8-1.しばらくは一緒だよ
本日より第8章スタートです!全13話でお届けしますね。
今日と明日は朝と夜に1話ずつ投稿します。
グロー歴505年2月17日 曇
魔獣討伐の翌日、ボクたちはやっと渡し船に乗れる!と思ったらまだ乗船はできなかった。
1隻の船底に穴を空けられて応急処置をしたものの、まだ営業できる状態ではないそうで、残り1隻だけでの運行が可能になったけど、大幅な輸送力低下は避けられそうにないようだ。
それに、9日も足止めされて町は荷物と人で溢れかえっていたんだ。これは24時間ピストン輸送でも当分満載で時間がかかりそうだなぁ~と思ったら、ハルとナナからいい提案をされたんだ。
「別に船に乗らなくてもあたしが飛んでピムエム皇国まで連れて行ってあげるわよ?」
「えっ!?いいの?そうしてもらえると助かるよ!」
「···だって、報奨金はピムエム皇国の冒険者ギルドで受け取るんだから私たちと行く方向は一緒。だから、しばらくは一緒だよ」
「そういえばそうだったね。じゃあ、しばらくお世話になるね!よろしく!」
「こちらこそよろしくね~。じゃあ、早速向かいましょうか」
「ちょっと待って!パスさんに連絡しとかないといけないからね」
「そうね!話を先に通しておけばスムーズよね。わかったわ」
「ありがとう!えーっと、ちーむッス!のアプリを会議モードで起動して···、もしもーし!パスさん?聞こえます~?」
『おっ!?アキくん?おはよー!討伐完了したのかな?』
「はい、昨日のうちに討伐完了しましたよ。これが役所からの証明サインです」
『うんうん!今回も助けられちゃったなぁ~。アキくん!リオくん!いつもありがとねー。それで、いつ皇国に来れそう?』
「渡し船が1隻運航不能だそうなので、ナナさんに乗せてもらって飛んで行こうと思うんですよ。いつかは···、ナナ?国境までどれぐらいで行けそう?」
「だいたい2時間かからないわよ?そこから皇国の首都トベルクまでは3時間あれば着けるかな?」
「だそうです。急な話で申し訳ないんですが、いいですか?」
『大丈夫よ~。先日の会議で近くまで来た事は把握したから、もう国境警備隊には伝達済みよ。
『VIP専用審査場』に行ったら身分証提示だけですぐ入国許可を出すようにしてるから、混雑している一般審査場を通らなくてもいいわよ。
私はすでにトベルクにいるから、夕方に冒険者ギルドで落ち合いましょうか?その時に報奨金を渡すわね!会えるのを楽しみにしてるね~』
「はい!じゃあ、また後で」
さて、これで連絡完了だ。それじゃあ、ナナに乗せてもらってまずは国境で入国審査をしないとね!
ナナは漁港の広いところで青竜になってもらった。周囲にはたくさんの商人や旅人がお礼を言ってくれていたよ。
「ありがとなー!お嬢ちゃんたち!あんたたちと謎の着ぐるみのおかげで助かったよ~!」
「いや~、凄腕冒険者っていわれるだけあるわね!あの謎のかわいい着ぐるみはいったい誰だったのかしらね?」
「誰でもいいじゃねーか!あの着ぐるみは世を忍ぶ仮の姿ってね!まったく忍んでないけどな!わっはっは!」
「···早く行こうよ!このままじゃボクの心がもたないよ!!」
「···そんなに気にする事?誰もアキだとは気づいていない。だから赤の他人のフリをしていればいい」
「···あの姿になった事がないからそういう事が言えるんだよ。結構精神的ダメージが大きいんだよ!あれって!」
「はいはい、行きますよ~。みんな乗った?じゃあしゅっぱーつ!」
多くの人から見送られてボクたちはボレンの宿場町を飛び立った。
今回は飛んで湾を越えるけど、次は船に乗ってみたいね!この世界でも船旅は楽しそうだし、いつかはやるぞ~!
