太陽と謎の女。
蝉が耳にこべりつくほどの煩さでなきわめいていて、何かが風で揺れているのも感じた。
この音はブランコだろうか?
風が強いのかそれとも誰か乗っているのか激しく揺れている。
その煩さでさえ隆一は嬉しく感じた。
その声が聞こえると言う事は地上に帰ってきたということ。
隆一は嬉しさに心を踊らせながらゆっくりと目を開ける。
目を開けた瞬間、明るいというか眩しい日光が俺の目に入る。
その日光で俺は完全に外に戻ってきたと理解した。
「やったー!!ありがとう太陽!蝉!!」
以前は鬱陶しがっていた夏の日光や、蝉の囀りさえ嬉しくなるほど俺は嬉しかった。
「お母さんあの人大丈夫?」
「しっ、見ちゃいけません。」
隆一の謎の歓喜の声に近くを通りかかった少年と母親はそそくさとさっていく。
そんな冷たい視線ですら隆一は嬉しかった。
なんせ隆一がいままで受けてきたのは冷たくはあるが、冷たい殺意のみ。
殺意がこもっていない目なんて優しいんだろう。
そうとまで錯覚できてしまうほど過酷な環境に身を置いていたのだなと改めて生き残った自分をほめる。
いや、生き残っていないのかもしれない。
あれは夢だったという可能性もある。
あまりの暑さに倒れ、幻覚をみていた。
それの方が現実的だ。
「そうだあれは夢だじゃねぇとあんなでかい化け物倒せねぇよな。」
今思えば隆一はどう足掻いても勝てないであろう化け物達を倒してきた。
それが夢だったならば尚更納得がいく。
「夢なんかではないぞ人間。」
そう言い放ってブランコに乗っていた真っ黒な服を着たピンク髪の少女がブランコで助走をつけ、キックというか飛び蹴りを仕掛けてくるこんな事をするのはあいつしかいない。
メドピアだ。
それより隆一はそれを防ごうと防御を考える。
そうすると、
隆一の脳にはそれは恐ろしく遅く、止まって見えた。
隆一の脳が認識したと同時に俺の体はその蹴りを受け止めていた。
以前の隆一なら出来ない芸当だ。
「これでわかったじゃろ?あの出来事は本物じゃ。それより速く我の足を下ろさんか!そ、その丸見えじゃろうが!!」
「何あの人女の子のパンツ覗いてるっていうかガン見してるわ!!痴漢よ!!ロリコンよ!!」
隆一は今、女の子の足を掴んで、女の子をみている。
その絵面はまさにフィギュアのパンツを見るオタクのそれであった。
それを生身の人間でやっているのだ。
紛れもなく変質者だ。
「変質者ですと!?」
おばさんの大声に気づいたのか、近くにいたガタイのでかいお父さんとおぼしき男が俺を捕まえるために走ってくる。
ここで捕まれば人生は終わりだ。
隆一は少女を下ろし、急いで逃げる。
「待て人間!!我を置いていくなぁ!!」
その大声が公園を木霊する。
「ターゲット発見しました。ムキムキマッチョマンに追われているようです。」
「え?じゃありませんよ本当ですよ。どうしますか?」
「もう少し待機?はい分かりました。」
「はぁ、こんな暑い日に捕獲任務をする身にもなってほしいわよ全く。」
金髪の黒い服を着た女の子が額の汗を拭く。
無事地上へと帰りついた隆二。
彼に平穏が帰ってくるのかと思いきや、そんなことは無かった。
突如現れた黒い服をきた金髪の女。
そして彼は真実を告げられる。
次回 第二章 黒い外郭と氷。
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