14-10.峠を越える
今日と明日は土日なので朝と夜に1話ずつ投稿しますよ~!
「な、なんだー?この大きな雪の塊はーー!?」
「あっ?や~っとパパが起きたわね!これはアキパパが教えてくれて、わたしたちが作った『雪だるま』よ!すごいでしょ!」
「いつの間にこんなでっかいものを作ったんだー!?」
「パパがお寝坊している間に作ったんだよ。パパも作ったら良かったのに」
「こんなに大きいと倒れた時に大変だぞー!ここを出発前に壊すぞー」
「リオ、壊さなくていいんだって。ここは雪が解けることがあんまりないから大丈夫だそうだよ」
「そうなのかー?アキが教えたってことは、これってアキの元の世界のものなのかー?」
「そうだよ。他にも雪で作った巨大な像を作ったりしてたんだよ」
「はぁー、すげーなー。そんな発想はなかったぞー」
「さて、リオも起きたことだし、そろそろ出発しようか!」
「···そうだね。···師匠、お世話になりました。···元気で」
「···ふふっ。ハルも元気でな。かわいい子どもを連れてきてくれて嬉しかったよ。···もう会う事もないだろうね。···いや、あの世で待ってるとするよ」
「···冗談。···待ってる間に恨んでる人たちから集中攻撃を受ける。···そんな余裕はないはずだよ」
「ははは!そうかもね!···この先も気をつけな。···大魔王が生きてたらしいし、乱世になる可能性が高い。生き延びることを最優先に考えな」
「···そだね。···すでに2戦やりあって、もう会いたくないよ。···それじゃ」
「チパさん。ありがとうございました。ボクたちはこれからも幸せに暮らしていきますね!」
「···ああ。ハルと一緒に幸せになりなよ」
こうしてボクたちはブートの里を後に出発したんだ。
「パパ?ここから先って峠道って言ってたよね?途中はキャンプになるの?」
「峠の手前と越えた先に宿場町があるみたいだからキャンプはなしかな?手前は午前中に通り過ぎるから越えた先で宿泊だね。峠越えは雪が積もってたら大変かもしれないけど、頑張って歩こうね」
「徒歩じゃなくてナナに乗っけてもらった方が速いんじゃないのかー?」
「天気が悪いし、気流が悪いからダメだよ。峠とかだと風の流れが集中するし、大きな山があると『山岳波』っていう強烈な乱気流が発生しやすいから、飛ぶのは危険なんだよ」
「へぇ~、そうなのね?あたしも初めて知ったわ~」
「ナナはこんな山の中を飛んだ事ないでしょ?気流って見えないから、知っておくと安心だよ」
「アキは本当に物知りよねぇ~。それも元の世界の知識なのかしら?」
「そうだね。ボクが生まれる前に飛行機っていう金属の塊の乗り物が空中分解しちゃう事故があったからね。いくら強靭な竜でもムリだろうなぁ~って思ったんだよ」
「なるほどね~!これはリナとケンもここで知れてよかったわ!他にも飛ぶのに危険なことってあるのかしらね?」
「そうだね···。霧の中で前が見えずにぶつかっちゃったとかかな?」
「おー、それはオレも経験あるぞー。山の崖にぶつかったんだなー。気を失って頭から落っこちたんだよなー。あれは痛かったぞー」
「···それで済むドラゴン族もすごいけどね」
そんな雑談をしながら歩いていくと、街道にたどり着いた。ふもとに下りたから、雪は雨に変わったよ。ここからはさらに北へ進んでいき、大きく2つに分かれる場所で峠方面に向かった。
今のところ、反対方向からの商隊はいたから、通行はできるようだね。大型の荷馬車だったから勾配も緩そうだ。
山に入る直前で宿場町があったので、宿の酒場でちょっと早いランチタイムだ。子どもたちは朝に大暴れしてたらふく朝食を食べたので、ここでは控えめだったよ。
···たらふく食べたのはお寝坊さんで朝食抜きになってしまったリオだったね。
さて、少し早い昼食を済ませて、ここから峠道が始まるよ。
「ここから山に入るんだね。両側が山に挟まれてるところなんだ~?」
「そうだね。ちょっと斜面が急だから、がけ崩れとか落石が起こるかもしれないね。注意して進もうね!」
「「「「は~い!」」」」
カーブはそれなりにきついけど、川沿いの道は勾配が緩やかだったので歩きやすかったね。ただ···、ガードレールなんて存在しないから結構怖いぞ!
