8-12.先帝の無念を晴らす!
本日は土曜日なので2話投稿しています。
ここは2話目のお話です。
『天気悪くて家で引きこもってたけど、ぷちきゅうのおバカな小説はまだチェックしてなかったよ!ここが今日の最新話だな!』って方は早朝に1話投稿してますから、先にそちらを読んで下さいね~!
「···そうそう、アキとリオが起きたら皇城に来てほしいって伝言があったんだった」
「皇城に?それってもしかして···」
「うん。パスさんとエビスさんが会いたいみたいだよ」
「···ちょっと行きづらいんだけどな~。最悪の展開になってしまったし、どのツラ下げて面会できるってんだよ?」
「···アキの気持ちはわかるけど、向こうからの要請だから行くよ。大丈夫。あの二人なら分かってくれるよ」
「わかった。軽く食べてから行こうか?」
そして皇城に着いた。さすがに厳戒態勢だったね。あんな事があったんだから仕方ないか。
「すいません。ボクはアキと言いまして、皇帝陛下から呼び出しを受けまして参上した次第なんですが、取り次いでいただけますか?」
「アキ様ご一行ですね?連絡は受けております。案内の者を呼びますのでしばらくお待ちいただけますか?」
「はい、よろしくお願いします」
それから待つこと10分程度、案内の人と思われる執事っぽい人がやってきた。
「アキ様、リオ様、ハル様、ナナ様でいらっしゃいますね?私は案内を仰せつかったヒズと申します。このたびは皇帝陛下のわがままを受け入れて下さり、感謝いたします。それではご案内いたしますのでついて来ていただけますか?」
「ヒズさん、よろしくお願いしますね」
ヒズさんの後についていくと、先日案内してもらった庭園にやってきた。パスさんと一緒にお茶を楽しんだ東屋には、すでにエビスさんとパスさんがいた。
パスさんがボクたちの姿に気づいて東屋から走って出てきたよ。
「アキくん!よかったわ~。無事でなによりよ!」
「パスさん···。今回は申し訳ないことしました。皇帝陛下を危険な目に遭わせただけでなく、パスさんも命の危険があったのに···」
「過ぎたことはもうどうでもいいわ!こうしてお互い無事だったことを喜びましょう!魔石なんて、また採掘すればいいんだからね!」
「でも!あの魔石は皇国にとって大事な物だったんでしょ!?···それを大魔王の手に渡ってしまったなんて、なんて申し訳ないことをしてしまったのか···」
「···ふぅ~。前にリオくんが言っていた通りだったわね。キミは極度に失敗を恐れ過ぎている。たぶん元の世界がそういう環境だったから仕方ないってのもあるのでしょうけどね。
アキくん?何度も同じことを言わせないで。過ぎたことはもうどうでもいい。それに、今回は皇国としてキミたちに無理なお願いをしてしまったっていう負い目もあるのよ。
ムーオを追い返した実力があるとは言っても、キミたちはよくやってくれた。全滅の可能性が高かったにもかかわらず、私たちはこうして全員無事に戻ってこれた。
それが、今回のキミたちが活躍してくれた『成果』なんだよ。
胸を張りなさい!!アキ!!あなたは危険だと分かっているのにもかかわらず、全力を尽くして私を救出に向かってくれた!···その事に心から感謝するわ」
「···うう、ヒック、パ、パスさん。ヒック、あり、ありがとう···ございます···。ヒック、ヒック」
「もう!···泣くぐらい悔しかったのよね?···だったら、気持ちの整理がつくまで泣きなさい。···そして、前を向いて歩くのよ。たまには立ち止まったって大丈夫。ここにいるみんなが、私たちがキミを支えてあげるからね!」
「ヒック、···は、はい。···お心遣い、ありがとうございます」
「ふふっ!いつもはあんなにしっかりしているのに、こうして落ち込んでしまっているのも新鮮ね。大丈夫よ。その気持ちがある限り、キミはさらに一歩先へ進めるわ。ゆっくりでいいからみんなで一緒に進んでいきましょうね!」
「はい。次は必ず助け出して見せます!」
「あら?また私が捕まる前提?ちょっと困るなぁ~」
「いや!そう意味じゃないですよ!?次はしくじらないって事ですって!」
「だ~か~ら~!しくじってもいいのよ!まだわかってないわね~。キミは万能じゃないし、神様でもないんだからね!『頑張れば何でもできる』って思っちゃダメよ!キミ自身ができる事を全力でやってくれたらそれでいいのよ?わかった!?」
「···はい!できる限りやってみます!」
「よし!それでいいよ」
パスさん、ありがとう。本当にこの世界の人たちは温かいよ。こんなボクでも必要としてくれている。その事実だけでも、ボクはこれからも頑張れそうだよ。
パスさんとボクのやり取りをみんな暖かい目で見守ってくれていた。そして、東屋にいた皇帝陛下も出てきたんだ。
「ふふふ、感動の対面だったな。改めて私たちの招待を受けてもらって感謝するよ。今回は大変申し訳ないことをさせてしまったね。皇国を代表した者として、ここに詫びよう。済まなかった」
「顔を上げてください!陛下が頭を下げてはいけませんよ!?」
「ははは!そうは言ってもこれは私個人としての気持ちでもあるのだ。それに、ここでの会話は公務ではない。あくまでプライベートでの話だから、そんなに気にせずともよい。どうも堅苦しい会話とかは苦手でね。謁見などは苦痛でたまらないのだよ」
「···皇帝陛下の本音が聞けてしまった。これは貴重な経験だね。今日もまた一ついい勉強になった」
「ちょっと、ハル!?それはあまりにも失礼よ!?」
「いや、気にしないで構わないよ。その方が私自身も気楽なのでね。さて、立ち話もなんだ。東屋でゆっくりとくつろぎながら話をしようではないか!」
そう言って皇帝陛下が東屋へボクたちを誘った。全員が着席したら先ほどのヒズさんとメイド二人がお茶とケーキのセットをカートで持ってきてくれた。
···ケーキは大きなホールのものだった。それを見たリオはよだれを垂らしだした!ちょっと!?場所を考えてよ!?
