11-8.暴れん坊4人組 成長の軌跡 その4 ~フユとナツ、覚醒する~
本日2話目の投稿です。朝に1話投稿してますので、今日初めて見た!という方は1話前からお楽しみくださいね!
今年のGWは最大で10連休の人もいるんでしょうね~。海外だったら時差がありますが、本作は日本時間(UTC+9)での投稿ですので、海外から読む方は気を付けてくださいね!楽しいひと時をお過ごし下さい。
『子どもたちが勝手に町を出て魔獣退治に行ってしまった。現在捜索中』
···とりあえずアキに速報を送っておこう。···油断した。アキはいつかこうなるだろうって言ってたけど、本当になってしまったね。···私の見通しが甘かった。
状況としては、フユとナツがリナとケンと一緒に勉強すると言ってリオの家に行ったんだ。
リオによると、4人はケンの部屋で最初は本当に勉強していたようだ。そして、リオがおやつの差し入れを持っていったら、窓から抜け出していたって事らしい。
しかもご丁寧に『まじゅうたいじにいってくるわ。ばんごはんまでにはかえるからしんぱいいらないわよ!リナ』と書置きまであったんだ。
···どうやらだいぶ前から計画していたようだね。こっそり蓄えていたおやつを持ち出していたようで、かなり用意周到だった。
さて、どこまで行ったのだろうか?闇雲に探すわけにもいかない。まずは町に入れる2か所の門へリオと向かった。ナナは家で待機だ。入れ違ったらマズいからね。
アキのちーむッス!の魔法のおかげで瞬時に情報のやりとりができるのはこういった場面で助かるね。
···アキからチャットが返ってきた。『学園を早退して今から帰るけど、現在の状況は?』だった。音声入力で、まずは門で出入りの確認をする旨を書き込む。
とりあえずアキも自宅で待機だ。スピードなら私の方が上だし、捜索も私の方が向いている。アキにはナナのサポートをしてもらおう。おいしいごちそうを用意しておくように伝えておいた。
···結論から言うと、2か所の門では出た記録がなかった。どうも正規のルートではなく、壁を飛び越えて外に出たようだ。
···身体強化を教えたのが間違いだった?いや、使わなかったにしてもケンは飛行が得意な青竜だ。そんなに大きくないから、遠くからだとまずわからない。
こうなった以上、仕方ない。『こちらからの捜索』は断念しよう。
ただし、リオに協力してもらい、ほんのわずかな魔力の動きを察知してもらう。
魔獣と戦うと明言している以上、戦闘は間違いなく起こる。その状況をいち早く察知して駆けつける方法に変更した。それに、フユは回復魔法がそこそこ使えるから、多少のケガなら大丈夫だろう。
一方、子ども4人組はアクロからそこそこ離れた森の中を歩いていた。
「···ねえちゃん?ほんとによかったの?バレたらおこられるじゃすまないよ?」
「ケン?もうここまできちゃったんだから、まじゅうをたおしてほめてもらうのよ!これまでいっぱいくんれんしたじゃない!そのちからをみせるときよ!」
「リナ?おれたちこうやってあるいてるけど、まじゅうってどこにいるんだろうね?」
「···ママは『けはい』をさがしてた。···でも、どうやってさがす?」
「ママはおれたちにはそこまでおしえてないからなぁ~。でも、どこかにはいるんだろうけどね」
「フユ~。ぼくもうつかれちゃったよ~。ちょっときゅうけいしよ~」
「あ~、そうか~。ケンにはとんでもらっておれたちをはこんでもらったからなぁ~。じゃあ、ここでおやつにしようか!」
「さんせー!わたしもおなかすいてきちゃったわ」
「···うん。ここでおやつたいむ」
そして、しばらくおやつを川のそばで楽しんでいたその時だった!探していた魔獣が現れたのだ。···しかも12体という3倍の数だ!現れたのはデスアリゲータというワニ型の凶暴な魔獣だった!
