13-29.(番外編)気になるあの子 コル編
本日の番外編で第13章はすべて完結です。
ズドーーーン!!!
「ふぅ~···。今日もコルの魔法のおかげで助かったぞ。よくやったな!」
「はあっ、はあっ···。うん!父さんの役に立ててよかったよ」
「最近、魔獣が街道によく出るようになってきてるなぁ~。大魔王が整調者によって倒されてからはおとなしくなっていたんだがなぁ~。もうあれから10年も経ってるし、仕方ないか」
「···そうなんだね?僕が生まれる前のお話だから、よく知らないんだけど」
「そうだな···。あまりいい思い出ではないからな。父さんも、母さんと迫りくるたくさんの魔獣から必死に逃げるので精いっぱいだったしな」
「父さんってこんなに強いのに、それでも逃げなくちゃいけなかったの?」
「···そうだな。多少はなんとでもなったのだが、いかんせん数が多すぎたからな」
「···でも、今はそんなことはなくなったんだね?」
「ああ。整調者が大魔王を倒してくれたおかげでこの程度で済んでるんだ。···しかし、コルの魔法はどんどん強くなってるな。このままいけば、あと数年で一人で旅に出れるぐらいになれると思うぞ?」
「···それはムリだよ。撃ったらすぐに疲れちゃうんだもん。そこを狙われたら魔獣に食べられちゃうよ?」
「まぁ、そのあたりも大きくなったら大丈夫になるさ。さあ!久々の王都だ。なんとか建国祭に間に合ったようだな。次の出発は建国祭が終わった次の日だから、思いっきり祭りを楽しんできなさい」
「うん!」
···って言っても、僕一人だけで祭りを楽しむって、難しいんだよね。
僕は商隊の護衛のお仕事をしている父さんと一緒に大陸中を回ってるんだ。ドラゴン族で僕たち親子のように人里で暮らしてるのはとっても少ないんだって。いろいろな理由で集落に住んでないからなんだけど、父さんもその一人だ。
昔、父さんに理由を聞いたんだ。そしたら、母さんと一緒になりたかったけども猛反対されたらしくて、それで家出しちゃったんだって。それで母さんと一緒に旅をしていたんだよ。
···けど、さっき父さんが話した大魔王のせいで母さんは魔獣に襲われちゃって傷ついちゃって、その傷が原因で僕が生まれたらすぐに死んじゃったんだって。だから、僕は母さんの事をよく知らないんだ。
でもね?父さんは僕を見ると母さんに似てるんだって。母さんは魔法が少しだけ使えたらしいんだよ。だから僕も母さん譲りで魔法の方が得意なんだ。
だけど、父さんが言うには、母さんは今の僕ほど魔法がうまくなかったんだって。僕がいろんな魔法が使えるようになっていくのを父さんはとっても喜んでくれたんだ。
···やっぱりつまんないなぁ~。友達がいないから一緒に楽しむってできないんだよ。
···それに、僕がドラゴン族って事でみんな心なしか避けてるような気がするんだよ。僕が人見知りが激しいってのもあるんだけどね。せっかく仲良くなっても、同じところにずっといることができないから、友達を作っても会えない事のほうがほとんどだしね。
適当に歩きつつ、祭りを遠目に楽しむことにしたんだ。帰ったら父さんには楽しかった!って言って安心させてあげたりはするよ。心配させたくないからね。
···そして、時は来た。
その日も宛てもなく歩いていて、気になったマジックショーがあったんだ。でも、あとでやってきたから、僕の身長だと見えなかったんだよ。
···誰も僕を見ないふりしてるし、ちょっとだけ飛んで見ようか。あんまり街中で飛んじゃダメって父さんに言われてるんだけどね。
僕は翼を大きく広げて少しだけ飛んで高い位置からショーを見たんだ。
まぁ、ショーはそこそこ面白かったよ。
そして、ちょうど半分ぐらい終わった時だった。僕の視界の端っこで僕と同じようにちょっとだけ飛んでショーを見ているドラゴン族の子たちがいたんだ!!
···本当にビックリした。僕以外のドラゴン族って父さん以外見たことがこれまでなかったんだよ。向こうも僕に気づいてたけど、ショーを終わるまで見ていたね。
僕はショーを見ていたけど、そのドラゴン族の子たちの方が気になって、どんな内容だったのかが覚えてないんだよ。
···ちょっとだけお話できないかな?多分、向こうも旅をしているドラゴン族なんだろうけど、もしかしたら旅をしているからお話が合うかもしれないし。
ショーが終わってから僕は緊張しつつ、その子たちに近づいて行ったんだ。
「こ、こん、こんにちは···。あ、あの!あなたもドラゴン族、なんですか···?」
···緊張しちゃって当たり前の事を聞いちゃった。あれはちょっと恥ずかしかったなぁ~。
向こうも旅をしているドラゴン族だったんだ。白銀竜のリナ、青竜のケン。二人は双子なんだって!ということは父さんと母さんは白銀竜と青竜なんだね。かなり珍しいんじゃないかな?
