10-13.姫が『旦那』連れて帰ってきただとぉ!?
なんとか巨大魔獣から船を逃がすことに成功したボクたち。船内に入ったら船員さんもお客さんからも拍手と感謝の言葉を言われたよ。
「やっぱり冒険者ってすごいんだな!!こうして助けられて感動したよ!ありがとう!!」
「生き残れた!やったぞーー!今から祝杯だーー!!···船酔いしてるけど構うもんかーー!!···うぐっ!(口からレインボー発射)」
「ありがとう!お嬢ちゃんたちのおかげで助かったわ!大したお礼できないけど、アメちゃんあげるわ!!」
···ちょっと理解に苦しむ感謝もあったけど、まぁいいか。とりあえず船長さんには『疲れたから詳しい話は後にして』って伝えてボクたちは船室に帰ったんだ。
船室に戻ったら、全員ベッドに倒れこんでしまった···。今回の敵はどうしようもなかったよ···。
「いや~、あんな魔獣がいるんだね···。どうしようもなかったよ···」
「あー、あれは反則過ぎるなー。整調者でも厳しいぞー」
「···世の中、上には上がいるね。今日もひとついい勉強になった」
「···もうあんな飛行はコリゴリよ~。気を張りすぎちゃっていつも以上に疲れたわぁ~」
そう言ってボクたちは昼寝しちゃった。目が覚めたのは夕方だったよ。その頃には嵐は過ぎ去って、きれいな夕日が海に沈んでいくのを見ることができた。
とりあえず危機は去ったね。···嵐を引き連れてる巨大魔獣かぁ~。もしかしたら何かあるのかもしれないけど、ボクたちには関係ないよね?もう2度と相手したくないよ!
その後、船長さんからレストランに招待されて夕食をごちそうになり、報酬も結構な金額をいただいた。まぁ、あんな魔獣から無事生還しただけでもこの金額に見合うだろうからね。運がよかったと思うよ。ボクたちも、船員さんたちも、お客さんたちもね。
そして再び船室に戻ってゆっくりくつろいだ後、早めに寝ることにしたんだ。···今日は疲れたよー!
グロー歴505年3月21日 晴れ
あの後は穏やかな航海だったね。レストランは3食無料で提供されちゃったよ。そして特にやることもなくてゴロゴロとくつろぎつつ、ボクのスマホでアニメやマンガを読みつつ、リオとナナに教育しつつ···。時間つぶしがそろそろ辛くなってきたところで島影が見えだしたんだ!
もうちょっとで着岸かぁ~。予定より半日以上遅延しちゃったけど、無事(?)たどり着けてよかったよ~。
「いやぁ~!今回は助かったよ!次回もぜひ乗ってくれよな!」
「はは···。そうですね。島から帰る時も乗らないと帰れませんからね···。でも、あんな事はコリゴリですよ!」
下船時に船長さんからまた乗ってくれ!って言われちゃったけど、帰りは転移で戻るよ!もうあの巨大魔獣に会いたくないしね!
さて、アイム島に到着したよ。輪っか状の島になっているみたいだね。サンゴ礁の島がこういう形をしている事が元の世界だとあったから、ここもそうなんだろうね。
さて、ナナの実家はどこにあるんだろうね?リオの時のようにトラブルに巻き込まれなかったらいいんだけど。
「はぁ~~~っ···。帰ってきちゃったかぁ~~。気が重いわぁ~~」
「そう言うなよー。オレのところにあいさつに行った以上、こうなる事はわかってただろー?」
「まぁ、そうなんだけどね?帰りたくなかったってのもあるのよねぇ~。気が重いわ~···」
「···そんなに問題がある家族だったの?」
「まぁ、ハルには親がいないからわからないでしょうけど、親っていい親もいれば悪い親もいるのよ。あたしのところは···、『いい親』になるんだろうけどねぇ~。その中身がなぁ~···」
「まぁ、来ちゃったからにはあいさつだけはしとこうか?嫌ならすぐに島を出ちゃえばいいんだしね!それで、場所はどこなの?」
「···ここから1時間ほど時計回りに進んだところに青竜の集落があるわよ。そこにいるわ」
「じゃあ、歩いて行こうか。いい天気だし、4日間も船の中だったから体鈍ってるしね!」
ということで歩いて向かうことにしたんだ。やっぱり南国の島なだけあって、海が非常に濃い青色だ!サンゴ礁の石灰質のせいでこういう風に見えるみたいなんだよね~。エーレタニアにもサンゴがいるのか知らないけど。
そうして南国の風景を楽しみつつ海岸沿いに歩いていると、青竜の集落らしき場所にたどりついた。ここでもドラゴン族は竜の姿で過ごしているようだね。他のドラゴン族もそうなのかな?