「···きた!···おおすぎる!」
「ええっ!?こんなにあいてするの!?ぼくたちじゃむりだよ!にげるよ!!」
「まちなさい!ちょうどいいわ!まずはわたしのまほうでけちらしてやるわよ!いっけぇ~~!!」
リナは爆発魔法を使った。しかし、このデスアリゲータは魔法耐性が非常に高く、硬質な肌は生半可な刃では傷すらつかないのだ。その事を全く知らない4人はじりじりと追い詰められていく。
「なんでよ!?わたしのさいきょーのまほうよ!?パパもびっくりしたほどなのに!?」
「リナ!こいつらおれのけんがきかないよ!?ふらいぱんたたいてるようなおとがしてはじかれちゃう!···うわっ!?くっ!?」
「···ちょっとナツたちではむりだね。にげよう!ケン!りゅうになって!とべばおってこれない!」
「くっ!わ、わかったよ!···うわぁ!ぼくのけんが!!はなしてよ!···ぐふっ!」
青竜に戻ろうとした時に自分の剣がデスアリゲータの口で受け止められて動かせなくなり、慌てて外そうとしたところで、ケンは別のデスアリゲータのしっぽ攻撃をまともに受けてしまい、吹っ飛ばされて近くの木の幹に全身を叩きつけられて気を失ってしまった。口からはわずかに血が流れ出していた。
「ケンッ!?ちょっと!しっかりしなさい!···ああ、どうしよう?···このままじゃわたしたち、···たべられちゃうの?」
「そんなことさせるかぁー!ここはおれがなんとかするから、ナツ!リナといっしょにケンをつれてにげろ!」
「···おにいちゃんだけにはさせないよ。···ナツもここでなんとかしてみせる」
「ナツ···。じゃあ、ママみたいにはまだできないだろうけど、あれをここでやってみるよ!」
「···うん。たしかにあれならなんとかなるかもね」
「うん!おれたちには『きょうゆう』ってとくべつなちからがあるんだ!ふたりできょうりょくすれば、きっとできる!いっくよー!!」
「···せーの!!」
「「はあーーーー!!」」
フユとナツは、自分自身が持っていた神狼族のもう一つの特徴である『トランス』の能力を知ってはいたが、自分自身の意思ではこれまで発現できなかった。
しかし、友達と自分たちがピンチに陥ったため、ここで出来なかったら自分たちはおしまいだ!とも考えていた!
友達を助けるんだ!という強い思いと、必死さによって二人はついに覚醒する!!
「···え?フユ?ナツ?···そのかっこうは?」
「···おれたちもママみたいにできちゃったね。さあ!じかんがないよ!いまならいける!!」
「···いくよ?ママのわざをここでためす!」
そして二人はデスアリゲータの群れに突っ込んでいった!
フユは剣に氷魔法を付与し、氷の刃で切れ味を増した剣で切りかかった!さっきまでは鋼鉄だった肌に剣が簡単に突き刺さったのだ!!
一方のナツは炎魔法を短剣に付与して切りかかった!こちらは短剣がわずかに刺さるぐらいだったが、高温となった短剣から火を噴きだし、デスアリゲータの体内を焼き尽くした!!
「す、すごい···。フユとナツってこんなにつよかったんだ···」
今まで見たことのないフユとナツのトランス状態の姿を呆然と見つめていたリナだった。
···そして3分が経ち、二人のトランス状態が解けた時には、魔獣は全滅していた。
「はあっ、はあっ。···な、なんとか、···なった、···ね」
「はあっ、はあっ。···これ、けっこう、···きつ、···い、ね」
フユとナツはその場で倒れこんでしまった。その場で意識があったのはリナだけだった。
···この時、リナは決心した。『もう、こんなことになるのはイヤ!わたしのまほうがもっとつよかったらこんなことにはならなかった!』と思い、これ以降高威力の魔法を好んで使うようになってしまったのだ···。
「···!今のはリナの魔法だぞー!あっちだー!」
「···リオ!···私を乗せて飛べる!?」
「短時間なら問題ないぞー!急ぐぞー!!」
「···うん。いまのうちにアキに連絡しておくね」
···かなり町から離れている!やっぱりケンが飛んで行ったんだね。···間に合え!
···そうして、ハルとリオは現場に到着したんだ。
そこでは、リナが泣いていた。ケンは木の根っこに倒れていて意識がなかったけど、リオの回復魔法で治癒できたんだ。
一方のフユとナツは気を失って倒れていたんだ。
すぐにハルが身体の状況を確認して、ケガはない事はわかり、一安心したんだ。
ボクはちーむッス!の会議モードで現場をナナと一緒に見たんだけど···。
ビックリしたよ···。この近辺で最悪の魔獣であるデスアリゲータと戦っただなんて···。しかも12体という大群だ!間違いなくハルに緊急依頼が来る数だよ!?
いったい何があったんだろう?いや、詮索は後だ!まずは迎えに行こう!ボクはナナに乗って、現地に向かってから転移で家に戻ったんだ。
この事件は子どもたちにとって今後の人生を決定づけてしまう出来事でした。身をもって死の恐怖を感じ取ってしまい、生存本能からフユくんとナツちゃんはトランスに目覚め、リナちゃんは多少魔力制御が荒っぽくても広域殲滅魔法をこよなく愛するようになってしまいました。
子供の時の出来事って強烈なインパクトとして残ってしまってるってのは読者の皆さまにもあるのではないでしょうか?
ちなみに作者は3歳で一人で3輪車漕いで夕方に親父を駅まで勝手に迎えに行った記憶があり、母は作者が迷子になったと思って大捜索というハプニングを起こしました(笑)!かれこれ40年近く前の話ですが、当時は大らかだったですね。今だったら危ないかもしれないですね。いや、当時も危なかったと今では思いますが、かなりな悪ガキでしたね!
さて次回予告ですが、子どもたちは親から怒られ、ハルちゃんによるお仕置きを食らいます!
子どもたちは今回の事件をどう思ってるのでしょうか?そのあたりを書いてみました。
明日は祝日なので、朝と夜に1話ずつ投稿します。お楽しみに!




