13-12.フユとユキの出会い
今日は土曜なので、2話投稿しますよ~!
「···お兄ちゃん?どうしたの?」
「フユ?急に立ち止まってどうしたの?」
「ゴメン!先にパパのところに戻っていて。ちょっとトイレに行きたくなっちゃったんだ!」
「···わかった」
「パパたちにはそう言っておくね~」
···気づかれちゃったかな?試合が終わったから共有をまたつないでおいたんだけど、さっきいきなりまた切ったからね。パパたちには黙っててくれるだろうけどね?
共有をつないだままにしてると、おれが次に何をするかがわかっちゃうからね。まぁ、切っただけでもわかっちゃうだろうけど。
ちょっと気になったんだよ。さっきの試合までおれたちを見ていた女の子、どうも何者かが狙ってるんだよ。
もしかしたら余計なお世話かもしれないんだけどね?おれ一人ならママの暗殺術で気配をある程度消せるから状況を見る程度はできるんだ。
これがナツだと完全に気配を消しちゃうから、かくれんぼをやっておれが鬼だとナツが見つからないんだよ···。ナツがそれをできるようになってからやらなくなっちゃったけどね。
さてと···。試合会場から出たね。そのまま街の方向に進んでいるよ。何者かが狙っている視線の気配はまだあるね。細かい位置はナツやケンの方がわかるんだろうけど、おれはこのあたりが限界だ。
···ん?あの女の子、道の途中で藪に入ったね。もしかしておれに気づいた?そう簡単には気づかないはずなんだけど···。
そこで、おれは木陰から身体強化の視力強化で覗いてみる。ついでに聴力も強化しておこう。
すると、いきなり声が聞こえてきたんだ。黒い服を着た2人の何者かが木の上から降りてきて、女の子に絡んでいたんだ。
「誰?試合が終わってからずっと付け狙ってるけど、私に何か用なの?」
「············」
「答えるつもりはないって事ね。もしかして、大会で私が勝ったらいけないのかしら?」
「············」
「わかったわ。じゃあ、あなたたちを倒して宿に帰るわ」
女の子が槍を構えた。黒い服の連中は特に身構えてないけど···。どういうことだ?何かがおかしいぞ?
「無防備な連中を倒すのは気が引けるけど、容赦はしないわよ!」
そう言って女の子は飛びかかろうとしたけど、動くことができなかった!!
「えっ!?な、なに!?足元が泥で!!」
土と水魔法の合成だ!泥沼を作り出して相手の動きを奪うんだ。ケンが魔獣相手に使う戦法の魔法だよ!黒い服の連中は女の子が動けなくなったのを確認してから、短剣を抜いた!
これはさすがにマズい!もしかしたらあの女の子はおれと当たる選手かもしれないんだ!こんなところでやられるわけにはいかないよ!!ここで一気に飛び込むぞ!!
「やめろぉーー!!」
「えっ!?今度は誰!?」
おれが大声を上げると、黒い服の連中は振り返った!おれは魔力剣に雷属性を付与して、黒い服の連中に襲い掛かった!
「ぐぁっ!!」
一人は雷属性の剣の一閃を受けて倒したけど、もう一人はおれを無視して女の子に襲い掛かった!
くっ!?間に合わない!?最速の技でもムリだよ!!
···いや!まだ手はある!!今こそこの力を使う時だ!!
「ウォオオオーーー!!!」
そう!トランスだ!!一気に身体能力が上がるから、これなら間に合う!!
そうしておれは一瞬で間合いを詰めて、黒い服の残り一人の背中に魔力剣で突いた!!
