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問答と答え

 隆一は再び足を進める。

その足はさっきまでの恐怖は無く、素早く進める。

キングとの戦いが彼に勇気をくれたのかよくわからない。

だが一つだけ分かっていることはこの先には色々な試練があるのだろうが、キングに勝った隆一に立ち止まる事は許されないということ。

あの戦士の命を貰ったのだ止まることは出来ない。


「一度の戦いで男は成長するか...」


隆一の成長をみて、メドピアは神妙な顔をしていた。

隆一に何か思うことがあるのかそれは分からない。

だが、先ほどまで感じていた退屈そうな顔は無くなったことに隆一は喜ぶ。

メドピアとの契約は奴を楽しませることなのだから。


「ここで階段は終わりか...」

「何怖がってるんだよ!進むって決めたんだろ?このチキンが!」


フクロウが隆一を煽る。

確かにそうだ。

隆一は進むと決断した。

そこにゲームの為とか生きたいとかそういったものはもう無くなっていた。


「戦士への開花を喜ぶべきか否か...」


隆一は扉の前にたち、開ける。

その先には大きな女神の銅像が建っていた。

何故だがその銅像がこの迷宮の主の物だと分かった。

 

「よくここまで来た人間嫌、戦士よ。私は戦士として開花したこと嬉しく思う。」

「もう終わりか?二つしか乗り越えていないが。」


かの大英雄ヘラクレスは12の試練を乗り越えたという。

隆一はそれに比べてたった二つ。

それで認めてくれるのはさっきまでの主とは違うと感じた。


「私が欲しいのは勇者ではない戦士だ。それに貴様はあのミノタウロスを倒し、戦士と認められた。

それは偉業とも言えるだろう。

今まで来たものはミノタウロスを倒しはしたがミノタウロスから認められた者は居なかった。」


あの戦士キングに認められるということはそれだけ凄いことなのかと隆一は少し困惑するが、すぐに納得する。

彼は間違いなく歴戦の戦士で、誇り高き者だ。

最後まで己の誇りとも言えるタックルをかましつづけた。

確かにその戦士が認めるものは少ないのだろう。


「納得したか? それなら戦士に最終試験を課す。」


 最終試練。

隆一は緊張する。

この主はどんな試練を課すのか。

隆一はミノタウロス以上の試練を覚悟する。


「最後の試験は私との問答だ。」


問答?

少し拍子抜けだった。

強敵との戦いや難しい問題を予想していた隆一には優しく感じた。

だが、その油断を感じ取ったのか。


「問答といっても間違えたものであればその首を●●●に捧げる事になる。」


その言葉から感じられるのは、嘘などではない。

こいつは本当に間違えば首を捧げるつもりだという凄みだった。

隆一は固唾を飲む。

どんな問いを課すのか。

だが出されたのは意外な問いだった。


「戦士よ。お前は何のために戦う?」

「何のため...」

 

確かに何のために戦っているのだろう。

生きるため?

嫌、ミノタウロスのキングとの戦いの最後には命などどうでもよかった。

名誉の為?

これも違う。

 

「時間は3分だ。それまで考えよ。」


神殿の主の声が消えていく。

だが、そんなことは何とも思わなかった。

戦いの理由。

確かにそれは必要だ。

理由のない力はただの暴力だ。

なら俺はただの暴力を振るっていたのか?

俺の頭の中にミノタウロスがよぎる。

彼がそんな事なら認めるはずがない。

ならなんだ...

俺は後ろからの視線を感じ振り替える。

メドピアが俺を見ていた。

俺がどんな答えを出すか彼女も気になっているようだ。

思えば俺が生きていられているのは彼女のおかげだ。

彼女が俺を助けなければ俺はあのゴブリンに殺されていた。

それに彼女が力をくれなければミノタウロスに戦士と認められなかった。

なら...


「おい主!答えを出したぞ!」


隆一は叫ぶ。

その叫びは神殿を木霊する。

奥まで届いたと思ったその時、


「出たか思ったより早かったな。なら答えを聞かせて貰おうお前は何のために戦う?」


そんなもの決まっている。


「俺はメドピアのために戦う。彼女が退屈を嫌悪するなら俺がそれを無くしてやる。」


「ッ!」


メドピアは隆一の答えに顔を赤くする。

端から見れば告白ともとられない言葉だが、そんなことはどうでもよかった。

彼女に人生を貰ったんだ。

なら俺も人生を捧げよう。


「ハッハッハッ!! 戦う理由が愛か!? 全く●●●●●●●かお前は...気に入ったぞ!己の為ではなく愛する者の為に戦うそれもありだな!相手が●●●●●という事が気に食わんがよかろう。」


主の大笑いの後視界が歪み始める。


「そんな合格の仕方があるか!●●●!!我を辱しめるために合格にしただろう!」

「そんなわけあるか!私を誰だと思っている●●●の娘だぞ!!そんな事せぬわ!」

「●●●の娘だから信用出来んのじゃ!!」


彼女達が争っている声もどんどん遠くなっていく。


「そうそう忘れておった。お主にはおまけもつけておく。●●●●●はめんどくさい女だがよろしくな!」

「誰がめんどくさい女じゃ誰が!」

  

よろしくお願いされなくてもやるよ。

隆一の意識が消えていくその時、声が聞こえたような気がした。


『●●●●をよろしくね。●●●●●重いだろうけど愛してあげて。』

 

 その声は二人のような一人のような不思議な感覚だった。



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