8-13.皇国のこれから、そしてアキたちのこれから
おはようございます。
このお話で第8章完結です。そのため本日はネタバレ集と設定資料集、さらに夜には第9章第1話と4回投稿しますよ!天気悪いので、たっぷりとお楽しみ下さい。
「さて、何から話したものか···。まずは『大魔王がなぜ魔石を狙ったか』かな?」
「そうですね。パスさんも言った通り、魔石なんて採掘された場所を狙ったほうがいいと言ってましたよね?」
「あ~、あれはウソよ。ヤツらの狙いを聞き出すためにああ言っただけなのよね。あの魔石はね、皇国の文明の『心臓部』となる魔石だったのよ」
「···どういう事?たった一つの魔石がそんな重要なパーツだとは思えないんだけど?」
「まぁ、事情を知らない者からすればその通りだな。ハルさん?皇国の魔道具についてる魔石が『使用していない時は大気中の魔力を吸って回復している』事は知っているね?」
「···うん。そのせいでアキとか魔力量の多い人は魔力の回復速度が著しく遅いって言ってる」
「あの魔石はね、地中の『龍脈』といわれる星の魔力の流れから魔力の一部を吸い上げて、皇都トベルクの大気に魔力を散布するための『汲み上げ装置』として使用していたものなのよ」
「という事は、それがなくなったという事は、魔法も魔道具も使えなくなる···?」
「ご名答。だから皇国の『心臓部』なのだよ。言っただろう?『民衆が怒る』とね。一度便利になってしまうと、もう後戻りはできないのだよ。だから、この件については私が退位することで責任を取ったことにしないと収拾がつかなくなってしまうのだよ。もっとも、それでも怒るものはいるだろうがね」
「それで皇帝となった私が最初に行ったのは魔道具の『買取』ね。結構高値での買取にして魔道具を使わない他の国と同じレベルの生活機材を買ってもらって慣れてもらうの。実は3年前ぐらいからこの計画は始めていたのよ」
「そんな前から誘拐されることを感じていたのかー?」
「いいえ、大魔王ムーオの被害が増えだした頃に、もしかしたら狙われるかも?との想定で始めたの。それに、年々魔道具の出力が落ちていたのも問題だったのよね~。それと、万が一魔力がなくなっても生活が成り立つようにするためにね」
「すごいですね。元の世界では『BCP(Business Continuity Plan 事業継続計画)』や『EAP(Emergency Action Plan 緊急時行動計画)』って言われてました。まさかこの世界で実際に実行できる人がいるなんて驚きです。元の世界でもできる人は極わずかだというのに···」
「ほう!いい言葉だな。それにアキさんの世界はこの世界よりも文明が発達してると聞くが、その世界と同じ事が実行できているというのは最高の誉め言葉だな。我々がやったことは正しかったというわけか」
「そうですね。まさに国民のことを第一に考えられた計画だと思います」
「ただね~。あくまで机上の空論だったから、実際に発動したのが一昨日なのよね。だから市中は結構混乱してるわ。魔獣の襲撃もあったからなおさらね。だからこれも情報操作で利用させてもらったの!『魔獣の襲撃で魔道具が使えなくなった!使えなくなった魔道具は国が買い取るから、魔力の使わない機材を買ってね!』ってね。機材を売る商人には定価販売を義務付けてるし、利益から入る税金もそれなりに多いから、国庫からの持ち出しは一時的で済みそうね~」
「恐ろしいわね~。情報を握ると国民はその情報で踊らされてしまうのね···」
「そうだな。ナナさんの言う通りだ。この有用性を説いたのがパスだったのだ。だから次代の皇国は『情報』に特化することになったのだよ」
「アキくんには本当に感謝よ!キミのおかげで私の方針に間違いはない!って確信したのよ」
「えっ!?ボクがですか?それはどうして?」
「キミの魔法の一つである『ちーむッス!』よ!あれは私が思い描いていた理想そのものだったのよ!実際に私も触れてみて感動したわ!ありがとね!」
「そう言っていただけると嬉しいですね。陛下···じゃなかった、エビスさんには伝えましたが、再現は不可能だと思いますよ?神器のスマホを使わないといけない魔法ですし」
「それは大丈夫よ!全部の機能を再現できるとは思ってないからね。ほんの一部だけでも使えるだけで飛躍的に私たちは有利になるわ!それにね、私たちはすでに『ちーむッス!』でつながってるから情報のやりとりはし放題だしね!」
「そうですね。何か情報があればお伝えしますね。有効に活用して下さい」
「ありがとね!そうそう、今回の報酬の話をしないとね!本当にムリさせちゃったし、国の面倒ごとに巻き込んじゃったからね!満足してもらえると思うわ!」
「えっ!?そんなに気にしなくても···。いや、ありがとうございます」