そして友達の獣人であるフユとナツ。この子も双子で、ご近所さんなんだって。親同士が仲がいいらしくて、一緒に旅をしてるらしいね。
···ちょっとうらやましいかな?でも、父さんと一緒に旅するのも、もちろん楽しいよ!
話を聞いてると、リナも魔法が得意なんだって!ケンもフユもナツもかなり魔法が使えるらしいね。
僕みたいに魔法が得意なドラゴン族ってほとんどいないって聞いてたけど、そんな事はないようだね。一番有名なのは整調者だった白銀竜のリオさんかな?
···もうちょっとお話したいなぁ~って思ってたら、リナから一緒に祭りを回ろう!って誘われちゃったよ。しかも、リナの魔法を後で見せてくれるって。びっくりしちゃったよ~。
···うん。やっぱり一人で回るよりも友達と回ったほうが祭りは楽しかったよ。いろいろ旅の話をしながら回っていたら、あっという間に時間が過ぎていったよ。
そして、リナたちに連れられて昨日まで格闘技大会をやっていた訓練場にやってきたんだ。
···どんな魔法なんだろうね?魔法が得意って言ってたけど、僕と同じぐらい魔獣を倒せるほどの威力なのかな?
そんな事を考えてると、リナはまず僕の本気の魔法が見たい!って言ってきたんだ。結界?を張るって言ってたけど、その時はよくわかってなかったなぁ~。
とりあえず、まずは僕の最強魔法を使ってみた。···え?威力が小さい?そ、そうなの?これが僕の最強なんだけど···。
その後も僕の魔法を見せたんだ。リナは僕を褒めてくれたよ。···それがとっても嬉しかったね。
次はリナが最強魔法を見せる!って言ったんだ。そしたらケンが慌てだして、僕にすぐに伏せるように言ってきたんだ。
···え?そんなにすごい魔法なの?そう思ってたら、リナが両手を上げてとてつもない魔力を集めだして、そして組んだんだ!
リナの両手がまるで竜の口のように見えたんだ!まるでブレスを吐くかのようだよ!?そして···、リナは撃った!
「いくわよ~~!ドラゴンキャノン!」
ドズーーーーン!!!!
「うわっ!!」
リナの魔法を撃つ美しい姿に見とれてしまって、伏せるのが遅れちゃったから、ちょっとだけ吹き飛ばされてしまったよ。
「す、すごい···。こ、こんな威力の魔法が···、あるなんて···」
リナはスッキリした顔だった。この後も見たことのない魔法をたくさん見せてくれたんだ。
···この時、僕はリナが目標になった。この後、リナのお父さんとお母さんがやってきて、後日魔法を教えてくれた。お父さんはリオって名乗ってたけど···、まさかね!
今まで我流でやってたから、とっても勉強になったんだ。リオさんによると、僕はもっと強くなれるんだって。
そして魔法合戦。『合体魔法』なんて初めて見たし、とんでもない威力だった!大魔王だって倒せるんじゃないかってぐらいだったよ!
リナと一緒に魔法を練習したり、お話したり···。今までで一番楽しかった時間だったと思うよ!できればこれからずっと一緒にいたいぐらいだったよ!
けども、そんな楽しい時間も終わりが来ちゃったんだ···。
寂しくなっちゃった僕は泣いちゃったけど、リナも旅してるし、普段はアクロに住んでるって言ってたんだ。遊びに来たらいいって言ってくれたんだ···。こんな事言われたのは初めてだからとっても嬉しかったよ。
次に会う時までにはもっと魔法を強くしてリナをビックリさせてやる!
「コル、いい出会いがあったな。まさかコルと同じように魔法が得意なドラゴン族がいるとは思わなかったよ。しかも一家でな。
まぁ、かつての整調者でもいるにはいたんだけどな」
「···うん。僕、これから魔法をもっと頑張るよ。今のままだったらリナみたいになれないし。今のリナぐらいにまでなれるようになる!」
「···そうか。そうなってくれたら父さんの仕事もだいぶ楽になるな。でも、ずっと父さんと一緒ってのもダメなんだぞ?いつかは一人でもやっていけるようにならなきゃいけないからな」
「···そうだね。でも、それはリナぐらいまで魔法が使えるようになったらかな?一人だと大変だと思うし」
「確かにな。···なんだったら、一人じゃなくてリナさんと一緒に旅をしたらいいんじゃないか?」
「···ええっ!?そ、それは···。う、うん。···それも楽しそうかな?···いいかもね!」
リナと一緒に旅をする、かぁ~。なんだか楽しそうだね!そうなれるように、これから頑張るよ!リナ、楽しみに待っててね!
コルくん視点のお話はいかがだったでしょうか?
この話を書いてから、作者はコルくんがお気に入りになりました!コルくんとリナちゃんの会話は今後会った時にさらにいい意味でヒートアップしますよ~!かなり先の話なのですが、ご期待下さい!
この後昼頃にネタバレ集、夜に設定資料集を投稿しますので、そちらもお楽しみに!




