14-14.パスさんからのお願い
本日は作者が夜勤なので朝に投稿しています。
「やっほー!お久しぶり!!画面越しでみるよりも少しは成長したようね!アキくん!」
「パ、パスさん!?ど、どうしてここに!?」
「もちろん仕事を『堂々とサボる』ために決まってるじゃない!肩凝っちゃったわ~」
「ボクたちをサボる理由にしないでくれませんか?ボクたちが怒られそうな気がするんだけど?」
「それは皇帝権限でさせないわよ?私がこの国で一番偉いんだからね!」
「もはや国を私物化してるね。クーデターが起きても知らないよ?」
「大丈夫よ!情報部からの報告だと支持率は9割超えてるんだからね!」
「情報操作の影響か···。おっそろしいことしてるなぁ~···」
「もう!こんなくだらない話を玄関でさせないでよ!せっかく来たんだから中に入れてよ!家族も連れてきたんだからね!」
「えっ!?そ、そうなの!?」
「そうよ!ほら、いらっしゃ~い!」
最初はパスさんだけ来たと思ってたら、横から旦那さんとお子さんがひょっこり出てきたんだよ。
「やあ。画面越しでは何度かお会いしたね。改めましてパスの夫のケイだ。こうして直にアキさんとお会いできて嬉しいよ」
「そうですね。ご無沙汰してます、ケイさん。あとはサキちゃんもいるのかな?」
「いるわよ~。サキ!アキくんにごあいさつなさいな!」
「は~い!アキさん、こんばんは!サキです!」
「サキちゃんもこうして直に会うのは初めてだね!よろしくね~!じゃあ、中へどうぞ!」
そう、パスさんは8年前に結婚したんだよ。パスさんがいたずらを仕掛けてボクたちの結婚を目の前にして悔しい思いをしちゃったから、その後に身分を隠して猛烈に婚活をしたらしいんだよ。
そうして出会ったのがケイさんだったんだ。冒険者で、主に商隊の護衛任務に就いてたらしいんだけど、たまたまその商隊が魔獣に襲われてた時にパスさんが加勢した事がきっかけだったんだって。
ケイさんも、パスさんがまさか皇帝だなんて知るはずもなかったんだけどね。多少驚きつつも、冒険者活動を皇国に移すだけで普通にしてればいい!って口説き落としたそうなんだよ···。
自由すぎる皇帝だからこんな事ができちゃうんだろうね~。
そして、今は7歳の女の子のサキちゃんがいるんだ。この子も今の時点だと皇女であり、次期皇帝候補になるんだよね。···パスさんによると、普通に城を抜け出して街中で遊んでるらしいけど。
「あ~!サキじゃない!こうして会うのは初めてね~!」
「リナお姉ちゃんだ~!これが本物のしっぽと翼かぁ~!触っていい!?」
「いいわよ~!ホラ!」
「わぁ~!もふもふ~!」
「ぼくのも触るかい、サキちゃん?」
「うん!ケンお兄ちゃんももふもふだ~!もふもふ天国ぅ~!」
サキちゃんは子どもたちと初めて対面して嬉しそうだ。いつもはちーむッス!の画面越しでお話してたからね。ほほえましくその様子を見ていたら、今度こそ食事が運ばれてきたようだね!
今回は11人という大人数だったけど、この部屋はとても大きいので問題なかったよ。ちゃんと子どもたちにはお子様ディナーになってたよ。···食材が豪華すぎるけど。
「それでは~!アキくんたちの9年ぶりの皇国来訪を記念して!かんぱ~い!」
「「「「かんぱ~い!」」」」
「あ~!これ、ものすごく冷えたビールじゃないか!まさか、もう実用化しちゃったの!?」
「そうよ~!アキくんの元の世界にあるっていう『れいぞうこ』ってヤツの再現に成功したのよ!原理を教えてもらったからね~。氷魔法よりも少ない魔力で再現できるのは素晴らしいわ!これで食糧事情も大幅に改善されるわ~!アキくんのおかげで支持率は天井についちゃってるのよ!ありがとね~!」
「あんまり魔道具を発展させすぎるとまた魔力不足になるよ?ホドホドにしてよ?」
「この程度なら大丈夫よ!アキくんが教えてくれた『たいようこうはつでん』ってのも魔力で再現できたから、まだ余裕あるしね!」
そう、ちーむッス!でパスさんとはしょっちゅう連絡をとりあってたんだけど、ある時にちょっとだけ元の世界の電化製品の話をしちゃったら思いっきり食いついちゃったんだよ。
そこでいろいろな電化製品と、その原理について紹介しちゃったんだけど···。その原理を魔道具で一部は実現しちゃったんだよね~。
まぁ、冷凍機の原理なんてモータがあれば実現可能だしね。魔道具の回転機を応用して再現したのが冷蔵庫だったんだ。
もちろん魔力を消費するんだけど、ポンプの制御方法も元の世界の省エネ方法を伝えると、これまた再現されちゃったんだよ。