「うんうん!特にアキくんは絶対喜んでもらえると思うものを用意させてもらったわ!」
「···それって何です?お金じゃないようですけど?」
「じゃじゃーん!アクロ温泉で私が冒険者やってる時に使ってた、そこそこ大きい温泉付き別荘よ~!客人用と併せて同じ作りが2棟あるから、アキくんとリオくん用、ハルさんとナナさん用に自由に使ってもらっていいわよ~。これが権利書とカギね!もちろん管理費はうちの税金だから気にせず使ってね~」
「ええ~~~!い、いいんですか!?そ、そんな素晴らしいプレゼント、いただいちゃって!?」
「あのね?キミたちは皇国の皇帝と皇女を救ったのよ?これでも少ないほうなのよね~。でも、一番喜ぶのはこれだろうなぁ~って思ったのよ。気に入った?」
「はい!最高です!!ありがとうございます!」
「おー、アキがテンションMAXだぞー。確かに温泉好きなアキにしたら最高だろうなー」
「···でも、いいよね。私たちも家なかったからちょうどよかったかもね」
「老後は最高の環境で暮らせそうね~。温泉入りながらのんびりっていいわね~」
「うふふ、みんな喜んでもらえて私も嬉しいわ!今回は本当にありがとね。当分は魔石なしで不便な皇国だけど、なんとか建て直して見せるわね!」
「はい!今後もよろしくお願いしますね、パスさん!」
···ちょっと会話が長くなっちゃったね!この後もいろいろとボクたちの旅の話をしたりして大盛り上がりだったんだ。
結局お茶会が終わったのは昼過ぎになってしまった。結構長居してしまったね。パスさんも即位後で忙しいのに『忙しいからこそこうやって癒されてるのよ~』って言ってくれたけどね。
皇城から戻ったボクたちは今後の事をハルたちと相談したんだ。
「リオ、皇国はちょっと混乱してるから観光せずに別の所に行こうか?」
「そうだなー。でも行く前にパスからもらった別荘を見に行くかー?」
「それもいいね!転移なら···、直接はムリかな?ここからだとリオの拠点だったら大丈夫だけど」
「じゃー、いったんオレの拠点に寄ってからアクロに行くかー」
「そうしようか!拠点かぁ~、懐かしいなぁ~。もうすぐで1年だもんね。ハルたちはどうするの?」
「···そうだね。懐はこの前の魔獣退治で潤ってるし、アクロの別荘もどんなのか気になるね。···もうしばらく一緒でもいいかな?」
「ハルがそう言うならあたしもついて行くわよ?ちょうど王国方面に向かってる最中だったし、いいんじゃない?」
「じゃあ決まり!明日出発で行こうか。パスさんにも伝えておくね」
ハルたちともうしばらく一緒に旅することになったよ。意外とハルとナナとも気が合うんだよね~。楽しい旅になりそうだ!
そしてパスさんにチャットで明日出発と書き込んだら、『私も一緒に連れてって!王国方面に仕事があるのよ~。往きは楽できるわぁ~』と、まるでヒッチハイク気分で途中まで一緒に行く事になってしまったよ···。
まぁ、それもいいか!気の合う仲間同士で旅をするってのも悪くないよ。
第8章 完
『···ははは。パスさんが、まさか皇帝になるだなんて最初会った時には考えもしなかったなぁ。···あの時もらった別荘が、···今ボクが寝ている家なんだよね。···大切に70年、使わせてもらったよ。···本当にありがとう。···もう顔を合わせてお礼が言えないのが残念だけどね。···でも、もうすぐ向こうへ行くから、会えたら改めてお礼を言おう。···素敵な家を、···ボクの終の棲家をくれて、···本当にありがとう』
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
若干まじめなお話になってましたが、いかがだったでしょうか?
なかなか書くのに苦労した章ではありましたが、作者が書きたかった事が書けたので楽しかったです。
第4章完結時に年老いたアキくんが住んでいる家をもらうエピソードでもありました。
皇帝が出るという事で、某山手線の英雄たちと戦うゲームネタばかりだったですね!
自由勝手気ままに皇帝が国をほったらかして出かけるのもその一つです。
ご存知の方でしたら『あ~、そういう事ね!』って思われたかと思いますが、『さっぱりわからん!』という方ははこの次のネタバレ集に書いてますので、ご安心下さい。
次のネタバレ集はお昼ごろ、設定資料集は夕方ごろ、そして夜からは第9章『久しぶりのレオナード王国 そして人生最大の転機!』全18話が始まります!
第9章はクライマックスです!って、お話はまだまだ続きますが、本作の最大の山場を迎えます!
この章とその次の第10章は作者の執筆が最もテンションマックスで書いたお話で、一番のお気に入りなんです。今でもしょっちゅう見返して作者本人が爆笑して癒されてます。
果たして読者の皆さまに受け入れられるかはわかりませんが、お楽しみいただければと思います。




