9-3.久々のアーマチュアの街
早朝からのどったんばったん大騒ぎの後、ボクは朝食を『2人分』作った。もちろん、ハルとボクの分だけだ。
後の3人は自分で作ってもらうことにした!今回の事は根に持つよ!?簡単には許さないんだからね!!
「え~、私の分は作ってくれないのね。酷い扱いだわ!アキくん!私は皇帝よ!?」
「自分が何したのかわかってるんです?パスさん?この程度で済んだんだから良かったと逆に思ってほしいんですけど?」
「まー、こういう逆襲を食らうかな?とは想定してたんだけどね。その通りになっちゃったかぁ~。アキ!謝るからあたしに朝ごはん作ってよぉ~。飛べなくなっちゃうわ~」
「食材はココにあるんだから好きにすればいいじゃない。取り放題で食べ放題だよ?」
「···なんで、関係ないオレまで罰を食らってるんだー?オレって昨日なにかしたのかー!?」
「···リオには本当に悪いけど、今日はそんな気分じゃないんだよ。ゴメン」
「なんだか八つ当たりされてる気がするぞー!?どうしてこうなったんだー?昨日の嫌な予感はこれだったのかー!?」
リオ。ゴメンけど、昨日リオと勘違いしてハルを抱きぬいぐるみにしちゃったから、どうしてもリオのせいにしたくなっちゃったんだよ!
そうしないとボクの心が平常心にならないんだ!わかってるんだよ!?リオに酷い仕打ちしちゃってるって!ボクが悪いって頭でわかってても、心がまだ大混乱でそうはいかないんだよ···。
そんな悪業を働いたボクだけど、リオは何も言わずに自分で朝食を作って食べてたよ。『よくわからないけど、まぁー仕方ないかー。納得できないけどなー』とは言ってたけどね。
その後はボクもリオもあんまり深く考えることなく普段通りに戻ったよ。このあたりはお互いの表情から何考えてるかわかってるからだよね。
ホント、いつも助かってます。
さて、出発の準備が整った。今回は拠点の小屋の荷物も全て無限収納カバンに入れておいた。
次は、いつ戻ってくるかわからないからね。
「···前から気になってたけど、そのカバンも神器なの?」
「えっ?あ〜、話してなかったかな?そうなんだ。無限に入って時間も止まってるみたいだからアツアツな料理をしまうと、取り出した時もアツアツなんだよね」
「え〜!ナニソレ!?便利すぎるんだけど!?私の持ってる国宝のアイテムリュックでもキャンプ道具と日用品と保存食ぐらいなのに!」
「···私も同じ。···そんなに入らないよ。スゴイね」
まぁ、神様からもらったものだから仕方ないんだけどね。確かに旅行するのに荷物って苦労するからなぁ~。今まで当たり前過ぎて考えてなかったけど、これもチートだなぁ。
そんな問答のあと、ナナは青竜に戻ってボクたちを乗せてくれた。パスさんはナナの腰部分あたりに座ってもらったよ。そして、ゆっくりと飛び立った。
「これは気持ちいいわね~!遠くまで見通せるから景色がよく見えるわね~!」
パスさんは喜んでいた。確かにボクも初めて飛行機乗った時の感想も同じだったね!
そして、あっという間にアーマチュアの街に着いたんだ。まずは入街審査に並ぶんだけど···、午前中だというのに大行列だった!
あれ?なんかデジャヴ感が···。
1時間待って、やっと審査が始まった。
「大変待たせたね~!じゃあ、身分証を見せてくれるかな?」
「今日は何かあるんですか?」
「知らないのかい?ツーデン劇団が今日から新作を上演するんだよ!約1年ぶりだから今日は朝から多くてね~。ハイ!全員いいよ。ゆっくりと楽しんでね!」
ツーデン劇団がまた来てるんだ?じゃあ、ニーナとタクト団長とも会えそうだね。
ただ···今夜の宿がヤバい!!
まだ午前中だけど、大通りにある宿を早く押さえないと!!
