10-4.実の親でなくてもこういうことを言いたくなるものなのだよ
今回のバトルロイヤルも、ボクたちの完全勝利という形で幕を閉じた。
閉じたって言うか、集落の中央広場に立ってるのがボクたち4人だけだったんだけどね···。
「ハル、お疲れ様!どこかケガしてない?すぐに全力で回復魔法かけるから!」
「···アキは心配性だね。···どこもケガしてないよ。···大勝利、ブイ」
「···なんだか、ハルってアキと結婚してから段違いに強くなった気がするんだけど?何かあったの?」
「···?特になにも?私は変わらないよ?」
「···あ~、そういう事ね。完全に理解したわ」
「···?変なの。ナナもだいじょぶだったから問題ないね」
「そうね~。こんなに迫られるのって初めてだったから怖かったわぁ~。目が普通じゃなかったからなおさらだったわ。···覚悟決めてやって来たけど、こんな事の覚悟はしてなかったからなぁ~」
「だから言っただろー?覚悟しとけってなー。まー、オレの言った覚悟の中身を伝えてなかったのがマズかったなー。そこは謝るぞー」
「···もういいわよ。ちゃんとこうやって親戚共々全滅させれたんだしね!強さだけならもう問題ないんだろうけど···、この前の大魔王とかは勘弁してほしいわね」
「それはボクも一緒だよ。できればもう二度と会いたくないよ~」
そうわちゃわちゃと会話しながら、リオの実家であるハンティング家の屋敷に戻ってきたよ。
えっ!?リオの家族は助けないのかって?···どうやってあの巨体を連れ帰ってくるのさ?身体強化6倍でも厳しいって!リオも『ほっとけばいつか起きるから放置でいいぞー』って言ってたしね。
というわけで、完全勝利を記念してボクたち4人だけでバーベキュー大会だ!!お肉はハンティング家の離れにあった倉庫で寝かされて熟成した『何の肉かわからないけどとても美味しそうな霜降りの入った肉』を勝手に持ち出して、肉焼きセットに鉄板を敷いてステーキにしたよ!
う~~ん!!おいしい~~!!···しかし、本当にコレって何の肉なんだろうね?鳥でも豚でも牛でもないし···。ただの塩コショウだけなのに肉汁がめっちゃいけるんだよ!
ハルも鉄板の上のお肉を、ナイフとフォークで上品に食べていた。どこかの貴族のお嬢様と言われても遜色ないほどだよ!
上品にお肉を食べるハルもかわいいよぉ~!!
···えっ?しつこいって?···それって嫉妬だよ?マスクつけて襲ってきたら返り討ちにするからね!
アクロで仕入れたパンと、野菜を切ってサラダにしてみんなに食べてもらったよ。こういうのもいいねぇ~。
ちょうど食べ終わったころに皆さんが帰宅したよ。お肉を勝手に持ち出したことについては問題なかったよ。っていうか、倉庫の肉を分けてもらったよ!これでおいしい肉ゲットだぜ!
そして、明日ボクたちはエイテ帝国経由でナナの実家があるアイム島へ向けて出発すると伝えたんだ。するとイアさんがまた究極暴走しだしたんだ···。
「まあまあ!急な話よね!?それだとわたしたちがナナさんのご両親にあいさつできないじゃないのよ!もうちょっとゆっくりしていっていいのよ?急いで準備するから待っててちょうだいね!ああ!忙しくなるわ!寝てる時間がないわよ!?急いで素材を剥いで換金しにいかないといけないわ!もう服は人族の既製品の礼服で納得するしかないわね!?でもサイズは合うのかしら?私たちの人型ってかなり大柄だから合う服が前に探しに行った時に売ってなくて泣く泣く帰ってきたことがあったのよ!だから礼服なんてそんな着る機会がないから数も少ないと思うのよね!困ったわ!いつもの町じゃ取り寄せるには相当時間がかかりそうだからエイテ帝国の首都で買ったほうがいいのかしら?それも大事なんだけど、狩りの編成を変更しないといけないわね!もしかしら1か月以上かかるかもしれないのよね?そんな長期間お父さんとギアくんの穴を埋めるなんて無理だわ!あっ!そうだわ!交代で応援に来てもらったらいいのよ!20人ぐらいでローテーションで応援してもらったら負担は軽いわよね?そうしましょう!そうと決まったら急いで集落のみんなと会議しなきゃいけないわね!でも今日はもうみんなヘトヘトだから明日の午後がいいかしらね?ちゃんと段取り考えて議題に出さないと困ってしまうわね!お父さんとギアくんも会議に出てね!それでみんなを納得させるのよ!あとは···ペラペラ」
「あー、母さんはほっといていいぞー。リオ?オレたちのあいさつはホントにいいんだなー?」
