13-20.格闘技大会 準決勝!という名の兄妹ゲンカ!?
「お~!フユが本気でボクの剣技を使いまくったなぁ~。しかもそれを捌いちゃうなんて、あのユキちゃんはかなり腕がいいね!」
「アキさん?あの子はレオナード王国で有名な槍術であるリム流の当主の娘さんですわ。だからとっても強いんですよ」
「女王様もご存じの子だったんですね?そりゃ強いわけだね」
「でもなー、フユは技に頼りすぎなところがあるぞー?。アキのあの剣技って、ほぼ一撃必殺だろー?全部受け止められたって事は、まだまだ甘いんだろうなー」
「いや、さすがにそれは酷でしょ?まだ8歳なんだよ?まだまだこれから完成していくんだから。今の時点で技を出せるだけでもスゴイとボクは思うけどなぁ~」
「···そうだね。最後のあの技も、待つのが本来の形だけど、うまいこと応用した。···フユも考えるようになったのは大きな成長だね」
「そうだね~。さあ、次はナツと対戦だね!どうなるのかなぁ~?」
「···間違いなくフユが勝つね」
「ハル?それはどうして?」
「···昨日あれだけ言ったのに感情に流されてる。···しかも、昨日より嫉妬の炎の勢いがスゴい。···冷静になってないから自滅するね」
「確かにフユがユキちゃんをお姫様抱っこしてたら、ナツとしては最悪な気分よね〜!もしかして、フユってそこまで計算して見せつけちゃったのかしら〜!?
あ〜!これは、直接フユに聞かないと今日はあたし寝れないわぁ~!」
「ちょっとナナ?変にフユをからかっちゃダメだよ?···ってボクにも昔やった前科があるな!?」
「思い出しちゃったか!まぁ、アキの時みたいにはしないわよ。ちょ〜っとだけ相談するだけだから!」
「···ボクの時は悪意あったんだな」
観客席でボクたちはそんな話で盛り上がってたんだ。
「···う、う〜ん。···あれ?···ここは?」
「あっ!?ユキ!気づいたみたいだね!」
「···フユくん?···そうかぁ~。私、負けちゃったんだったわね」
「あはは。ちょっと勝手だったかもしれないけど、ユキが気絶している間に回復魔法をかけさせてもらったよ。どこか痛いところはない?」
「え?ええ、ないわね。むしろ元気になったというか···」
「ゴメンね···。気絶させちゃうとは思ってなくて、全力でやっちゃったよ···」
「気にすることないわ。試合なんだし。···でも、フユくん、いえ、フユってスゴイわ。強いだけじゃなくて、こんなにスゴい回復魔法まで使えるなんてね!」
「パパとママ、それにお隣の知り合いの人のおかげだよ。おれだけだったら何にもできてないしね」
「それでもできるようになったのはフユの努力のおかげよ?私に勝ったんだから、胸を張って、優勝しちゃってね!」
「うん!次は妹のナツが相手だけど、なんとか勝ってみるよ」
「どんな試合になるか楽しみだわ。観客席で見てるわね。回復魔法ありがとう!」
そう言って、ユキは出て行っちゃったよ。特に体に異常はなさそうだったから良かったよ。
さあ、次はナツとの試合だよ!どうなるかなぁ~?って思って会場に戻ると···
「···遅かったね。···控室に行って回復魔法かけただけなのに、なんでこんなに遅かったの?」
···激おこぷんぷん丸状態のナツが会場の外で立ち塞がった!!
「えっ!?そ、そりゃ、ユキが目を覚ますまで心配じゃないか!」
「···やっぱりお兄ちゃんは私よりユキさんの方がいいんだ」
「そんな事ないよ!?ナツは大好きだよ!?いったいどうしたのさ!?」
「···その好きはナツとユキさんじゃ違うんじゃないの?」
「···へっ!?違う好き?ど、どういう事?」
「···もういい。パパにお説教してもらう」
「おれ、なんか悪い事したの~!?」
「············」
ダメだ···。まったく聞く耳持ってなかったよ。すんごく気まずい雰囲気の中、おれとナツの準決勝の試合が始まろうとしていた。
ものすごくやりづらい···。いつものようにはいかなさそうだよ〜!
