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作者: 神乃轟介

 

 金原美紀二十三歳、動物愛護団体プロテクトオールアニマルズ、略してpoa所属。関西を中心に肉食反対、動物の権利保護を訴える活動をしている。最近では大阪市狭間山市の公園でpoaの美紀同様二十代のメンバーを中心に集会を開いた。集会の内容としては、屠殺場の写真でパネルを作り動物を殺しその肉を食べることの残酷性を中心に、いかに人間が動物たちに対して身勝手なふるまいをしてきたのか、poaの解決策の提示をおよそ一時間を目途にわたって行うはず…、だったがどこかから苦情でもあったのか、公園に警察がやってきて強制的に集会中止の申し入れをし、poaの若手メンバーは大人しく引き下がった模様。その理由は団体としての主張をする場所は探せばまだまだいくらでも見つけることができるのと、団体の信条思想に対し反感を持つ人間が存在したからこそ、警察の中止申し入れがあったわけで、そうした人物がいる場所でこれ以上集会を行うこ とは意義を失うと判断されたので、集会は取りやめにされた。

 そして、僕が新聞やテレビで報道もされないであろう出来事について割と詳しく知っているのかと  言えば、この金原美紀が妹だからである。僕が兄貴ってこと。


 さて、ここで皆さんには旧約聖書の冒頭部分を思い出していただきたい。七日間で、世界、動物、人間の順に創造されたとある。世界は動物のために、世界と動物は人間のために造られた人間は世界と動物の利用を認められている。創造主であるところの神はそれでよしとされたのだ。

 もう一度繰り返す。人間は動物の使用許可を、人間という存在として初めから得ているわけだ。肉

 食は、人間の一方的な暴力ではなく大切な営みと言える。

 何が言いたいのかって言えば、肉食反対というのは聖書に対して反対する行為、つまり反キリスト  的行為だと僕は言いたいわけだ。世にはびこる肉食反対論者、ないしはヴィ―ガンといった連中。  全員がそうとは言い切れないが、あいつらは基本的にサタニストの疑いが大いに濃厚であると思う。

 これ以上地球上にサタニストたちを存在させることには反対の立場だ。正直にいえばパージ、粛清

 するしかないと思う。でも美紀に至っては実の肉親である。幾ら彼女が悪に染まっているとの理由  で、手にかけるのは忍びない。僕自ら手をかけるのは、やはり忍びない。一体僕は、どうすればいい

 のだろう?


 殺害、違う、殺人、違う…、揺れに揺れて一週間以上が過ぎてしまった。実行は今晩、美紀が眠って

 から始めることにした。poaのやつらは後回しにする。美紀は確か、月間の予定表を持っていたはず。

 集会の開催日と、場所はそこに書き込まれているはず。それを見ればいい。

 部屋の明かりを消し、目を開けたまま美紀が眠るのを待つ。隣の部屋では、いったいなにをしてい  のか、美紀は動き回っている音がこちらの部屋にまで響いてくる。

 待っている間、僕も眠ってしまいそうになる。自分のいびきで目を覚ます。危ないところだった。  起きあがろうとすると、体が全く動かない。頭が、真っ白になった。何が起こったのか?耳元で、

 ささやく声がする?誰だ、何が起きた?

 知ってるんだから。聞こえるか聞こえないかぎりぎりの小さな声。僕の意識は、永遠の暗闇に落ち

 ていった。



 

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