7-10.えっ?何か問題ありますの?
朝食後、ボクはちーむっス!のアプリを起動してアイリさんにつなげたんだ。
「アイリさん!早朝からごめんなさい!緊急で相談したいことがあるんです!」
『何がありましたの?アキさんがそんなに慌てるなんて、よほど異常な事態が起きたと思われますけど』
「実はボク···、女の子にされちゃったんです!!」
『···は?···えっ?···何か問題ありますの?』
「···え?···い、いや!大問題ですよ!?体が女の子にされちゃったんですよ!?最大の危機です!!」
『···ああ、そうですわね。アキさんとしては最大の危機なんでしょうけど、いったい何があったんですの?』
「実は昨日、混浴温泉で見知らぬ女の人から女湯に無理やり連れていかれて体を洗われちゃったんです。そして今日起きたら···、なかったんですぅ···」
『···どうしてそんな状況になったかは全く想像できませんが、最も怪しいのはその女ですわね。その時に邪法をかけられた可能性がありそうですわ』
「リオも同じ意見でした。ボクは真の名を話していないのにこんな状況になっちゃったので、邪法についてはアイリさんの方が詳しいかな?と思って相談したんですよ」
『なるほど。確かに邪法には真の名を知られなくてもかけられるものは存在しますわ。ただ、効果が非常に微妙ですの。
病などの命にかかわるものはなくて、行動をちょっとだけ鈍らせたり魔法の威力をちょっとだけ弱らせたりといった、デバフの魔法よりも軽い症状が多いんですわ。
ですので、ほとんど使われずに廃れてしまった邪法もあるそうですわ。
しかし、今回のように男の子を女の子に変えてしまう邪法なんて聞いたこともないですわね』
「···ということは、ボクはこのまま女の子で人生を過ごさないといけないんでしょうか?」
『それはないと思われますわ。先ほど言ったように効果が微妙なんですの。永続はさすがに真の名を知られないといけないぐらいのものですからね。
ですから、そんなに長続きしないはずですわ。
ただ···それがいつなのか?がわからないですわね』
「···しばらくは女の子で過ごす事になるんですね?」
『これは失礼な話で申し訳ないですが、アキさんは元から女の子にしか見えないので、特に問題はないかと。普通に過ごして問題ないかと思いますわよ』
「···え〜!?それが嫌なんですけど!?···わかりました。納得できないですけど、どうしようもないんですよね?」
『下手にいじって永続になるよりかは時間かけて解除するのが賢明でしょうね』
「わかりました。ありがとうございました」
『お力になれずすみませんわ。リオ!ちゃんとアキさんのケアをするのですよ!』
「おう!任せとけー!」
『···ちょっと心配ですわね〜』
というわけで、すぐには男に戻れないそうだ。
手立てもない。どうしようもない。
さっきフロントでリアさんについて聞いてみたところ、『そんな人は宿泊してないし、日帰り入浴にも来ていない』とのことだった。
リオが言うには、記憶を操作されたかフロントを通らずに侵入してボクを狙ったか?らしい。
つまり、後を追うこともできなくなってしまったんだ。
くっそ~!!次会ったら復讐してやる!!
こんな目にあわせてタダで済むと思うなよ!!
と、かつてないほどの怒りと憎悪を抱くと···、胸が痛くなってきた。
イカンイカン!悪の心を持っちゃダメだ。落ち着こう。
···それでも胸が痛いな。気持ちの問題でもない?
物理的に痛いぞ?どうなってるんだ?と思ってシャツの内側を見ると···
ちょっとだけ胸が大きくなっていた。
···見てはいけなかったのかもしれない。
本格的に女の子になりだしている!!
マズイ!!これはアカン!!
えっ!?なんでこんなに成長してるの!?背伸びないし、成長が遅いのかな?って思っていたけど、こういう成長はダメだって〜!!
どうしよう!?ショックで外に出たくないよ~!
でも、温泉にこの格好で行ったら男湯には入れない〜〜!
女湯に堂々と入るのも勘弁して欲しいよ~~!!
結局、ぶ厚めの服を着てチェックアウトした。
困ったなぁ~。このまま皇国ヘ行っても身分証の性別が違うから審査に引っかかるかもしれないぞ?
それまでに治さないと···、と思ってスマホを見ると、身分証アプリから通知が来ており、
『性別変更に対応しました』
って表記が!!
···神様!?そんなアプデはいらんわ!!貴様、見ているな!?
はぁ~~っ···。もうどうでもいいや。なるようにしかならんわ。あきらめよう。打つ手ないんだもん、仕方ないよ。
とりあえず、時間はあるんだからゆっくりと進むことにしたよ。
街道を歩いていると、そこそこ多くの人の往来があった。この世界では、会えたら一言あいさつするのがマナーだ。
これは元の世界の登山の世界でも一緒だね。何かあった時にあいさつをしている事で印象が残って捜索しやすいんだ。それと同じだね。
···ただ、ボクたちの場合はかっこいいドラゴン族の少年とかわいい人族の少女というアツアツなカップルに見えるようで、向こうから熱烈に声をかけられまくった。
みんなボクたちの印象は強烈に残っているようだった。
···確かに今のボクは女の子だよ。確かに『今は』カップルと思われても仕方ないよ!?異性になっちゃったんだから···。
でもね!ボクが女の子になってもリオを彼氏だとは思わないよ!?同性の気の合う相棒なんだよ!
···これは精神的に参るわぁ~。邪法って、ホントに嫌らしいのが多いんだなぁ。自分にかけられて初めて実感したよ。
誰だよ!?こんな陰湿な魔法考えた人!
···あはは!いいわねぇ~。とっても楽しんでもらえて、お姉さんは見てて嬉しいわぁ~。さてお遊びはここまでにして、そろそろ頼まれたお仕事をしましょうかね~。
バイバイ、アキくん!今度会った時はもっと楽しませてあげるわね!
アイリさんに相談しても現状維持というか、そのままでも問題ないんじゃね?という回答に絶望してしまうアキくん。
追い打ちをかけるように胸が膨らんでしまい、さらにドン底へ落されてしまいました···。
さらに!神様からのつーこんのいちげきが!!
実は、神様はこれでも心配してるんですよ?腹抱えて笑ってますけど···。いい性格していますね。
さて次回予告ですが、性別的には正しくリオくんとカップルっぽくなってしまったアキくんですが、宿場町で泊まるとダブルの部屋でした。···何も起きない事はなく?
明日と明後日は土日なので、朝と夜に1話ずつ投稿しますので、お楽しみに!




