14-11.私が町長です(悪質なフラグが立った!)
本日は土曜なので、夜勤明けの早朝に1話投稿しています。今日ここから見ちゃった!という方は1話前から読みましょうね~。
グロー歴514年9月3日 曇(霧)
おはよう!ちょっと曇り空で肌寒いかな?霧も出ててあんまりない見通しは良くないね。
今日も皇国に向けて街道を進んでいくよ。
ただ、気になるのは昨日酒場で仕入れた情報に『妖精』を見かけた!というのが多かったって事なんだ。
となると、ぼくたちも出会ってトラブルに巻き込まれる可能性が非常に高いという事だ。トラブルエンカウント率常時3倍だからね···。
出発時間はいつもより早めの午前8時半だ。今日のリオはナナが口と鼻を塞いで窒息させるという強引な手法だったね。···リオの取説にはあと何種類書かれてるんだろう?もちろん、リオの朝食は歩きながらだ。
歩きながら朝食って、ギャルゲーおなじみのシチュエーションだけど、すでにボクたちは結婚しちゃってるから恋愛フラグなんて立たないよ!浮気なんて絶対しないからね!
さて、濃霧のなか、ボクたちは非常にゆっくりと歩いていた。見通し効かない以上、走ったりしたら馬車との接触事故が起こっちゃうからね。
「ホント、何にも見えないよね~。おれたちの集団以外は真っ白だなんて初めてだよ~!」
「あんまり離れるなよ~!ボクたちは地図アプリがあるから迷うことないけど、迷子になって捜索って厳しいからね!」
「···ナツはもうどこ歩いてるかわからなくなってきたよ」
「ホントこの道で合ってるのか、わたしも不安になってくるわね~」
「まるでミルクのなかを歩いてるようなもんだね。ぼくも不安だよ~」
そう、視界は2mぐらいなんだよ。まさに地吹雪のホワイトアウトみたいな状況だ。街道とは言え、障害物があってもおかしくないからね。
こんな状況で魔獣に襲われたら危ないんだけど、なぜかこの霧に入ってからは魔獣レーダーに反応がないんだよね。それだけは救いだよ。
しかし、どうしよう?ここまでひどい濃霧だと動くことでさえ困難になりつつあるよ?これが引き返したほうがいいかなぁ~?
引き返すことを考えながら、かなりペースを落としてゆっくりとした足取りで進んでいくと、子どもたちが何かに気づいたんだ。
「···あれ?誰かいる?」
「···なんか話してる?」
「ホントね。まさか、妖精かしら?」
「姿がまだ見えないから不気味だよ~!姉ちゃんは怖くないの?」
「どこが怖いのよ?気の持ちようよ!」
「···み、みんな?何か聞こえるの?ボクには聞こえないんだけど」
「何が聞こえるんだー?オレも聞こえないぞー?」
「まさか、子どもたちにしか聞こえないのかしら?」
「···だとしたら、私たちはムリだね」
子どもたちにしか聞こえないなんて、某モンスターを仲間にして花嫁さんと冒険するゲームっぽいなぁ~。しかし、なんて話してるんだろうね?
「フユ?なんて話してるかわかるか〜?」
「なんか助けて欲しいって言ってるっぽいんだけど···」
「そうね。そんな感じだとわたしも聞こえるわね」
「···ちょっと聞いたことない言葉が入ってて聞き取りにくい」
「ぼくもなんとなくしかわからないね」
救援要請?だから森の奥地から街道に出てきているのか?子どもたちしか声が聞こえないから姿だけ見せたって事かな?
「フユ!ボクたちにどうしてほしいか聞いてみて!」
「うん!ねえねえ、キミたちっておれたちにどうしてほしいの?···ふむふむ?···う〜ん。···えっ!?そうなの?」
フユが話を聞いてくれてるけど、ボクには独り言を言ってるようにしか見えないんだよなぁ~。見えないから仕方ないんだけどね。
「パパ。とりあえずわかったことを言うね。
どうも妖精の町の近くにある洞くつに魔獣が住んじゃったんだって。妖精たちだと太刀打ちできないから、街道で声をかけまくったんだって。でも、妖精の姿を見てみんなビックリしちゃって逃げちゃったから困ってたみたいだよ」
「そうなんだね。じゃあ、ボクたちにその魔獣を倒してほしいって事かな?」
「···そうだって!どうしよう?」
「リオ?どうする?寄り道する?」
「救援要請してる以上、見過ごしたくないなぁー。まぁ、とりあえず行ってみるかー?」
「じゃあ、そうするか。フユ、妖精さんに案内をお願いして」
「うん!···ついてきてって言ってるよ!」
という事で、ボクたちは妖精についていくことにしたんだ。···わかってるよ?トラブルに巻き込まれたって。
でも、いつも子どもたちには『困ってる人がいたら助けてあげよう』って言ってるからね。できる限りの事をしようかな?