「さあ、今日は生還祭よ!礼儀なんか気にせずにいただいちゃってね!」
「おう!このケーキうまそうだなー!」
「だからリオ!よだれ垂らしちゃダメだってば!恥ずかしいよ!」
「ははは!リオくんはお菓子が大好きなようだな。帰る前にたくさんお土産を用意しているから、それも楽しみにしてるといいよ」
「マジかー!?ありがとなー!陛下!!」
「だから!失礼だってば!」
「いいのだよ。むしろこちらが感謝しないといけないぐらいだからね。元整調者として、この世界を救ってもらった救世主なのだしね」
「あんまり甘やかすと調子に乗るので、そのへんにしていただけるとありがたいんですけど···」
「うふふ、やっと元のアキくんに戻ったわね?さて、せっかくの場だし、正式な自己紹介をした方がよさそうね!
私はパスティー。ついさっき、この国の『皇帝』となったのよ。でも、キミたちは私の事を『パス』って愛称で呼んでね~。よろしくね!」
「···は!?こ、こ う て い?ど、どうして?」
「簡単に言えば皇国にとって最重要な魔石を大魔王に渡してしまったのでね。責任を取って退位することにしたのだよ。こうしないと民衆の怒りを買ってしまうのでね」
「そうよ。これからは私がこの国を治めていくの!けども、もう方針は固まってるから私が城で仕事する事もほとんどないのよね~。行政執務も任せっきりで問題ないし。だから肩書が『皇帝』ってついただけで、今まで通りいろんな国行って、好き勝手に税金でおいしいものを食べつつ情報を仕入れるわよ!」
「な、なんじゃそりゃーーー!!」
「それに、魔王軍の情報も仕入れて各国に高値で情報を売るのよ!大魔王め!この私を怒らせたからにはタダでは済まさないわよ!先帝の無念を晴らす!」
「···皇帝陛下ってすごいね。ほかの国じゃ考えられないアクティブさだよ」
「これが皇帝の伝統なのね~。すごい国だわ」
「まー、オレたちが見聞きした情報も伝えるから余計に貴重な情報になるだろうからなー。すでにオレたちも一枚噛ませた方針に勝手にされてるぞー···」
···まさかあの時の森でバッタリ出くわした冒険者のパスさんが皇帝陛下になっちゃうなんて。ちょっと信じられないんだけど?
結局救出作戦は失敗でしたが、全員命は無事でした。
パスさんとしては、無事であればあとはどうとでもしてやる!という気持ちが強かったので、アキくんをこのように励ましてくれました。
現実世界ではここまで寛容な環境はほぼないですね。少なくとも作者の周辺ではね。
最近はさらに殺伐としてきているような気がしてまして、こんなお話にしてみました。『失敗を認めるような社会にする』と言っておきながら実際はそうなってないのが残念ですね。余裕がなくて、あまりにも生きるのに必死になっちゃってるんだと思いますね。
そして、パスさんはついに皇帝にまでなってしまいました!もうね?書いてた作者がビックリしてますよ?ホントに目立ちたがり屋さんばかりで困ってしまいますよ。みんな?書く作者の身にもなってよ!?という悲痛な叫びはキャラたちには届かないのでした···。
さて次回予告ですが、皇国としての今後のお話と、さらにアキくんたちの今後のお話についてになります。パスさんは皇帝として、今回の褒賞を与えようと考えた結果、アキくんにとっては最高に舞い上がってしまうようなものを与えます。それは何だったのでしょうか!?
明日は出勤前の早朝に第8章最終話を投稿し、お昼休憩にネタバレ集、帰りの電車の中で設定資料集、夜に第9章第1話を投稿します。
仕事の状況によっては投稿時間がずれるかもしれませんがご了承ください!




