14-18.サキちゃんを捕まえろ!皇城内は大パニック!後編
わたしはお城の西の方を探しに来たんだけど···。
なんか、訓練所っぽい場所なのよね~。さすがにこんなところにはサキちゃんは来ないわよね?
そう思って立ち去ろうとすると···。訓練生っぽい人が通りがかったのよ。
「んっ?ドラゴン族の子ども?なんでこんなところに?おーい!そこのキミ!ここは見学コースじゃないよ!迷ったのかい!?」
「えっ!?違うわよ!わたしは今鬼ごっこで女の子を探してるのよ。見かけなかった?」
「いや、キミしか女の子は見てないけど?」
「そう。じゃ、ここにはいなさそうね〜。別の場所を探すわ。ありがとね~」
「あ、ああ。···んっ!?鬼ごっこ?城の中で?ちょっとキミ!···って、もういなくなっちゃったなぁ~。何だったんだろう?」
「おい、どうした?何か変なものを見た顔して···」
「ああ、さっきドラゴン族の女の子が鬼ごっこで女の子を探してるって言っててな?城の中でそんな事できやしないのに何言ってるのかなぁ~?って思ってな」
「···おいおい、見学コースの子どもじゃないのか?」
「違う、って言い切ってたな」
「許可証持ってたか?持ってればどういったヤツかはわかるぞ?」
「···持ってなかったような気がするなぁ~」
「おい!なんで確認しなかった!?不正に入ったって事じゃないか!?すぐに警備兵に報告へ行け!一大事になるかもしれないぞ!」
「わ、わかった!」
···ん?なんだか後ろが騒がしいわね?何か事件かしら?まぁ、わたしは鬼ごっこでそれどころじゃないけどね。
そう思って歩いていたら、なんと!正面からサキちゃんが走ってこっちに向かってきてるわ!これはわたしが勝ったわね!
わたしは全速で飛んだ!これなら避けきれないし逃げ切れないわよ!
サキちゃんも気づいたわね!だがもう遅い!
抱きしめて捕まえようとしたところ、なんとわたしをピョーンって飛び越えてしまったの!
この速度で避けられるなんて!?目でサキちゃんを追おうとして首を後ろに向けた瞬間!!
ガンッ!!
「いったぁーーい!!」
前を見てなかったので、思いっきり頭を柱にぶつけちゃったのよ!
そして···!
メキメキ···、バキッ!!
なんと!柱が折れちゃった!?
そして!
バリバリバリーー!!!ズシーーーン!!!
···ひさしが一部壊れちゃったわ。···どうしよう?こんなはずじゃなかったのに···。
呆然としていたところに、音を聞いて何人かが駆けつけてきた!
「なあっ!?こ、これは!?」
「何者かの襲撃か!?」
「見ろ!崩れたところにドラゴン族の子ども!?どういう事だ?」
「お嬢ちゃん!大丈夫かい!?」
「···え、ええ。大丈夫よ」
「良かったぁ~。巻き込まれたのに無傷なんて、ドラゴン族はさすがだなぁ~。···ところで、ここは見学コースじゃないけど、どうしてここに?」
「あっ!そ、それは···」
その時!後ろからたくさんの警備兵がやってきたのよ!
「そいつを捕まえろーー!侵入者だぞー!!」
「えっ!?し、侵入者だって!?」
「た、確かに許可証持ってないぞ!?じゃ、これはテロだな!?」
「ちょ!?違うわよ!鬼ごっこした事故よ!」
「そんなわけあるかーー!捕まえろーー!」
「ああ!もう!どうしてこんなことになっちゃったのかしら〜!?」
その頃、城のヒズの執務室では···。
「ヒズ様!緊急案件でございます!」
「···何事だ?」
「はっ!侵入者です。皇宮手前まで獣人の子どもが侵入しており、現在親衛隊が追跡しています」
「···見学者が迷い込んだのでは?」
「どうも許可証を持ってなかったので問いただしたら逃げたようです」
「···はぁ~。陛下をアキ様に預けてホッとしていたのに···。すぐに第一級警戒態勢。近衛隊数人を陛下の会議室外で待機させておくように」
「了解!」
心静かに仕事ができないですなぁ~。そして、がっかりしたところで別の伝令が来た。
「申し上げます!侵入者です!総務部に賊が侵入し、書類がダメにされました!!」
「申し上げます!倉庫に賊が侵入!タルのほとんどが破壊された模様!」
「申し上げます!訓練所近くの通路のひさしが賊によって損壊!賊は逃亡中です!」
「いったいどういう事だ!?なぜ同時多発的に侵入を許した!?どこから侵入を許したのだ!?皇国の沽券に関わるぞ!!」
「不明です!総務部からの逃亡者は獣人の女の子のようです!」
「倉庫はドラゴン族の男の子です!」
「訓練所はドラゴン族の女の子です!」
「···なん、だと!?アキさんの子どもたちじゃないか!?どうして···?