そうそう、準決勝の最初の試合はやっぱりあの剣士が相手を瞬殺しちゃったよ。決勝ではあの剣士とやり合うことになったね。
「それでは準決勝第2試合、始め!!」
ナツはいきなり突っ込んできた!しかも、武器は使わず素手で襲いかかってきた!?
「うわっ!?」
慌てて避けるとすぐに振り返りつつ、ナツは回し蹴りを繰り出してきた!
スピードはいつものままだけど、攻撃方法がいつもと違う!?怒ってるから!?なんで怒ってるのかもあんまりわからないんだけど!?
そう言えば昨日ナツがパパとママに話を聞いてもらってたっけ。その時は共有してたからナツの感情が少しだけわかったんだけど、なんかイライラしてて不機嫌だって事以外わからないんだよ。
どうしよう!?このままだとおれが負けちゃうよ!でも、そうはいかないんだ!
ユキに優勝するって約束しちゃったからね!ナツには悪いけど、負けるわけにはいかないんだ!
「ナツ!なんで怒ってるかわからないけど、負けるわけにはいかないんだ!勝たせてもらうよ!」
「···お兄ちゃんの、わからず屋!!」
さらにナツがヒートアップしちゃった!?おれ、何かマズいこと言っちゃったのか!?
ナツはさらにスピードを上げて攻撃してきた!いつもの冷静なナツじゃないから、なんとなく先が読めてしまって避けるのがちょっとだけ楽だったけどね。ナツには言えないけど。
···でも、あんまりナツに攻撃したくないんだよね~。じゃ、スタミナ切れを待つか。避けて避けて避けまくるぞ!
そう思っていたら···、次の瞬間!ナツが目の前にいた!?そして思いっきりおれの頬に爆裂ぱーんち!!
「···お兄ちゃんの、バカァーーー!!」
「ちょ!?···ぶへっ!!」
ズドーーーン!!!
強烈なパンチに加えて爆裂魔法付与で爆発まで起きた!おれは受け身すらとれず、場外スレスレまで吹っ飛ばされた!
「そこまで!魔法使用は反則負けだ!!」
「はあっ!はあっ!···え?···あ」
···な、なんとか意識は飛ばずに耐えきったけど、おれは全身が痛みで身動きが取れなかったんだ。
あ〜、ナツが反則負けって言われて呆然としていた。
試合が終わったので、おれは起き上がらないまま、全身に回復魔法をかけてようやく立ち上がれた。
そして、呆然と立ち尽くしているナツに話しかけた。
「ナツ?まだおれは何が悪いのかわからないんだよ。でも、謝っておくよ。ゴメンね。機嫌、直してくれないかな?」
「···グスッ、···グスッ。お、お兄ちゃんの、バ、バカァ〜〜」
「あ〜···、こんなとこで泣くなよぉ~。とりあえず、控室へ行こうな!」
会場のど真ん中で大泣きし始めたナツをなだめつつ、おれたちは控室へ行った。
控室では、係の人が午後のスケジュールとして、まずナツの3位決定戦を午後2時からして、その後におれの決勝を行なうとの事だったよ。
それまで時間はあるから、おれたちはパパのいる特別観覧席に行ったんだ。
ナツちゃんは嫉妬の感情に飲み込まれてしまって、正常な判断ができませんでしたね!予想外の反則負けでした。
お兄ちゃん大好きなナツちゃんの暴走シーンは、書いてて楽しかったですよ(笑)!
さて次回予告ですが、フユくんが対戦するのは奇妙な強さの男でした。その秘密とは!?
明日のお話で格闘技大会は終了です。
なお、明日と明後日は土日なので、朝と夜に1話ずつ投稿します。
お楽しみに〜!




