入ってきてリオを抱きしめ···、ようとしたら首を絞めていた。
「おおっ!!リオー!!やはり生きてたか!?探したんだぞ!!って、なんか小さくなってないか?リオだよな?」
「ク、クルシイ···。きゅう」
「おい!?大丈夫か!!どうしたんだ!?しっかりしろ!!リオーーーーー!!!」
「あ、あのー。首が絞まってて返事できないと思うので離してあげたらいいと思うんですけど」
リオは首が絞められてしまい、虫の息だ。それを指摘してあげる。あれ!?リオの顔が真っ青になってきてるよ!魂が口から出かかってる!!マズくない!?
「なんだと!?おおっ!確かにキメてしまってたか!これでどうだ?大丈夫か?」
「ハァッ!ハアッ!し、死ぬかと思ったぞー。おい!カーネ!!会っていきなりなんてことするんだー!!」
「おお、よかった!生きとったか!大魔王なんかにやられはしてないとは思っていたが、元気そうでよかったぞ!はっはっは~!」
「あやうくお前に殺されるところだったけどなー!大魔王より酷い目にあったぜー」
「まぁ、そう言うな!こっちもあの後からお前が行方不明だったので心配だったのだ!訪ねてきてくれてうれしいぞ」
「まぁ、こういうことになるだろうとは想定していたけどなー。やっぱり会いに来るんじゃなかったぞー」
「そうならないようにいろいろと手配していたからな。知らなかったのか?オレからは逃げられない!」
「やっぱりあの劇はお前たちの仕込みだったかー。恥ずかしい思いをしたんだぞー!」
「おっと!ツーデン劇団の演劇を見たのか!?かっこよかっただろう?お前の再現にも苦労したんだぞ。はっはっは~!」
この人がリオの仲間のカーネさんかぁ~。やっぱり本物は違うね。劇だとスラっとした青年でかっこいい口調だったけど、本物はまさに巨漢!って感じの人だ。武器も斧だし、口調も丁寧さはあんまりないね。
あれ?確か兄妹で妹のアイリさんがいるって聞いてたけど、ここには来てないのかな?
「そういえば、アイリはどうしたー?ここには来てないのかー?」
「アイリは今は領主邸で書類仕事中だ!オレはちょうど外壁の外で魔獣駆除作業を行った帰りだったのだが、門番から審査でリオらしきドラゴン族が来ていると聞いてな!こうして迎えに来たというわけだ」
「そういうことかー。じゃあ、今から領主邸に行ったらアイリもいるんだなー?」
「おう!そうだ。話したいこととか、これまでお前が何をしていたのか、腹を割って話し合おうじゃあないか!」
「そうだなー。説明する必要はあるよなー。こっちも文句あるからな。じゃあ案内してくれよー」
「じゃあさっそく!と言いたいところだが、ところでリオ。隣にいるこのお嬢ちゃんは誰だ?」
···やっぱり女の子扱いかぁ~。どうにかならんかなぁ~。まぁとりあえず自己紹介しておくか。
「初めまして、カーネさん。ボクはアキと言います。リオと一緒に旅をしています。ちなみにこんな見た目ですけど男です」
「おいおい!男の子だなんて冗談はよしてくれ!大人に対して嘘をつくんじゃあない。こっちは真剣に聞いてるんだぞ?」
ええっ!?信じてもらえない!?どうしよう?なんとかしないと女の子扱いされてしまう!さすがにズボンを下すのはためらわれるから、なんとかごり押ししないと!
「いや、だから!ボクは男ですって!!女の子じゃないんですってば!!」
「そうなのか!?おい!リオ。この嬢ちゃんが言ってることは本当か!?」
「ハハハッ!アキの言うとおりだぞー。アキは立派な男の子だー!」
「そ、そうなのか···。いや、済まなかった。まさかこんなにかわいい子が男の子だとは。ちょっと自分自身の常識が信じられなかったよ」
「もういいですよ、カーネさん。よろしくお願いしますね」
「こちらこそ!それじゃあ領主邸へ出発しようか!」
なんとかリオのおかげで納得してくれたよ。もしかすると領主邸で今度はアイリさんに同じ質問されそうだなぁ~。
劇団でも演じられていたカーネさんご本人が登場しました!
明日はアイリさんも登場します。
どうも劇団での雰囲気が違うようなので、どんな感じなのでしょうかね?
さて、明日で第1章は完結します。
明日は日中仕事なのですが、朝の通勤中の電車の中から投稿する予定です。
昼休憩時にネタバレ集と設定資料集をできれば投稿し、第2章は帰宅してから投稿を予定しています。
なので、明日はなんと4回投稿します!
さらに日曜もこれまた仕事なんですが、出社前と帰宅後の2回投稿を予定しています。
土日は暇だ!という方はお楽しみにしてください。