···はっ!?しまった!!私が許可証を渡していなかったぞ!!」
「···ヒズ様?」
「その子どもたちは陛下の極秘のお客さまだ!失礼のないようにするのだ!」
「え〜〜っ!?そんなの聞いてないですよ!」
「極秘のお客さまだから正門ではなく搬入口から入らせたのだ!正式な手続きでないから周知徹底していなかったのが失敗だったか。とにかく!失礼のないように!私も出るぞ!」
「はっ!!」
···私も歳を取ったものだ。こんな単純なミスを犯してしまうとは。もう後任に任せる時期が来たのかもしれませんなぁ~。
しかし、あの放蕩皇帝陛下に対応できる傑物なぞ、そうはいない。いたらすでに私は隠居しているはずだしなぁ〜···。
パス様はまだしも、サキ様はパス様を超えるじゃじゃ馬娘だ!もはや私の手すら負えぬ状態だ。
ここでなんとかせねば、皇国は滅亡してしまう!!誰か!誰かおらぬのだろうか!?
私の心の叫びも虚しく響いてしまう···。
···どうも子どもたちは中央庭園に追い込まれているようだった。私も急いで庭園ヘ向かった!
そこには城にいる警備兵と近衛兵が子どもたちを幾重にも囲っていた。
「待ちなさい!この子どもたちは私が預かる!皆のものは通常の配置に戻れ!」
「ヒズ様!?こ奴らは子どもとはいえ、侵入者ですぞ!?」
「違うのだ!陛下の極秘の客人なのだ。私が許可証を渡すのを失念しておったのだ」
「そ、そうでしたか!では、ここはヒズ様にお任せいたしますぞ。それでは!」
まさかこんな大事になるとは···。しかし、なぜ会議室を出たのでしょう?こんな騒ぎにならないと思うのですが···。
「大変失礼しました。皆さまに許可証を渡し忘れていたとは思いもせず、ご迷惑おかけいたしました」
「い、いえ。おれたちも、サキちゃんが鬼ごっことかくれんぼをするって事で会議室出ちゃいましたし···」
「···と言うことは、今回の犯人はサキ様ですね?」
「そうなるのかしらね?わからないけど」
「いえ、間違いなくサキ様です。皆さまが許可証を持ってないと気付いて皆さまにいたずらをしたのでしょう」
「···とんでもないわね」
「とにかく、会議室に戻りましょう。そろそろ昼食をご用意できる頃ですし」
「ぼく、疲れたよぉ〜」
「···おれも」
「···ナツも」
「わたしもよ〜」
そうして子どもたちを会議室ヘお連れしたところ、扉の前にはサキ様がいらっしゃいました。
「あ〜!戻ってきた!楽しかったでしょ!?このゲームはサキの勝ちね!!」
堂々と勝利宣言をされ、私たちはどっと疲れが出たのでございました···。
パワフルなサキちゃんでした!人並外れた子どもたちを手玉に取ってしまいましたね~。
そしてヒズさん···。普通の人なら『やってられるかぁーー!!』って投げてしまいそうなんですが、絶大な愛国心でなんとかこらえています。ただ、サキちゃんはレベルが違いすぎたようですね。
後継者は···、ちょっと荷が重すぎて誰も志願しないかもしれないですね。皇国の未来はどうなるのか!?
さて、次回予告ですが、パスさんから今回の謝罪と、皇国の影武者などの制度について説明があります。まぁ、とんでもない内容なのでアキくんにとっては非常識なお話ばかりですね。
そして、皇国滞在中のレジャーについて提案を受けます。前回は襲撃があったので中止になってましたからね。
明日と明後日は土日なので朝と夜に1話ずつ投稿します。お楽しみに~!