「ぐふっ!!し、失敗か···」
な、なんとか間に合ったよ···。女の子は無事のようだね···。よかった···。
「はあっ!はあっ!キ、キミ、大丈夫?」
「···えっ?だ、大丈夫だけど···、その顔の紋様と目は···?」
「はあっ!はあっ!あ、こ、これは···。気にしないで。今解くから」
「···え?変身する種族···?」
···あ~。やっぱり見られちゃったよね?ママからあんまり人前で見せちゃダメって言われてたんだよね。でも、今回は人助けだからいいでしょ?多分、秘密にしてくれると思うんだよね。
「いや、あ~···、その···。この事は黙っててくれるかな?」
「べ、別にいいけど···。あっ!そう言えばお礼を言ってなかったわね。ありがとう。私も何者かが付け狙ってるのは気づいていたんだけど、よくわからなかったのよ。だからここに誘い込んだんだけどね」
「そうなんだね。おれは試合会場から出る時に嫌な視線を感じて、そしたらキミが狙われてるような気がしたんだよ。勘違いじゃなくてよかったよ~。あっ!おれはフユって言うんだ。予選第31組だったんだけど···」
「私はユキよ。あなたたちの試合は見ていたわ。まさか私以外に子どもで出場していて強い子がいるなんて思わなかったわよ」
「あ~、だから控室でずっとおれたちを見ていたんだね?おれもユキの試合も見ていたよ。槍の扱い方が上手くてとっても参考になったよ!」
「そう言ってもらえるとうれしい。順当に勝ち進んでいけばフユくんとは3回戦であたるのかな?」
「確かそうじゃないかな?ところで、ユキが狙われる心当たりってあるの?」
「いいえ?もしかしたら私をここで戦闘不能にして不戦勝にしたい選手がいるって事かもね?」
「そんな!それって卑怯だよ!?」
「大人たちの大会だからそういうのがあるんじゃない?あなたも気を付けたほうがいいかもね?」
「おれたちは大丈夫だよ。ある程度気配察知もできるし、パパたちも強いからなんとかできるよ!」
「そう。それでも気を付けてね。また試合会場で会いましょう。···今日はありがとう」
「えっ?ちょっと待ってよ?もしかしてユキひとりだけ?よかったらおれたちと一緒にいない?安全だと思うけど···」
「ありがたいけど、お断りするわ。対戦相手と一緒にいるってそれ自体がワナな時もあるから。そんな心配はないってわかってるけど、そう思わない人もいるからね」
「···わかった。気を付けてね!あっ、そうだ!さっきの試合で軽いケガしてたでしょ?おれの回復魔法をかけておくよ!」
「え!?あ、ありがとう。···うわぁ~、キレイに治っちゃったわ。ホントにありがとう!次は試合会場で会いましょうね!」
···これが、おれとユキの初めての出会いだったんだ。まさか、この後長いお付き合いになるとはこの時は思いもしなかったんだよね~。
そしておれが試合会場に戻ると、やっぱりパパに怒られちゃったよ···。
「フユ?いったいどこに行ってたんだい?ナツたちにウソついてまで···。トイレじゃないのは地図アプリでわかっていたんだけどね」
「パパ、ごめんなさい。ちょっと気になることがあったんだ。おれ一人の方が動きやすかったから、ナツたちと別れて行動したんだ」
「···フユが単独行動するなんて、何があったんだい?」
「実は、本選に勝ち上がった女の子が黒い服を着た2人組につけられていたみたいなんだ。そして襲われてたところを助けたんだよ。女の子が危なかったから、トランスも使ったよ」
「そんな事が···。女の子は無事だったのかい?」
「···うん。危ないからおれたちと一緒にいたら?って言ったら、対戦相手と一緒にいるわけにはいかないって断られちゃった」
「なるほどね···。うん、これは女王様に話をしておくよ。おそらく、悪い大人たちがなにか企んでるんだろうからね」
「···企んでる?それって?」
「そう。おそらくは賭けがやられてるんだろう。だからわざと負けたり勝たせたりするんだ。対戦相手を戦闘不能にしてわざと勝ったりすることもあるんだ」
「そんな事で襲われたの!?ユキがかわいそうだよ!」
「ユキって言うんだね?でも、ユキちゃんが断ってきた理由も確かに正しいから、これはボクたちではどうしようもないなぁ~。だから女王様に頼んで、こっそり護衛をつけてもらおう。どこに泊まってるかは女王様にお願いしたら調べてくれるからね」
「パパ!ありがとう!!」
「いや、よく気づいたな!でもな?ちょっとした気づきでも、パパには必ず連絡はしようね?そうしたらボクたちもすぐ動けるからね。今回みたいに一人で解決しようとは思わないようにね!(女の子にカッコつけようって気持ちはわかるけどね)」
「うん!わかったよ!!」
やっぱりパパは頼りになるね!ただ、ナツとケンは少し機嫌が悪かったよ···。仲間はずれにしたって拗ねちゃったんだよ~。ホントにゴメン!!
もうお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、ユキちゃんはフユくんに一目惚れしてます。
まぁ、助けてもらったのがかっこよくてかわいい男の子だったらなおさらでしょうね。
一方のフユくんはまったく気づいておりません。これがのちのちフユくんの身にトラブルという形で襲いかかりますよ~!
さて次回予告ですが、本戦の控室でユキちゃんと顔合わせしたナツちゃんとケンくん。
フユくんとユキちゃんが仲がいいのを見てフユくんをいじり倒します(笑)!
そしてナツちゃんとケンくんの第1回戦もお届け!
次回は本日夜に投稿しますので、お楽しみに!




