10-14.認めたくないものだな!若さ故の過ちというものを!!
ナナはなんと家出してたんだ!
そうとはまったく知らずにボクたちがやって来て、さらにリオという旦那を連れてきたものだから、ナナのご両親はそれはそれは大層お怒りモードだったんだ···。
「貴様かーーー!!!うちのナナをたぶらかした外道はーーーーー!!!」
「ナナちゃん!?まぁ!なんてこと!!汚されて帰ってきちゃったのね···!ああ!!どうしましょう~!!」
「ティア···、貴様ぁ~~!!うちのティアを泣かせたな!?万死に値する!!!今すぐこの世から消し去ってくれるわぁーーー!!」
「ちょ、ちょっと待って下さい!!まずは話を聞いてくれませんか!?消し去るのはいつでもできますから!!」
「ちょっとー!?アキ!?それはオレが悪いって聞こえるんだけどー!?」
「そうよ!パパ!ママ!落ち着いてあたしの話を聞いて!!その後で煮るなり焼くなりしてくれたらいいから!!」
「ナナまでー!?オレは悪くないんだぞー!?ナナが強引に結婚してきただけだからなー!?」
「な、なんだとーー!?自分の罪を!うちのかわいいかわいいかわいいかわいいぃ~!娘のせいにするだとぉーーー!!もはや弁解の余地はないわ!!あの世へ行けェーー!!」
「だから待って下さいって!!リオ!言いたいことがあるのはわかるけど、ちょっとだけ黙ってて!!」
「そうよ!ここはあたしに任せなさい!!話聞いてもらえないと先に進めないわ!!」
「な、なんで···。なんでオレが悪いことになってるんだー!?」
これは非常にマズイ···。怒り心頭でこのままだとリオが消されちゃうぞ!?なんとかしなきゃ!と思ったらナナが前に出てこう言ったんだ!
「聞いて!!パパ!ママ!···あたしはもう大人よ。あたしの人生はあたし自身で決めるわ!そして、あたしの意思で!あたしからリオに結婚を申し込んだわ!!」
「なん···、だと!?そ、それは本当なのか!?ナナから···、結婚を···、本当に申し込んだというのか!?認めたくないものだな!若さ故の過ちというものを!!」
「本当です。ナナはボクの妻のハルのパートナーとしてこれまで過ごしていたんです。ボクとハルが結婚した事で不都合がないようにナナが配慮してくれて、ボクの相棒であるリオと結婚したんです!でも!リオとナナは仲がいいんです!!よくケンカしてますけど、それも『愛あるじゃれあい』なんです!今、ナナは充実した生活をボクたちと一緒に過ごしてるんです!」
「···失礼だけど、あなたたちはいったい何者なの?ナナの仲間のようですけど?」
「これは失礼しました。ナナのお母さん。ボクはアキ。世界中を旅しています。こちらはボクの妻のハルです。ハルはナナと一緒に世界中を旅していたんですよ」
「オレは白銀竜のリオだ。···あんまりこれは名乗り上げたくなかったんだけど、元整調者のリオだ」
「なん···だと!?あの大魔王を倒した英雄リオだと!?こんな少年の竜が···?」
「あー、大魔王を倒した時の後遺症でなー。これでもだいぶ良くなったんだが、当面はこの姿のまんまだー」
「リオの言う事は本当よ。あたしのパートナーとしては最高の相手だと思うわ!パパとママが何と言おうと!撤回する気はないわ!!」
「ナナ···、そうか。まだ納得はできないが、ナナの言いたいことはわかった。少しばかり失礼してしまったな。そうそう、こちらも自己紹介が遅れたな。わたしはムート。ここ青竜の集落のまとめ役としている者だ。こちらは妻のティア。まずはナナが帰って来てくれた事を喜ぶとしよう」
「私がティアよ。ナナの母なの。とりあえず立ち話もなんだから、家に戻りましょうか?」
「みんな、あたしに乗って。家までここからだとちょっと離れてるからね」
ふぅ~~。なんとか収まったよ。危うくリオが消されかけたよ。とりあえず落ち着いてくれてよかった。さて、ここからどうなるかな?
ナナに乗って集落にやってきた。リオの故郷のレジストと違って、ここの竜たちはナナが帰ってきた事を心から喜んでくれているみたいだね!非常に好意的な雰囲気だよ!
ただ···、ほんの一部からは殺気っぽい視線を感じたよ···。でも、ムートさんが半分認めちゃってるみたいなものだから手が出せない状況なんだけどね。
そしてナナの実家に着いたんだけど、やっぱりここも壁がなくて柱と屋根だけだったね。ドラゴン族って、どこもこうなのかな?