「···こんな母ちゃんを連れて行ったら逆に怒られるぞー?親父から手紙をさっき預かったから、もうそれで大丈夫だなー」
「うむ。ワシも青竜の里には行ったことがないし、代表も知らぬからな。本来は一緒に訪問するのがいいのだろうが、こちらの里の事情もあるのでな。よろしく伝えておいてくれ」
「おう!わかったぞー」
「それとハルさん。今日は戦えて本当に楽しかったぞ!ワシもまだまだだということを痛感したよ。···これはワシが言う事ではないのだろうが、アキくんを頼むよ」
「···ん。言われるまでもないよ。アキは私が守る!」
「···カトルさん?なんでボクの事をハルにお願いしたんです?···失礼かもしれませんが、ボクはカトルさんとの家族ではないんですけど···」
「ははは、うちのリオが親代わりを、アキくんが結婚前までしていたのだろう?キミが外の理の者だとは聞いているのでな。
親がいない以上、リオが親代わりしていたのだからワシからもハルさんにお願いしたのだよ。···勝手な判断ではあるが、実の親でなくてもこういうことを言いたくなるものなのだよ。
気に障ったのなら謝るぞ?」
「いえ、そういうことでしたら大丈夫です。お心遣い感謝いたします」
「うむ。なにやら大魔王が生きていたとか、物騒な話もあるみたいだからな。いくら強いとは言っても過信せずに道中気を付けていきなさい」
「はい!ありがとうございます!」
こうして今日のイベントが終了して、昨日と同様にボクとハルはテントで、リオとナナは竜の姿で寝ることにしたんだ。
···今日もテント内でのイベントは中止だよ!
グロー歴505年3月9日 雨
おはよう~。今日はあいにくの雨だよ。
今日出発なんだけど、どうしようかな?ハル以外は雨に対する魔法や竜気があるからいいんだけど、ハルは濡れちゃうんだよね···。何とかできないかな?
「そういえば、ハル?ナナと一緒に旅してる時に雨降ってたらどうしてた?」
「···ナナが竜気を私にもかけていたよ?」
「えっ!?ナナってそんなことができるの!?」
「···魔力共有のせいなのか、竜気みたいに自分自身にしかかけられないようなものも、私にもかけることができるみたいなんだよ」
「そんな効果もあるんだね。ボクとは魔力共有してないから、ボク自身にかける魔法はハルにはしてやれないんだよね。どうやって共有するかもわからないけど」
「···え?もしかして知らなかった?···すでにアキは私と魔力を共有してるよ?」
「···そうなの!?ぜんぜん気付かなかったよ!?」
「···アキは魔力量が多すぎるから、私の魔力を感じてなかったかもしれないね?···ホントだよ?昨日の戦闘でもアキの魔力をちょっとだけ借りたしね」
「あ~、それも全く気付いてないわ。そうだったんだね。ボクの魔力は全部使ってもらっていいからね。ハルがケガする方が大変だしね!」
「···そんなに使い切れないよ。···でも、ありがとね」
「うん!ということは、ボクのエアコン魔法をハルにもかけてあげられるかな?ちょっとやってみるね!」
「···うん。···どんな魔法なんだろ?···え?ちょっと涼しいね。これがアキの魔法なの?」
「そう!エアコンっていう元の世界の技術を魔法で再現してみたんだよ。好きな温度にできるし、この状態で身体強化をかけたら雨も弾くよ!」
「···便利だね、ありがと。快適に旅ができそうだよ」
「じゃあ、これで問題なくなったから、朝食を食べたら出発しようね!···あっ!その前にリオをたたき起こしておかないとね!」
こんな感じでドタバタな出発になっちゃったよ。···でも、これもいつも通りかな?
集落の皆さんはすでに狩りに出かけてるので、今回も見送りはナシだ。というか、あったらまた勝負しかけられてややこしいしね!
さて、次はエイテ帝国だ!どんなところだろうね?楽しみだよ~!
ドタバタなバトルロイヤルも終わり、これからエイテ帝国へ向かいます。
さすがにハンティング家の皆さんをナナちゃんの実家へ連れて行くと、正直なところ書くのが大変なので手紙を渡すという形にさせていただきました。
そしてハルちゃんの魔力共有ですが、結婚したことでアキくんとも共有していました!これでハルちゃんはほぼ無制限に魔力を使うことができるようになっています。さらなる継戦能力アップだね!
さて次回予告ですが、宿場町の一室にてアキくんは今後の夫婦生活に不可欠な魔法の開発を行います。これがあれば安心!って魔法です。どんな魔法なんでしょうね?
お楽しみに!




