7-11.アキ、女の子に慣れてしまう?
今日と明日は朝と夜に1話ずつ投稿します。
グロー歴505年2月5日 雨
あれから3日が過ぎた。
今のところ胸は大きくなってきていないので、これで収まるだろう。
ふと、『心まで女になるんじゃないよな!?』とも考えてしまったんだけど、今のところは『ボク』のままだ。これはよかったよ。
アイリさんの言う通り、あれからは特に何もなくキャンプをして過ごしながらピムエム皇国に向かっていた。
行きかう人からのカップル扱いは変わらなかったよ。これは男の時も同じだった。
···気にしなかったら本当に良かったようだ。わざわざ男か女か確認される事は宿ぐらいなものだったね。少し気が楽になったよ。
でも!ボクは男なんだからね!!しつこいようだけど、これを常に確認してないと本当に女の子になってしまう気がするんだよ!!鬱陶しくてゴメンね!こっちも必死なんだよ!?
ああ~、精神的にキツイわ~。元の世界の人生を含めてここまで追い込まれたのは初めてだわ。これも異世界ならではの体験···、なのかな?違う気もするけど。
アレコレ悩みながら進んでいくと、潮の香りがしてきた。エーレタニアで初の海が近くなってきたようだね。
波の音も聞こえだしてきた!そろそろ見えるかな?と思っていると、某殺人ドラマの最後のシーンに出てくるような断崖絶壁の場所に出てきた。
ちゃんと手前にロープ張ってあるから落ちることはないよ!···犯人じゃないし、むしろ被害者だけど。
「おお~!これがエーレタニアの海かぁ~!元の世界と同じだけど、初めて見ると感動するよ~!」
「そーいえば海に来てなかったもんなー。ここからは海を左に見ながら北へ進んでいくから、いつでも見れるぞー」
「そうだね!海産物ってどんなだろうね!生き物自体違うだろうから楽しみだよ~!」
「オレも魚はあんまり食べるほうじゃないからなー。アキと一緒に楽しみにしとくぞー」
ちょっとだけ気持ちがウキウキしてきたぞ!
さて、地図アプリによると、このまま北へ2時間程度で宿場町があるようだね。今日はそこで1泊しよう!
漁港も併設のようだから、食料品店には海産物はあるだろうね。食料調達もしといて今後のキャンプの時の献立のバリーエションを増やすとしようね!
というわけで宿場町に到着した。
うん、小さな漁村に宿場町の機能を追加したような、こじんまりとしたところだね。
時刻は午後3時半。先に宿を確保してから買い物に行こうかな?まずは恒例のドタバタチェックインだ。
···もうダブル勧められたらその通りにしよう。今日はリオのモフモフぬいぐるみフォームが恋しくなってきたよ···。
「すいませーん!二人なんですけど、1泊1室空いてますか?」
「いらっしゃい!···まさかキミたちだけで旅してるのかい?何か深い事情とかあるのかい?おじさんが相談にのるよ?」
「いえ!そういうワケありじゃないですよ?世界中を巡る旅をしてる最中なんです」
「それはスゴイね!
さっきの確認はここの近くに断崖絶壁があってね。もう人生終了にしようとする人がまれにいるから、気になった人にはこうして声をかけてるんだよ。気を悪くしないでね。
あと、ここの街道は魔獣がほとんど出ないから安心だけど、それでも危険には違いないから、魔獣を見かけたらすぐに逃げるんだよ。
そうそう、二人部屋だね?あいにくダブルしか空いてないけどいいかな?」
「親切にありがとうございます。それでいいですよ」
「宿泊代は素泊まりで9500ジールだよ。···まいど!!これがカギだよ。酒場は6時から、朝は7時からだからね」
「ありがとうございます。お世話になりますね」
「いやー、小さいのにしっかりしてるなぁ~。受け答えもきっちりできてるね!」
「はは、そう言ってもらえると嬉しいですね!」
「じゃあ、ごゆっくりしてな!」
···ツイン空いてそうなんだけど、さりげなくダブルヘ誘導されたな。うまいこと客の不満を出させず、お互いにウィンウィンにしちゃったよ。プロだわ!