まぁ、この世界じゃ吊り橋除いて柵みたいなものはないからね。ボク以外は平気で歩いていたよ。
そして3時間後、峠の頂上に着いた。雨もここで止んでくれたね!遮るものがないから遠くまで見渡せる場所だったよ。
「お~!景色がいいね!見下ろしたら一面森だよ~!」
「フユ、あんまり端っこへ行ったら落ちるぞ~!足元に気をつけろよ~!」
「は~い!」
「普段飛んでる高さよりも高い場所だから、眺めはいいわね!アキパパ?皇国ってここから見えてるのかしら?」
「いや、見えてないね。かなり先の方だからね。まだまだかかりそうだよ」
「アキパパ?この先はこの森を通っていくの?」
「そうだね。街道は森を突っ切っていくみたいだから、山を下りて宿場町を過ぎたら森だね」
「これだけ大きいと、何かいそうね!魔獣以外で!」
「リナ、それはフラグになるからやめて欲しいんだけどなぁ~」
「···そんなのがいるの?ナツも見たいね」
「いやー、そんな話は聞いたことないから大丈夫じゃねー?」
···好き勝手に言ってるよね。ボクのトラブル巻き込まれ能力をフユとナツも受け継いでるからトラブル率が3倍になってるのを忘れてない?
もうどうしようもないので、何も言わずに峠を下り始め、夕方に宿場町に無事たどり着けた。
やはり峠の手前はみんな休息するから、結構人が多いね!昼食を食べた宿場町もかなり大きかったしね。ここもお店の品ぞろえはそこそこいいよ。
今日は6時間も歩いたから疲れたね~。まずは宿をおさえるか!ここの宿はかなり大きいほうだから大丈夫だとは思うけどね。
「すいませーん!2家族8人なんですけど、ファミリータイプの部屋って空いてます?」
「おや、いらっしゃい。ファミリータイプなら空いてるね。1泊1部屋20000ジールだけど、これでいいかい?」
「はい!お願いしますね!」
よし!ここでのトラブルはなかったね!最近間違えられないな!子連れだからかな?ここがいつも鬼門だったからね。···って言うか、これが当たり前なんだけどね~。
リオと二人旅していた時は毎回ひどい目にあってたなぁ~。あれも今ではいい思い出···、じゃないな!今思い出しても腹が立つよ!特に神様にはね!
そして、部屋でくつろいでから夕食にしてたら、ちょっとした情報を小耳に挟んだんだ。
「え?妖精···、ですか?」
「そうだよ。森で見かけたってヤツが最近多くてな。森の奥深くにいるって言われてるのに街道のそばまで出てきてるようなんだよ」
「妖精って、どんな姿をしてるんです?」
「そんなに大きくないらしいぞ。背中に透明な羽があるようだな。ただ、人間嫌いだから、迂闊に近づくと痛い目に遭うってよ」
「そうですか。ありがとうございます」
妖精かぁ〜。あんまりファンタジー感ない事が最近多かったけど、やっぱり異世界だなぁ〜って気がしてきたよ。
「リオ?妖精って会った事ある?」
「いやー、ないなー。そもそもこんなところにいたってこと自体、初耳だぞー」
「妖精ってどんなのだろうね?おれ、見てみたいよ!」
「···ナツも。興味あるね」
「わたしも見たいわね!」
「でも、人間嫌いって事は、ぼくたちも攻撃されるかも···」
「まぁ、会えるとは限らないけどね。もし会ったとしても、そっとしておこうね」
···これは確実に会うことになりそうだね。やっかいなトラブルでなければいいけど。
作者は飛行機に400回以上乗ってますが、乱気流に巻き込まれたことは今のところありません。ただ、着陸直前のシートベルトサイン点灯中にエアポケットに入ってストーン!って落ちて腰が浮きかけたのはありました。確か大荒れの仙台空港に降りる時だったかな?フリーフォールで落ちる時ってあんな感じなんでしょうかね?絶叫系アトラクションはジェットコースターも込みで苦手なので···。
そして妖精さんがこの世界にもいました!もうここからの感想は次回予告の範疇なので、もうやってしまいましょう!
さて次回予告ですが、フラグを立ててしまったアキくんたちは当然のごとく妖精さんに会ってしまいます!いたずら好きというのがセオリーで、作者も書籍化されてる妖精さんの小説は腹抱えて爆笑してますが、本作ではどういう感じなんでしょうね?
次回は本日夜投稿しますので、お楽しみに~!