「みんな!急いで大通りに行って宿を押さえるよ!!すぐに満室になっちゃうから!」
「へぇ~。そんなに人気で人が来るんだ?じゃあ、急いで『ダブル』押さえないといけないね!」
「···ナナ、なんでダブル指定なの?また変な事企んでるでしょ?」
「そんな事ないわよ~。ハル(とアキ)のためよ」
「···なんか省略されてる気がしたけど。おっと、そんな余裕はなかった!急ぐよ!」
そして大通りに着いた。早速宿を押さえようとしたら···。ハイ!遅かったよ。昨日の時点で上演期間中は満室らしい。
仕方ない。劇団にあいさつしたらすぐに出発だね。
前回同様、中央広場に劇団のテントがあったよ。懐かしいなぁ~。ニーナはいるかな?そう思ってテントに近づくと、
「そこの方!まだ準備中なんだ!夕方に上演するから改めて来てくれるかぁ?」
「忙しいところすいません!団長のタクトさんかニーナさんはいらっしゃいますか?ボクはアキって言うんですけど、話してもらえないでしょうか?」
「団長の知り合いかい?って、以前に会ったことあるような···。あっ!!ニーナを助けてくれた嬢ちゃんか?ちょっとだけ待ってろよ!」
そう言って団員さんが走って裏へ行った。
···女の子とずっと勘違いされてるよ。タクトさんとニーナさんは説明してないのか?
しばらくすると、ニーナさんが走ってやってきた。
「アキくん!1年ぶりね!また会えて嬉しいよ!」
「お久しぶりです、ニーナさん。お元気そうで良かったです」
「ええ!もう人気がスゴすぎて大変だけど、頑張って演じてるわ!えっと···、後ろの人たちはお仲間さんかな」
「うん。まずはこっちはリオだよ。前は猫っぽい姿だったけど今はこんな姿になってるんだ」
「おーう!久しぶりだなー」
「えーーっ!?こんなカッコいいのがあのリオさんの人型だったの!?ビックリなんだけど···」
「まぁ、そうなるよね。そしてこちらが冒険者のハル、ナナ、パスさんだよ」
「初めまして!パスよ。うわさの劇団に会えて感激だわ!よろしくね」
「···ども。世界中を回ってる。アキたちとは途中から一緒に旅してるんだ」
「よろしくね!私はニーナって言います。せっかくだから今日からの新作をぜひ見ていってよ?関係者席が急遽空席出ちゃったのよ。」
「そうなんですか?みんなどうする?せっかくだから見ていこうか?」
「いいわねぇ~。よければ皇国でも公演を依頼したいしね!」
「···私は演劇って初めて。興味あるね」
「あたしも初めてよ~。有名だそうだから、楽しみだわ~」
「じゃあ、ニーナさん。お言葉に甘えさせてもらいますね」
「わかったわ!午後5時が入場開始で5時半から上演開始よ。開始直後は混んでるから5:20頃に入ってくれれば空いてると思うわ。一生懸命頑張ったから、その成果をしっかりと見てね!」
「はい!楽しみにしてますね」
というわけで、夕方まで大通りで買い物したり喫茶店で休憩したりして、あっという間に開演時間となった。
関係者席は前回同様、一番前の中央だった。
「···そういえば、演目のお題って何?」
「あっ、また聞いてなかったなぁ~」
「まー、前回はカーネとアイリの妄想の整調者の話だったなー」
「ふふっ、何も知らない演目もいいじゃないの?」
そんな話をしていると、大きな拍手が始まった。開演のようだね!
『本日はこのような多数のお客さまにお越しいただき、誠にありがとうございます!!
大変お待たせいたしました!本日からの最新作!
『白銀竜の着ぐるみ少女の冒険譚』
をお送りいたします!!最後までごゆっくりお楽しみ下さい!!』
ブフーー!!!
ボクとリオは吹き出した!!
アキくんの逆襲は朝ごはん抜きでした。かわいいものですね!ただ、今後は若干過激になってしまうんですけどね。
そして久々にツーデン劇団が登場しました!
新作の内容は···。どこかで見聞きした人が主人公になってませんかね?どこから情報が漏れたんでしょう?
さて次回予告ですが、新作の内容が明らかに!このお話を書いた人物の意図はなんだったんでしょうか?
お楽しみに~!




