1-4.まさかの満室!?泊まれないの?と思ったら
まずは宿の確保!ってことで大通りの入口に近い宿から空室がないか聞いてみる。
「申し訳ありませんが、本日はご予約のお客さまで満室となっておりまして···」
1軒目は満室だった。確かに大通りの入口だから立地条件はバツグンだし、仕方ないね。そう思って次の宿に行ってみると···、
「嬢ちゃん、悪いが今日はこの時間でもう既に満室なんだ。他当たってくれないか?」
2軒目も満室だったよ。しかも女の子と間違われたし···。なんだか嫌な予感がしてきたぞ。フラグだったかもしれない。
3軒目に行くと···、フロントに人がいない。その代わりにカウンターに看板があって、
『明後日まで満室につき、新規宿泊はお断りしてます』
「···リオ、今日って何かイベントがあるのかな?」
「もしかするとそうなのかもなぁ〜。ちょっと大通りの人に聞いてみるかー?」
ドンドン泊まれないフラグが立ち始めている気がしてきたよ。リオの言う通り、宿を出て通りすがりの人に聞いてみた。
「すいません。ちょっと聞きたいんですけど、今日って何かイベントがあるんですか?」
「うん?この街に初めて来たのかい?一昨日から中央広場にあの有名なツーデン劇団が来てるんだよ。
めったにこんな辺境の地にやってこないし、大魔王の件で興行自体久しぶりだからね。熱狂的な追っかけもいる有名な劇団だから、周辺の街からたくさん人がここにやって来てるんだよ。
キミも見に来たんじゃないのかい?」
「いや、たまたま寄っただけなんです。親切にありがとうございました!」
···知らなかったよ。だからどこも満室なんだ。しかも3軒目で『明後日まで満室』って立て看板があったってことは、キャンセル待ちも期待できないって事だよね。
よくよく考えると、通信手段ないんだから事前予約ってできないし、当日飛び込みが当たり前なのに『予約』って言葉が出たってことはみんな連泊だったんだよね。
「どうしよう?明後日まで宿がないのが確実になっちゃったよ」
「まさかこんなタイミングで劇団が来てるなんてなぁ〜。しかも一昨日からって事は、レックスに襲われてなかったら宿確保出来てたってことなんだよなぁ〜」
ヤバい!不運が某落ちゲーのように連鎖してるぞ。とりあえず宿はダメ、野宿もダメって、アカン!詰んでるわ。
仕方なく今夜の宿を諦め、とりあえず目的だったボクの身分証を作成してもらうために役所へ行くことにした。
大通りを役所に向けて歩いていると、狭い路地から誰かが走って出てきた!
これもお約束だね。もちろんボクとぶつかってお互い倒れてしまった。
「イタタタ···。え〜っと、大丈夫ですか?」
ボクに突っ込んできた子に尋ねてみる。目出し帽かぶってて表情が読みにくいなぁ。
「イッタァ~、ご、ごめんなさい!急いでるので、あうっ!」
どうやら右足首をひねっちゃったみたいだ。立ち上がろうとしたら痛みでまた座り込んでしまった。
その子が路地の方をしきりに見ている。ボクは身体強化して視力を向上させて路地を見てみると、人相の悪そうな、いかにもヒャッハーなゴロツキって格好のヤツらが3人走ってきている。
「おい!もう逃げられねぇぞ!!観念しろぉ!!」
はい、悪人認定しました!ほっとけないから一緒に逃げちゃうか。またしてもトラブルに巻き込まれちゃったなぁ~。
とりあえず身体強化を4倍に引き上げて倒れている子をお嬢様抱っこする。
「えっ!?ちょ、ちょっと?」
「勝手でごめんね!追われてそうだからちょっとだけ逃げるのを手伝ってあげるね。リオ、逃げるよ!」
「おう!ちょっと荒っぽいけど屋根の上を通っていくか!」
その場で大きくジャンプして2階建ての建物の屋根の上に飛び、そのまま建物伝いに外壁方面へ走っていった。
···かなり離れたな。大通りは人が多かったから、さすがにここまでは追ってこれないよね。とりあえずお嬢様抱っこした子を降ろしてあげる。
「ここまでくれば大丈夫でしょう。ほとぼりが覚めたら大通りに戻ろうか」
その子は呆然としたままだった。顔が真っ赤だね。驚かせちゃったかな?
