14-1.おいでよ!魔獣の森?
今日から第14章全21話投稿しますね~!
土日なので朝と夜に1話ずつ投稿します。
グロー歴514年8月25日 曇
昨日でレオナード王国の首都リスタで行われていた建国祭は終了した。今日からは後片付けが始まっており、祭りの後の哀愁漂う余韻に包まれていた。
ボクたちも、予定よりも長く滞在しちゃったから、今日でお暇することにしたんだ。
「しかし、リオはとてもいい時に王都にやって来たわね~!建国祭を楽しんでもらえて良かったわ。これも大魔王を倒してくれて平和が訪れた証だったからなぁ〜。この賑わいをリオに見てほしかったという私の願いは叶ったわ。またいつでも寄ってちょうだい。もしくは魔獣に襲われたらすぐに駆けつけて退治してほしいわね!」
「勘弁してほしいぞー!もうオレは整調者じゃないんだからなー!」
「だが、その戦闘力は他の者に比べて桁違いよ?一度救ってくれたんだから、もう一度救ってくれてもいいのではないかな?」
「お断りするぞー。あの時は独身だったけど、今は家族がいるからなー。わざわざ危ない目に遭うつもりは毛頭ないからなー」
「···ははは!そうね、そうよね~!ではアテにしないでおきましょう。···まぁ、気が向いたらで構わないから。待ってるわ!」
「···嫌な言い回しだなー。だから相手にしたくなかったんだぞー」
「リオ?そう言わないの。確かにもう整調者の力はないけど、ボクたちの力もあるんだからね。できる範囲だったら協力してあげてもいいからね」
「アキは甘いなー。こいつはそういうところをつけこんでくるぞー」
「まぁ、失礼な!そうならないように少しずつ対策してきてますのよ?リオに頼るのは最後の切り札にしておくわ。···切らないようにしたいけどね」
「そうして欲しいなー。それじゃあなー」
「そうそう!ちょっと不穏な話が入ってるのよ。最近北方面の街道に魔獣が出る回数がちょっとずつ増えてるらしいわよ?リオたちも気をつけなさいね」
「おー、わかったぞー。なんとかなると思うけどなー」
「リオ?油断しないの。では女王様、ありがとうございました」
「道中気を付けて!また会いましょうね」
こうしてボクたちはリスタから出発したんだ。これからは北へ向かうんだ。一応目的地は小国であるスルタンって国だ。どうもハルの育ったブートの里が近くにあるらしいんだよね。
せっかくだし、ハルの師匠であるチパさんって人にも会ってみたかったんだよ。ハルからは『···命の保証はないけど、いいの?』って脅されちゃったけどね···。
街道を一路北へ向かっていくと、昨日コルくんと魔法の訓練をした荒野を横目に見た。改めて先が見えないくらい長くて分厚い土壁と、穴ぼこだらけで荒涼とした景色が広範囲に広がっていたんだ。
「リオ?ここで魔獣の大群と戦ったって言ってたけど、こんな広範囲で戦ってたの?」
「そうだなー。10日ぐらい戦ってたからなー」
「···えっ!?10日も!?とんでもない数だったんだね···」
「そうだなー。こっちは5人だけで10万近い数とやりあったからなー。いくら整調者の力をもってしても2万倍以上の敵ってのはさすがにきつかったなー」
「でも、それだけの数をはねのけちゃうなんて、リオパパは強かったんだなぁ~!おれだったら無理だろうなぁ~」
「···整調者でキツイならナツたちにはムリ」
「さすがにその数相手にわたしたちだったら変身してもムリよね~」
「ぼくだったら絶望しちゃうかも···」
「まー、ムーオが生きてる以上、もしかするとまたあるかもしれないからなー。兆候があったら潰しておきたいけどなー」
「そうだね。魔獣レーダーもあるから、大量に魔獣が集まってそうだったら潰しておくほうがいいかもね」
···あんまり気にしちゃ負けなんだろうけど、今巨大なフラグが建ったような気がするぞ?
でも、これだけの広範囲をたった5人だけで魔獣を殲滅したってのは本当にすごいよね···。神様から力を借りたって言うけど、人間業じゃないよね。
そんな事を考えてると、街道は荒野から森に入っていった。
···やっぱりフラグだったかな?魔獣レーダーを見ると、わんさか魔獣がいたんだよ。それも街道上に!もしかして誰か襲われてるかな?
「リオ、この先で街道上に魔獣がたくさんいるみたいだよ。誰か襲われてるかも!」
「どれぐらい先だー?」
「え~っと···、10km先!」
「じゃあ、みんな!身体強化して走るぞー!」
「「「「うん!!」」」」
そうして猛スピードで走っていくと、大量の魔獣が商隊を襲っており、既に倒れてる人までいたんだ!
これはマズい!!
「みんな!馬車まで道を切り開いたら馬車周辺を中心に殲滅を開始!」
「「「「了解!!」」」」
「ケン!」
「フユ、いくよ!」
「秘技!弦月斬!!」
フユとケンが斬撃を飛ばして馬車までの魔獣を切り裂いて道を切り開いた!