海岸で日向ぼっこしている青竜がボクたちに気づいたんだ。···ここからとんでもない騒ぎが起こるとはこの時のボクは思ってもいなかったけど。
「···ん?ヒト?ここは青竜のナワバリなんだけど、キミたちはどうしたんだい?道に迷ったのかな?」
「いえ、こちらのナナがここの集落出身と聞いてやって来たんですけど···」
「···えっ!?姫!?姫が帰ってきてくれたのかーーー!!」
「···はっ!?ひ、姫!?ど、どういうことなんですか!?」
「どういうことも何も!ナナ姫でしょ!?って、隣にいるドラゴン族は···!は、白銀竜!?お揃いの腕輪をしてるって···。ま、まさか姫!?そ、その白銀竜はだ、旦那なんですかぁ~~!?」
「···どういう事、ナナ?『姫』って言われてるけど?」
「···だから帰ってきたくなかったのよ。こういうことになる事がわかってたからね」
「···あのなー、オレの時と一緒だろー?オレも大変だったんだから、ナナも味わっておけよー」
「こうしちゃいられない!!すぐに王に伝えなきゃ~~!!姫が『旦那』連れて帰ってきたぞーーー!!」
そうしてのんびりしていた青竜はズッコケながらも慌てて飛んで行ったよ。···さて、ちょいとナナに尋問しておこう。まだ何か隠してそうだしね!
「ナナ?もう白状しちゃいなよ?ここで全部話してくれないと、ボクたちが動きようがないからね」
「···わかったわよ。さっきのアイツの言う通り、あたしはここの集落のまとめ役の一族の一人娘よ。まとめ役を『王』って呼ぶもんだから、あたしも『姫』って呼ばれてたのよ」
「そういう事ね。でも、結構皆さん帰ってくるのを心待ちにしてたみたいだよ?集落から出る時に何かあったの?」
「···家出したのよ」
「···は!?い、家出!?」
「···そうよ。うちの親ってあたしを溺愛しすぎちゃって鬱陶しかったのよ!一人娘だったからってのもあるんだろうけどね。もう嫌になっちゃったので『旅に出ます。探さないで下さい』って書置きだけ残して深夜に飛び出しちゃったのよ。それが10年前くらいかしらね?」
「はー、ナナって無茶するなー。そりゃうちの所よりも心配するぞー」
「そうだね。···でも待てよ?家出した娘が旦那を連れて帰って来たってナナのご両親が聞いたら···?ちょっとマズい事になるかもしれないぞ?」
「んー?何かマズかったかー?」
「···これはレジストと同じように血の雨が降るかもしれないぞ」
そう思っていると、大きな青竜が2体こっちに向かってすごいスピードで迫ってきた!!
「貴様かーーー!!!うちのナナをたぶらかした外道はーーーーー!!!」
あ~···、やっぱりこうなったかぁ~。どうしようかなぁ~?
ナナちゃんは家出少女(?)でした!
あまりにも両親が溺愛しすぎちゃっていやになっちゃった!ってのもわかりますけどね。一人娘のご両親ってこういうの多いと思うのは作者の妄想でしょうか?
そりゃね~。家出した娘が旦那連れて帰ってきたら親はこうなりますよ。ね?
さて次回予告ですが、激おこぷんぷん丸なナナちゃんのご両親をアキくんたちは必死に説得します!そして、白銀竜の集落の長であるカトルさんのお手紙の内容はなんだったのでしょうか?
お楽しみに~!