「あの〜、大丈夫ですか?」
「あ、ごめんなさい!それとありがとうございました!危うく人さらいに誘拐されるところだったんです。助かりました!」
う〜ん、定番の流れだったか。アニメじゃないよ?ホントに起こったんだからね。
「よかった~!とっさに状況判断したから、間違ってたらどうしようと思っちゃったよ。そうそう、ボクはアキ、こっちはリオだよ」
「おう!リオだぜー!よろしくなー」
自己紹介すると、その子は帽子を取ってくれた。スゴいキレイな金髪碧眼の女の子だったんだよ。
「本当にありがとうございました。私はニーナって言います」
「ニーナさんね。あと足首大丈夫ですか?良ければ回復魔法で治してあげるよ?」
「そんな!そこまで甘えさせてもらうわけには···」
「いいからいいから。気にせずに受けちゃって〜」
ちょっと強引だったかな?でも、もう街に入っちゃったから戦闘もないし、魔力も使わないともったいないからね。出来る人助けも大事だよ。
ホイっとな!消費魔力量が少なく感じたなぁ。症状が軽かったからかな?
ん?ニーナさんがビックリしてるぞ?何かおかしかったかな?
「え〜っと、どうしました?まだ痛みますか?」
「い、いや。そうではなくて···。アキさんは創作魔法を使われるんですね?」
「あ〜、その事ですか。はい、教えてくれた師匠が得意で、教え方が上手かったので」
「スゴいです!私、初めて見ました!創作魔法ってまるで整調者みたいです!」
うーん、ここでリオがその整調者だったって伝えたらなんかマズそうな気がするぞ?チラッとリオを見たら嫌そうな顔をしてるから、ここは敢えて黙っておくか。
「スゴいのは師匠ですよ。もう足首も大丈夫そうですね。家まで送りますよ。あと、ボクが創作魔法使えるのは内緒ですよ」
「わかりました!あとすいません、ちょっと遠すぎるので、お願いしてもいいですか?お礼といってはなんですけど、夕食をごちそうさせて下さい!」
『ごちそう』と聞いてテンション上がるリオ。まぁ、拠点出てからまともな食事してないから仕方ないか。ここは甘えさせてもらおう。ついでに泊まれる場所がないか、後で聞いてみよう。
そうして、また身体強化してからニーナさんをお嬢様抱っこして、ニーナさんが指し示す方向へ走っていく。街の中心部方面のようだね。あれ?ここって中央広場だよね?この大きなテントって、もしかして劇団のテント?
ニーナさんはテントの裏側を指定してきた。どうやら劇団員だったみたいだね。そばに近づいたら、他の劇団員の人が駆け寄ってきた。
「ニーナ!?今までどこ行ってたんだ!?もうすぐしたら上演開始だってのに姿が見えないものだから探しに行くところだったんだぞ!」
「ごめんなさい、劇団長。買い物していたら人攫いにあってしまって、この人たちに助けてもらったの!」
「なんだって!?だからあれほど一人で買い物に行くなと言っただろう?とりあえずその事は後だ!もうすぐ上演が始まるから、楽屋で準備しなさい!」
「わかりました!すぐに準備します。アキ、リオ!上演が終わったら一緒に夕食しようね!」
そう言ってニーナはテントに走っていった。その後ろ姿を見送った劇団長は、今度はこちらに質問をしてきた。
「キミたち、ありがとう!少し事情を聞きたいのだけど、いいかい?」
今回はお約束の展開をてんこ盛りにしてみました。
ちょっとネタを仕込みすぎたか?とも思いますが、この後も多数のネタを仕込んでおります。
次回は劇団でのお話です。お楽しみいただければ幸いです。
そうそう!本日、初めての感想をいただきました!ありがとうございました!こんなにも嬉しいものなんですね~。私もたくさん感想をほかの作品で書きましたが、こういった感覚だったんだな~としみじみ思いました。やっぱり何事も経験ですね!
初めて小説書いて、そして初めて感想をいただけて今日はフルテンションで仕事したので、変な目でみられた作者でした(笑)。