「さて、ナナ?これまでどう過ごしてきたのか、話してくれるか?」
そしてナナはこれまでどう過ごしてきたかを語りだした。路銀が尽きて道端で倒れていたところをハルに拾われてから一緒に旅をするようになり、世界中で活躍する凄腕冒険者になったこと、仕事でボクたちと一緒に討伐クエストに挑んでから、成り行きで一緒に行動していたらボクとハルが結婚することになり、ナナもリオと結婚することを決意したこと···。
簡潔にまとめた上でムートさんとティアさんに説明したんだ。最初は険しい顔をしていた二人だったけど、リオとの結婚の決意を聞いてからは顔が穏やかになったんだ···。
「なるほどな。ナナの決意は分かった。それで?この後はどう過ごすのだ?もちろん、ここで一生暮らすのだよな!?」
「いいえ、これからもみんなと一緒に旅を続けるわ。それに、もうすでにレオナード王国のアクロってところに家もあるから、帰ってくる事はほとんどないわ」
「そんな!せっかく帰ってきてくれたのにすぐに旅立っちゃうなんて!母さんは悲しいわ!ナナちゃんは私のことが嫌いになっちゃったの!?」
「そんな事はないわ!ただ、『愛が重すぎる』のよ!!あたしはもう大人よ!もう自由にさせてよ!!」
「そんな事言わないでちょうだい!ナナちゃんがいない間、寂しかったのよ!辛かったのよ~!」
「···あの~、部外者のボクが言うのもなんですけど、ティアさん?こうしてナナが立派に自立したんです。いわゆる親離れなんですよ。いつかは子どもは巣立つものなんです。それを見届けてあげるのも愛情なんですよ?親も子離れが必要なんです」
「···そうなのね?そういえばあなたの親御さんは?結婚した時にこういうやり取りがなかったのかしら?」
「···ボクとハルには親がいません。天涯孤独の身なんですよ」
「···!それは···、失礼な事聞いちゃったわね。ごめんなさいね」
「いえ、気にしないで下さい。でも、もしいたとしても自立したボクたちを見て嬉しがってくれると思うんです。···勝手な思いかもしれませんがボクたちにこの後子どもができて、その子どもたちが自立した時、確かに心配なところもなくはないですが、ボクだったら祝福してあげたいと思います」
「···なるほどな。ナナは一人娘だったが故に大切に育ててきたのだ。ただ···、不器用なもので加減が効かなかったのだな?それがナナを追い詰めてしまっていたというのか···。ナナよ。済まなかったな」
「···もういいわ。家出したことは確かに悪いことだったけど、でも!そのおかげであたしはハルやアキ、そしてリオに出会えた!この出会いはあたしにとってかけがえのない財産よ!これからも大事にしていきたいわ!」
「···わかった。リオさん?こんなわがままな娘だが、これからもよろしくお願いできるだろうか?」
「おう!こう見えても元整調者だし、力は白銀竜の中では最弱でも魔法が得意だし、それで集落全員を倒したからなー!ナナはオレが守ってやるぞー!」
「ふははは!確かに強さでは誰にもかなわぬな!!」
「あっ!!そうだ、リオ!カトルさんからの手紙をムートさんに渡さなきゃ!」
「おー、そうだったなー!ムートさん!オレの親父、白銀竜をまとめるハンティング家当主からの親書です。お渡しするぞー」
「これはご丁寧に···。ふむふむ?···リオさん?これは、···カトル殿は本気で書いているのだろうか?ちょっと気がかりなところがあるのだが···」
「···へ?親父はなんて書いてたんだー?」
「『我が息子リオとそちらのご息女ナナさんの結婚を記念してバトルロイヤルという交流会を開きたい』とあるのだが···?」
ブフーーーー!!
ボクとリオとナナは吹き出した!!
なんとかナナちゃんのご両親を説得できたアキくんとナナちゃんでした。
リオくんも説得しようとしましたが、なかなかうまくいきませんでしたね。頑張ってるんですが、報われませんでした。
そしてカトルさんのお手紙は予想通りでしたかね?バトルさえできれば誰でも構わないようです。ちょっと迷惑ですね(笑)!
さて次回予告ですが、青竜の集落を出てアキくんたちはアイム島を観光しようかな?と思います。そこで意外な人物と会ってしまいます!誰なのでしょうね?
お楽しみに~!