街道を外れて道なき道···、ではなくって、いきなりちゃんとした道が現れたんだ。霧もそこだけ晴れていた。
ここで初めてボクたちにも妖精が見えた!15cmぐらいかな?元の世界のうちにあったフィギュアと似たサイズだね。お持ち帰りしないよ!!
そしてちょっと長い橋を渡ると、そこにはミニチュアサイズの町があったんだ。
ちょっとボクたちは町中に入れないなぁ~。入ったとたんに踏みつぶしちゃいそうだよ···。そう思っていたら、1人の年老いた妖精が飛んできたんだ。
「おおっ!?ついに、ついに捕ま···、ゲフンゲフン!ま、魔獣を倒して下さる人が見つかったか!」
「···今、『捕まえた』って言いそうになりませんでしたか?」
「空耳ではないかな?旅の方と見受けるが、今回は魔獣の『いけ···』、ゲフンゲフン!···失礼。年取って調子悪くてのう。魔獣の『退治』に協力していただけるとか!ありがたいですじゃ」
···来るんじゃなかったかな?さっきから『捕まえた』だの『いけにえ』だの、物騒な本音が丸聞こえなんだけど?この時点でかなり怪しくなってきたぞ?
「はい。それで、どんな魔獣なんですか?」
「ものすごく恐ろしい魔獣じゃ」
「いや、どんな『特徴』の魔獣なんですか?」
「大きい魔獣じゃ」
「···さっぱりわからん!それじゃあボクたちはどう対策したらいいかわからないですよ?」
「とにかく洞くつに住み着いてるのは間違いないんじゃ!そこに行って『いけ···』ゲフンゲフン!···失礼。行っていただければわかるぞ?」
···なんかこれってヤバくない?ボクたちをハメようとしてる気がプンプンするよ。
「リオ?どうする?」
「とりあえず洞くつに行ってみるかー?まー、たいていの魔獣はなんとかできると思うぞー」
「ちょっと不安なんだけど···。じゃあ、『入口まで』とりあえず行きますよ。そうそう、ボクはアキって言いますけど、あなたは?」
「おお!そうじゃった!私が町長です」
ハイ!ヤバいイベントだった!すぐに逃げよう!生贄という事は、ボクたちが洞くつに入った瞬間に閉じ込める気だ!某ロマンあふれるゲームの3作目のイベントまんまじゃないか!?手口は知ってるんだ!その手には乗らないぞ!
「そうですか。ではこの話はなかった事で。失礼します」
「えっ!?パパ!?」
「ア、アキ!?どーしたんだー!?」
「ちょ!?ま、待ちなされ!なぜ!帰ろうとするんじゃ!?」
「ボクたちが洞くつに入ったら閉じ込める気でしょ!?さっき『いけにえ』って言おうとしてたから気づいたよ!やらせはせん!やらせはせんぞー!!」
「くっ!?なんて感の鋭い女だ!!だがもう遅いわ!!もうお主らはこの町からは出られんぞ!橋を渡ってきたじゃろう!あの橋は一方通行でこちらからは通れんぞ!飛んでも結界に阻まれて不可能じゃ!!」
「完全にハメたな···?」
「そこまでするのかよー!?」
「···ちょっと引くね」
「ないわ〜。救援求めてそれはないわ~」
「ハハハ!言ったモン勝ち!やったモン勝ちじゃ!なに、魔獣を倒してくれれば脱出用アイテムを渡すぞ。大人しく退治に行ってくるがいい!」
「···戻ったら一発殴らせろ」
「パ、パパ!落ち着いて!おれが頑張るから!」
「···さっさと倒してとっととここを出よう。···さすがにナツもムカついた」
「妖精ってかわいい見た目なのに恐ろしいわね···」
「こんな人たちもいるんだね。ぼくも嫌になっちゃったよ」
妖精っていたずら好きって元の世界では言い伝えられてたけど、ここは凶悪すぎたなぁ~。今までで最悪のトラブルだよ···。まさか善意につけ込まれるとは思わなかったなぁ〜。
本作の妖精はいたずらレベルの話ではなく、思いっきりハメにかかってきました!
ドンドンエスカレートしてしまったためにこのような事になりましたが、この町長が『言ったモン勝ち!やったモン勝ちじゃ!』って言ったのは最近の世相そのままの皮肉です。特に年配の方はこんな考えしてる人多いと感じるのは作者だけでしょうかね?それとも作者の周囲の人がちょっと···、な困ったさんな方がいるだけなんでしょうかね?
このイベントは某大作RPGのネタ2つ投下しています。ムカつくセリフそのまんまだし(笑)!
知ってれば結末もある程度予測できるかと思いますので、次回予告しちゃいましょう!
さて次回予告ですが、ブチギレたアキくんたちはその魔獣退治のために洞窟に向かいます。
そしていつものアキくんらしからぬ作戦を立ててしまいます。
さらにそこで新たな真実も明らかになります!ただのいたずらイベントのつもりでしたが、この後のお話に深く関わってきますよ~!
明日も朝と夜に1話ずつ投稿します。お楽しみに~!