元の世界でも、ホテルによってはこういった対応することがあるんだよね。客の雰囲気でグレードアップしたり、空室あるのに断ったりね。
おそらくボクたちはカップルと思われてダブルをさりげなく推してきたんだろうね。
「ふう〜、ここも紳士的で楽だったよ。ここら辺は結構サービスがしっかりしてるなぁ~」
「まぁ、王国が馴れ馴れしかったってのもあるけどなー」
「宿だもん。落ち着いてゆっくりくつろぎたいから、こういった対応はありがたいね〜」
「···アキが男の子って主張がないだけなんだけどなー。これって女の子のままでいいんじゃねー?」
「(カチッ!)リオ、その言い方はないんじゃない?いくら冗談でもこればかりは許せないよ!?」
「わ、悪かったよー。あー、ちょっとだけデリカシーなかったな···。アキ、ゴメン!」
「では、罰として今日はモフモフぬいぐるみフォームでボクの心を癒やすこと!いいね!?」
「···あー、そういう事かー。ハイ!了解であります!!」
「いい返事でよろしい!!覚悟しろよ~!!」
「ハイ!···お手柔らかにお願いするぞー」
夕方、酒場で夕食を摂ることにした。やっぱり漁港があるから海産物がメインのようだ。しかも獲れたての魚や貝をその場で網焼きにしてくれるようだね!これはうまそうだよ!!
「おっ!?かわいいカップルじゃないか!どうだい?今日取れた新鮮な海産物だ!好きな品を注文してくれ!席に置いてる網で好きなだけ焼いて食べるんだぞー!」
「じゃあ、おじさん!このセットちょうだい!2人前でお願いね」
「まいど!楽しんで食べてくれよな!」
おじさんから買った新鮮な海産物を席に持っていって焼き始めると、磯の香りが強く感じられた!こっちの世界の海も一緒だね。
「さて、お味の方は···うんまーい!!ちょっとお酒飲みたくなってきたなぁ~。でも、今はちょっとガマンかな?元の状態に戻ったら解禁だな!」
「そうだなー。酒はちょっとガマンしとけー。いやー、それにしてもこの貝ってうまいなー!あんまり食べる機会がなかったからなー!新鮮な体験だぞー」
「これにしょうゆがあったら最高だったんだけどなぁ~。存在しないのが残念だよ」
「アキの記憶の中のバイキングで使ったアレかー!確かにあの味はこっちにはないなー。作り方は知ってるのかー?」
「いいや、材料は豆を発酵させるってだけしか知らないよ。どういう豆か、どうやって発酵させるのかもわからないから再現できないね~」
「そうかー。もうアキの記憶の中へは行けないからどうしようもないなー。まあ、なくてもうまい事には変わらないしなー」
こうして楽しく海産物を食したその夜、リオはモフモフぬいぐるみフォームで抱きぬいぐるみになってもらったんだけど···。
寝入ってから15分でリオが激しく寝ボケだした。
「リオ?ちょっと動かないでよ。ボクがベッドから落ちちゃうよ!」
「んん~。ムニャムニャ」
···言ってもムダのようだ。仕方なくリオの反対へ移って寝ようとすると、今度はボクの上にのしかかってきた!
「リオ!!お、重いぃ〜〜!!」
そう、いくら小さくなったとはいえリオはドラゴンだ。ドラゴン族の中でも最弱と言われていたぐらい筋肉量は平均以下でちょっと引き締まっている程度でも、人よりもはるかに筋肉量はあるんだ!
竜モードの時は少なくとも100kg近くはあるぞ!
なんとか身体強化6倍で耐えるボク。でも、寝てしまったら身体強化は解けてしまうから、その瞬間にボクは押し潰されてしまう!!
「リオぉ~~!!のしかからないでよぉ~!!キツイ!キツイって!!」
「んん~。ぐぉーぐぉー」
「いい加減どいてよ~!ボクが潰されちゃうって!!痛いって!!」
···結局リオは朝まで起きなかった。なんとかモフモフのリオから這い出たボクは部屋にあった予備のふとんを拝借して床で寝ることにしたんだ。
これまで一緒に寝たことあったのに今日はいつもよりも酷かったよ。どうかしたのかな?
今回のリオくんの寝ボケは酷かったですね!次はどんな酷い寝ボケを披露するのでしょうか?
ちょっとした小ネタではありますが、お楽しみいただければと思います。
さて次回予告ですが、寝ボケたリオくんのせいでアキくんはあらぬ誤解をされてしまいます!
さらに何者かが仕掛けたワナに知らず知らずハマってしまうのです···。
次は本日の夜に投稿しますので、お楽しみに!




