8-5.皇国の歴史と魔獣の襲撃
本日は作者が夜勤なので、朝に投稿しています。
夜の投稿はありませんので、ご了承ください。
これまた美味しい昼食をいただいて、少し食休憩した後、ボクたちはパスさんが手配してた魔動車に乗って都市の周遊に出かけたんだ。
ただ、そのクルマは運転手付きの展望車だったんだ。
「おー!アキの世界のクルマに比べて遅いけど、これもなかなか速いなー」
「ここだと道路交通ルールがきっちりしてなさそうだから、スピード出すと危ないよ。これでもちょっと速い気がするけど···」
「そうね〜。まだ導入してから5年程度だから、個人所有はまだ規制してるけどね。それに、我が国以外では普及してないから旅商人とかはわからないだろうし、当分は無理ね」
「···バスってクルマにも乗ったけど、魔力ってどうしてるの?」
「純度の高い魔石を使用して、使ってない時は周辺の魔力を吸収する魔導具で回復してるわ。
···あんまり大きな声で言えないけど、皇国が周辺国を併合してる理由がコレなのよね。魔石が取れないのよ」
「そういう事ですか。なんか魔力の回復が遅いなぁ?と思ったら、大気中の魔力が少ないからなんですね。あと、併合の理由って元の世界でも似たような事になってましたよ」
「そうなのね~。うちだけじゃなかったって事か。まぁ、できる限り穏便に済ませたいって気持ちは、『私個人』はあるんだけどね~。強硬派ってのもいるのが面倒で面倒で!私の敵ね!」
「···その発言もヤバいと思いますけど?ところで、どこに向かってるんです?」
「博物館ね。うちの歴史をまず知ってもらおうと思ってね」
「ピムエム皇国の歴史ね~。なんだか血生臭く感じてしまうわ」
「まぁ、否定はしないよ。どこの国も安全だとわかると欲が出ちゃうからね」
結構大きな博物館だったよ。
歴史以外にも開発した技術とか外交関係とかもあったよ。
ちなみに現在の皇帝は技術開発に力を入れてたみたいだね。経済発展という形で力を強めたようだね。
ピムエム皇国の皇帝は、代々力を入れるポイントが異なっているのが文化になっているらしい。
先代は学ぶことに力を入れて国民全体の学力の底上げを実施したそうだ。その結果が現在の技術開発につながって急激に発展したようだね。
他の代では戦闘に力を入れて魔獣退治に奔走したり、建築関係に力を入れて長い外壁を築いたり···、時代が要求する事に対してピンポイントに集中して政治を行ってたんだよ。
という事は、次代の皇帝は何に力を入れるのかな?そのポイントが現在の世の中にマッチすると、さらに発展するんだろうね。
これは『皇帝』という絶対強者がいて、善政を敷くことで成り立つ政治方式だ。元の世界だと大半が議会制民主主義になってるから、動きがなかなか鈍いって欠点があるけどね。
もちろん、皇帝が民衆の思いとかけ離れたり圧政を敷いたりしたら国自体が滅亡してしまうから、長所短所があるね。
うん、なかなかに興味深かったよ。その時の皇帝が何を考えて実行したのか、その意志の強さと民衆の団結力がいかにすごかったのかがね。
···ただね、ボク以外は全く興味なく適当にうろついていたよ。まぁ、仕方ないか。興味の対象じゃなかったらこんなもんだよ。
結局滞在時間は短かったよ。パスさんも、ちょっと残念顔だったね。まぁ、こればっかりは仕方ないよ。
次に向かったのは展望台にもなっている時計塔だ。トベルクに入ってから、結構遠くからでも見えてたんだよね。泊っているホテルよりも高くて、国内で最も高い建築物なんだそうだよ。
魔力で動くエレベータで最上階まで上がったんだ。さすがに身体強化でも階段は勘弁してほしいからね。
「これは高いわね~。あたしが飛ぶ時と変わらないぐらいの高さだわ」
「···うん。飛ばずにこの高さはないね。見晴らしがよくていい景色だね」
「おー、オレもここまでの高さは厳しいなー。かなり遠くまで見えるぞー」
「うん!遠くまで見えるね。東のあの山脈がインシュ山脈だよね?地図アプリみると、意外にもリオの拠点と直線距離だと近いんだね」
「そうだなー。超える事ができないから、近くても大きく迂回しなきゃならないからなー」
「でも、転移なら行けそうだよ?山とか関係なく『直線距離』のみ関係してるからね」
「あー、そういう事かー。地形によってはとんでもない事になるんだなー」
「そうだね。だから今からでも拠点に戻ることも、拠点からここに来る事もできるようになっちゃったね」
「アキくんって、とんでもない魔法使ってるけど、そんなビックリ魔法まであるのね···。私も使えたらなぁ~」
「ごめんなさいね。ボクのオリジナル魔法なんでね。何かの機会があれば一緒に転移しますよ」
「その時はお願いね!これでお仕事でかなり楽ができるわぁ~」
「はは···足代わりはダメですよ。あくまで『ついで』ですからね!」
そんなやり取りをしてると、ハルが何かに気づいたんだよ。どうしたんだ?