ボクたちはスピードを落とさずに突っ込んでいった!
「大丈夫ですか!?加勢します!」
「助かる!こっちはほぼ壊滅状態だったんだ!」
「ケガ人はボクが治療します!みんな、魔獣をお願いね!」
「おう!リナー!思いっきりぶっ放せー!」
「ええ!吹き飛ばしたら『新魔法』を実験するわ!右側はまっかせて~!」
「ケンー!近距離はフユとナツに任せて、上空から遠距離攻撃だー!」
「うん!ぼくも『新魔法』試すよ!」
え?新魔法?何する気だ?
馬車に近づく魔獣はフユとナツ、それにハルとリオが対応している。なんとか押し留めるので精一杯な状況だ。
そしてリナは飛びながら馬車の右側で円を描くように飛びながら魔力を放射していた。
「待たせたわね!わたしが考えた新魔法!ちょっと準備に時間がかかっちゃうけど、威力は多分ばつぐんよ〜!いっけぇ〜〜!インプロージョン!!」
ドズーーーーン!!!
『インプロージョン』って、爆縮!?核兵器の起動方法だよ!?なんで知ってるの!?
だから円状に飛んで爆発する魔力を仕掛けてたのか!中心に爆発力を向けて超圧縮するから周囲に影響が少ないし、圧力を逃がすのを上空にしてるよ!?
···とんでもない魔法を思いついたなぁ~。···もしかして、某魔法少女アニメで巨大魔女を倒すシーンで思いついたな!?
一方のケンは上空で魔力を超圧縮して魔力剣に集めていた!そして!
「薙ぎ払えーー!!」
剣から魔力砲が放たれ、左から右へ思いっきり一振りし、地面に当たって大爆発した!!
···ビーム放って薙ぎ払うって、某アニメ映画のワンシーンじゃない!?腐ってないけど早すぎない!?
この2撃で魔獣の7割以上が吹っ飛び、馬車の周辺での近接戦闘で2割が倒されていた。
さすがにこの惨状で魔獣たちは怯え始め、逃げ出し始めた。まぁ、そうなるわな。ボクだって逃げたくなるよ···。
「た、助かったのか···?」
「そうですね。なんとか退けれましたね」
「···あんたたち、な、何者なんだい?」
「ボクたちは家族旅行をしてるんですよ。北へ向かってるんです。あ!あなたにも回復魔法かけておきますね」
「···あ、ありがとう。···謝礼は出せないが。うちは···、壊滅しちまったし···」
「···気にしないでいいですよ。倒れてるお仲間さんもなんとか命は助けることができました」
「な、なんで、助けてくれたんだ?」
「ちょっとした事情で道中で魔獣を見つけたら倒すようにしてるんですよ」
「そうなのか···。最近魔獣が街道にも結構出るってウワサは聞いてたんだけど、まさかこんな大群に襲われるとは思わなかった。あんたたちも気をつけて」
「はい。そうそう、今なら王都までだったら魔獣はいませんから、早めに森を出た方がいいですよ」
「···何から何まで済まないな。お礼ができなくて悪かった」
「気にしないでください。では、お気をつけて」
···ちょっと怯えてたなぁ~。そりゃそうだよね。あんな大群に襲われてる中、たった8人、しかも子連れで殲滅しちゃったらビビっちゃうもんね。お礼を言われただけでも良かったよ。
しかし、魔獣レーダーを見ると···
「リオ、この先も街道上にそこそこ魔獣がいそうだよ」
「···変だなー。こんなに大量の魔獣が出るなんてなー。もしかしたら、何かあるかもしれないぞー」
「えっ?何か?黒魔力かな?」
「アキ、ちょっといいかな~?」
ここで今までしゃべってなかったジーンから声がかかったんだ。
「ジーン?どうしたのさ?」
「その黒魔力、ここはちょっと濃すぎるんだよね~」
「えっ?それって···」
「普通なら局所的に発生するものだけど、ここはまんべんなく濃いんだよね~。自然に浄化されずに溜まっている感じかな?」
「ということは、魔獣が発生しやすい?」
「そういう事になるね。明らかに人為的にやってると思うよ」
「それはさすがに放っておけないぞー。王都も近いからなー。あの時のスタンピードはもう勘弁してほしいぞー!」
「そうだね。ちょっと調べてみようか?」
う〜ん···。フラグが大き過ぎたのか、建った瞬間にトラブルに足突っ込んじゃったぞ?無事に出られるのかなぁ~?
どんどん人間離れしていく子どもたちの実力に、商隊の人は怯えてしまいましたね。これも仕方ないことなんですよ。その力が万が一自分に向いたら!?と思うとね。
今回リナちゃんとケンくんはスマホで見たアニメの技を参考にしてしまいましたね。イメージが大事な魔法とはいえ、もはやなんでもありになりつつありますので、この先はちょっと自重しています(笑)!
さて次回予告ですが、魔獣がわんさか湧いてる原因を突き止めようとして調査を行ってみると、とんでもない事実が発覚します!いったい何が原因だったのでしょうか?
次回は本日夜に投稿します。お楽しみに!