ナナは飛行速度が結構速かった。やっぱり飛行特化の一族だからなんだろうね。湾は30分程度で越えてしまった。
高度はだいたい200m前後ぐらいかな?そんなに高くないのは空気の密度の問題と低温を回避して防護用の魔力消費を抑えるためらしい。
時間はかかるけど、その分航続距離が飛躍的に伸びるらしい。元の世界の飛行機と違って、速度をあまり気にせずに『飛行する』という事に特化してるようだね。
「やっぱり空の旅は気持ちいいね~!風景がゆっくりと流れていくのがいいよ~!」
「···『やっぱり』って事は、アキが元いた世界にはナナより速い乗り物があったって事だね?」
「そうだね。飛行機って言って、鉄の塊が今の速さの10倍以上、高さはこの50倍以上の上空をいっぱい飛んでたんだよ」
「はぁ~、それはスゴイわね。そんな速さだったら簡単にこの星を一周できてしまうわね」
「そうだね。この星の大きさはちょっとわからないけど、元の世界だと2日あれば大丈夫かな?」
「···そんなに発達した世界からアキはやってきたんだ。不便になったんじゃない?」
「まぁ、確かに不便といえば不便だけど、あんまり気にしたことないかな?エーレタニアはこれが当然!と思えばね。慣れというのもあるかもしれないけどね」
「アキは適応能力が結構高いのかもね~。あたしたちもいろいろ飛び回ってるけど、戸惑うことは結構あるのよ?慣れない部分はたっくさんあるのにね~」
「いや、ボクも慣れないところはそれなりにあるよ。なんとかしてるけどね」
「そうだなー。でも一番慣れないのはホテルのフロントで揉めるところかなー?」
「言わないでよ!思い出したくもない場面もあったんだから!」
「···なにそれ?意味がわかんないけど?」
「···ボクが女の子と間違われてリオとのカップルだと思われてひと悶着するんだよ。ツインの部屋を希望してるのに強制的にダブルの部屋を案内されたりね」
「そーいえば女湯にも案内されたことあったよなー!宿場町の温泉だと必ずトラブルに遭うんだよな~」
「リオ?今日のリオはボクに何か恨みでもあるの?当たりがキツいけど?」
「そんな事はないぞー?ただ『事実』を二人に説明しただけだぞー?」
「それがダメなんだよ!またボクが精神的に参って魔法が使えなくてもいいの!?」
「あー、わかったわかったよー。悪かったよー、ゴメンなー」
「···でも、リオの言うこともわかる。確かに最初にアキを見た時は女の子しか思えなかったし、カップルと言われればその通りだと思ってしまう」
「確かにね~。あたしもアキが男の子だと知ってビックリしたんだもの。初見では見破るのは至難の技でしょうね~」
「···なに?みんなしてボクをバカにしてる?悪いのはこんな姿にした神様なんだよ!?文句は神様に言ってよ!ってボクが最初に大声で文句言ってやりたいよ!!」
「あらあら、ごめんなさいね!そういうつもりじゃないのよ。···まさかここまで気にしてるなんてね~」
「···うん、悪かった。この話はここまでね。もう国境が見えてきたよ」
ホテルのフロントじゃないのにこんなところでひと悶着しちゃったよ。
でも、やっぱりそう思われちゃうこの姿、なんとかできないのかなぁ~?
もうすっかり仲良くなってしまった4人でした。
激闘すると仲良くなってしまう定番ですね!
本当はこの話で皇国に着いてたはずなんですけど、キャラがしゃべり過ぎちゃって長くなっちゃうので分割したんですよ。ホント、よくしゃべるキャラたちですね~。
さて次回予告ですが、パスさんのおかげで入国審査はすんなり通ってしまい、首都トベルクに着きます。最近勢いのある国の首都は非常に技術が発展していました。どんな様子なんでしょうね?
次は本日夜に投稿します。お楽しみに!