「···みんな、城壁の方で何かあったみたいだよ。何だろう?」
「ん~?何かしらね?魔獣の襲撃とかかしら?」
「アキ、魔獣レーダーに反応はあるのかー?」
「ちょっと待ってね。どれどれ···、うわっ!魔獣の群れが城壁に向かってやって来てるよ!」
「多分大丈夫だと思うけどね。緊急信号が出てないから通常戦力で問題ないと思うけど」
パスさんは落ち着いてるよ。魔獣の大群がやってきてるのに、通常戦力で十分と判断していたって事は、よくあるのかな?
そう考えていたら、城壁から黄色の狼煙があがり始めたんだ。あれってどういう信号なんだろうか?
「···ちょっとマズいかもしれないか。みんな、悪いけどホテルに戻るわよ。私も召集かかりそうなのよね」
「ボクたちはお手伝いしなくて大丈夫ですか?」
「気持ちだけありがたくいただいておくわ。なんせ、軍隊で対応してるから民間人を投入するわけにはいかないのよ。戦況が読めなくなっちゃうしね」
「わかりました。じゃあ、ホテルに戻りますね」
急いでクルマに戻り、ボクたちはホテルに戻ってきた。戻る道中で城から兵士を乗せたバスが何台も城壁に向かっていったのを見たよ。
街の人も、そのバスを見て若干不安がっている人もいれば、声援を送っている人もいた。避難をしないという事は、結構多いんだろうなぁ。
「ごめんね~。せっかくの観光を楽しんでもらおうって思ってたのに初日から狂っちゃったね。落ち着いたらまた再開するから、私が戻るまでゆっくりと部屋でくつろいでいてね!」
「パスさんはこれからどうするんです?」
「私はいったん情報局に戻るわ。最新情報が入ってるだろうし、軍と連携して来訪者の保護とかいろいろ手配してあげないとね!」
「わかりました。もし何かあればすぐにちーむッス!のチャットで連絡下さいね!音声入力にも対応してますから、声を出すだけで書き込めますよ」
「···あれってそんな機能もあるんだ。わかったわ!何かあったら連絡するわね~」
パスさんはそのまま部屋を出て行った。
出ていく前にボクの魔獣レーダーで魔獣の分布を確認していたよ。そのまま情報を軍に伝えて戦力の配置に役立てるようだね。
···しばらくすると、赤色の狼煙があがったのが窓越しに見えたんだ。なんだかマズい予感がしてきたぞ?
最近トラブルなかったから、もしかしてフラグ溜まっちゃったかな?
魔石のネタなどは現代社会におけるエネルギー問題とまったく一緒です。世界が変わっても人が考えることはあんまり変わらないって事ですね。
時代が求める政治を的確に行うというのも理想論です。実際はドロドロした汚い部分も多くあるはずなんですが、この国ではうまい事制御できているようです。
若干現代社会の風刺っぽい展開でしたね。どうしても国の歴史とかになるとこういった部分の説明を切り離すことができません。
まぁ、内容にしても第1章第5話で出た通り、『真実を伝える』ではなくて『いかに都合の良い事を伝えるか』なので、博物館の資料も手が加えられている事は否めませんね。
さて次回予告ですが、皇国を襲った魔獣が一部、街中まで侵入を許してしまいます。アキくんたちは街に被害が出ないよう立ち向かうのですが、普段のように戦おうとしていたら思った通りにはいかなかったのです。
いったい何があったのでしょうか?
明日はいつも通り21時頃の投稿を予定しています。お楽しみに!