まさに『皇国の技術力は世界一ぃーー!』ってパスさんが自慢するぐらいだね。国民全体の学力が高いのと、みんな新技術にのめりこんじゃったってのがあったらしいけど。
さらには太陽光を魔力に変換する技術も開発ができてしまってたんだ···。しかも蓄魔機能付き!これも太陽光発電の仕組みを教えたのと、ボクたちが持ってる蓄魔の腕輪の応用だそうだけどね。
もはやここまで来ると、元の世界に匹敵する快適さを実現できるんだよね···。これにちーむッス!の通信技術も、ジスタ3国のエミッタと共同開発中だそうだから夢じゃなくなってきてるんだよ。
ファンタジーな世界なのに元の世界のような現実世界っぽくなるのは奇妙な感じがするなぁ~。確かに電気と魔力って理論的に扱いがほぼ一緒ってのもあるんだけどね。
「それにしても、フユくんたちってテーブルマナーがしっかりしてるわね~。そろそろサキにも教えなくちゃいけないんだけどなぁ~」
「あ~、それボクが軽く教えたんだよ。レオナード王国の王城でお世話になった際にイスピ女王陛下に失礼のないように!ってね」
「でも、イスピさんはあんまり気にしてなかったんじゃない?あの人も結構豪快だしね~」
「気にしてなかったけど、イスピ陛下も教えてくれてたよ。『将来役に立つかもしれないからね~!』って言ってね。まぁ、しっかりできてたようでビックリされちゃったけどね」
「でしょうね~。ホント、アキくんの教育方法を教えてほしいわ!この年齢でここまで学力も強さもマナーも備えちゃってるんだから!学園でも授業が大人気らしいじゃないのよ!?」
「ははは···。子どもたちや学生の皆さんの熱意がすごいだけだよ。ボクは大したことしてないんだしね」
「···そう言い切っちゃうってのが自覚ないんだろうなぁ~。まぁ、学園をクビになったらうちで雇えるから、いつでも言ってね!高待遇だから!」
「クビって···。そんな事になるわけないじゃないか!···まぁ、保険があるって思うだけでも安心感がより高まるけどさぁ~」
「あっ!そうそう!ここでいきなり相談なんだけど、いいかな?」
「はい?本当にいきなりだなぁ~。無茶な相談はお断りだよ?」
「そんな無茶じゃないんだけどなぁ~。うちのサキをアキくんとこにホームステイさせたいのよ。アキくんの次の長期休暇までなんだけど、いいかな?」
「···へっ!?う、うちにホームステイ···、って!?」
「そうよ!サキには皇国以外の場所でいろんな経験をしてほしいってのがあるのよ。次期皇帝になるなら、他国の経験をしておくのは大事だわ!でも、他の国の王族とかにお願いするってのもちょっと心配だったのよね~。その点ではアキくんとこだったらセキュリティーは『大魔王が直接攻めてこない限り万全』だわ!
ね!?どうかしら!?次世代の皇国のためにお願いできないかしら!?」
「え~~!?これからフユお兄ちゃんやナツお姉ちゃんと一緒に暮らすの~!?たのしそ~!!」
「ほら!サキも楽しみにしてるわよ!もう答えは決まったようなものね。部屋はもう一つ余裕あるでしょ?」
「いや、あるけど今は物置にしちゃってるからなぁ~。無限収納カバンに入れるだけだからすぐに片付くけど···」
「···アキ?私はいいよ。サキちゃんに来てもらっても」
「ハル、いいの?···じゃあ、いいよ。今回の旅は皇国止まりだね。ウェーバー大陸へは来年冬の長期休暇の時になりそうだね」
「···ん。急ぐ旅じゃないし、それでいいんじゃない?」
「ありがとね~!お礼として、サキの生活費はもちろんのことだけど、ウェーバー大陸への船の確保とか渡航準備はこちらで手配しておくわよ。決まったら早めに知らせてね!ついでに魔法とか武術とかも教えておいてもらえると助かるんだけどなぁ~」
「わかったよ。じゃあ、皇国を離れる時にサキちゃんも一緒に連れていくね」
というわけで、今回の旅はここまで。皇国でゆっくりしてからサキちゃんも一緒にアクロへ帰ることになったんだ。
パスさんの家族が初登場です!サキちゃんはアキくんのところでしばらくホームステイするので、出番は多めになりますよ~!しかし、この国は皇族も自由奔放すぎますね。まぁ、正体を知られていないから自由にできるんですが、現代だと顔バレしてしまうので無理ですよね?ある意味ローテクなのでできる自由なんですよ。
さて次回予告ですが、アキくんたちは皇城へ行ってこれまで仕入れた情報をちーむッス!を活用してみんなで共有することになりました。
そこで城内の会議室で会議をします。まぁ、ぶっちゃけパスさんが堂々と仕事をサボりたい!ってのが一番の目的ですけどね。
明日は夜勤明けなので通常通り21時頃の投稿です。お楽しみに~!




