対人戦と氷
「逃げるわけには行かない!」
隆一は恐怖を隠しながら足をすすめレンに向かっていく。
「必死に恐怖を圧し殺しているな。」
「あぁ、怖いさ。お前が圧倒的に強いことは俺の直感がビンビン伝えてくるからな。」
それを感じ取ったようでレンは隆一の恐怖を看破する。
「なぜ力の差を感じているのに向かってくるのだ 今日出会った少女の為に。」
「友達なんだよ 友達が侮辱されて傷つけられて怒らないほど俺は屑じゃねぇ。」
「友だと?貴様はこいつの何も知らないのにか?」
「なにもじゃねぇよ。こいつはメドピアと本当に楽しそうに笑ってた、それだけで十分だ。」
「馬鹿なのか?」
「そうかもな。」
「馬鹿に何を言っても無駄か。こんなのを警戒するとはお頭も..ッ!」
「油断大敵だぜ! 力差は圧倒的だからな、卑怯だが先制攻撃させてもらうぜ!」
隆一は目を離した一瞬に攻撃を仕掛け、両手でラッシュをしかけようとする。
「な、なんだこれは!?」
だが、一発目の拳がヒットした瞬間。
腕が突然凍り始める。
「油断?卑怯?させてやったのよ!お前が契約者と分かっていたからな。ちょこまかと動かれたら厄介だったからな。俺の能力で腕を固定させてもらった。」
「う、腕が凍りついてやがる!それにあいつの体と接着されたみてぇにピッタリくっついてやがる!」
「無理に動かさない方がいいぞ 腕を失いたくなければな。」
凍った腕を剥がそうとすれば腕がどうなるかは隆一でも知っていた。
「罠に嵌められたって訳か!」
「さて今度はこっちの番だな!」
そういい、今度はレンが隆一に殴りかかる。
そのスピードは普通の人間のラッシュと同じだが痛みは鋭かった。
(いてぇ、本当に人間の拳なのか?これも契約の力なのか?俺の攻撃もこれぐらいの痛みなのか?)
「ほらどうした!来ないなら続けていくぞ!」
「クッ!防御するしかねぇ!」
(い、今分かった!こいつは攻撃が当たる一瞬 氷でグローブのようなものを構成している。
氷の塊で殴られているわけだから痛いし、凍傷にもなる。これ以上くらうのはまずい!だが動こうにも腕が固定されているから動けない!足で攻撃しようものならまた凍らせて今度はだるまになっちまう!)
氷で腕をコーティングすることでメリケンのような突起を作り、痛みを上乗せしていた。
それに攻撃をする瞬間に出すことによってリーチも少し伸びて、ガードされにくい。
レンの頭のよさを実感させられた隆一だった。
「どうした足で攻撃してこないのかぁ? このままじゃ、俺に殴り殺されるか凍死しちまうぞぉ!」
(こいつ俺が攻撃しないことを良いことに殴り続けてきやがる。まずい。腕の感覚が無くなって来やがった。どうにかしてこの状況を抜け出さなければ!だが腕が使えない状況でどう脱出する?)
「!? 動くんじゃねぇ!」
隆一はテーブルに体重を預け、無理に起きあがろうとする少女を止める。
「ほぉ、人形。まだ起きあがる体力があったか。」
否、そんな体力はあるように見えなかった。
テーブルの物を落としながらやっと立ち上がった。
「これ以上私の友達を傷つけないで!」
そういい彼女はフラフラの身体をなんとか動かしなぐりかかる。だが、その動きは凄く弱々しかった。
「ほぉ、銃しか使えないお前が殴りかかってくるか?」
そんなフラフラな攻撃では痛みなどまるでなく、 レンは何も感じていないようだった。
「そんな華奢な腕で俺を攻撃すればこいつより速く凍りつくのは分かってるよなぁ?」
「クッ!」
今度は少女の身体が凍り始める。
その速度は隆一のものより早かった。
(状況がさらに悪くなっちまった!嫌...そうか!)
隆一は少女が床に散らばらせた物を見て、おもいつく。
「ゲーセンでタバコを吸う奴ってよぉ、嫌だったが!」
「?突然何を!?」
「感謝だぜ!」
「こいつタバコの吸い殻を蹴りあげてスプリンクラーに!!」
タバコの温度を感知し、スプリンクラーが鳴り響く。
「氷がみるみるうちに!」
レンのいたぶろうという性格の悪さがあり、氷はゆっくりの速度で凍るように調整していた。
だが!その温度が影響し、氷は水でも溶ける温度だった!
「だが氷が溶けてどうだというのだ!貴様はもうボロボロ!よけることはできない!」
「あぁ、よけねぇぜ。避けちまったら捕まえられねぇからなぁ!」
「こいつ!俺の氷のメリケンをつけて攻撃することを利用しやがった!」
水で濡れている隆一に氷はピッタリとくっつく。
「凍りつくのはどんな気分だい?最悪だろ?」
「だが!俺の能力を解除すれば!」
レンは能力を解除し、氷があっという間に溶ける。
だが、その解除する隙を見逃さなかった!
「あぁ、だが隙は出来た!」
(こ、こいつまた凍りつくのが怖くないのか?それにさっきよりスプリンクラーのせいで手の温度が下がってるんだぞ!)
レンは隆一の狂気というか勝とう意思に恐怖する。
「確かにお前を殴り倒すパワーはこの腕じゃだせねぇだろうが!俺は一人じゃねぇぜ!」
「我と!」
メドピアが待っていましたと言わんばかりに起きあがり、
「私も!」
少女も渾身の気力を振り絞って起きあがり三人でなぐりかかる。
その三人の攻撃を受けたレンをUFOキャッチャーへと激突する。
「やった!おい大丈夫か!?アンボニー?」
隆一は倒れた少女を心配し、かけよる。
「...ヤメ...アヤメ。 私の名前。」
「名前が言えるぐらいなら大丈夫だな。すぐに救急車を!?」
安心して携帯を取り出そうとしたそのとき、周りが、吹雪はじめる。
「よくもよくも俺に攻撃してくれたなぁ!」
顔に血管を浮き上がらせたレンが立ち上がり、隆一達の方に向かってくる。その手にはさっきまでとは違い、氷の槍が握られている。
「な、なんだあの槍!?」
「あれは神器!?あやつその段階まで!」
メドピアが神器と叫んだがそれを聞き返す余裕が隆一にはなかった。
「油断していた。お頭がお前を警戒しろと言っていた意味が分かったよ。ここからはほんきでやらせてもらう!」
三人が今まで本気ではなかったという恐怖を感じていたその時。
突然氷の槍が溶けはじめる。
「子供相手に刃物は駄目だろうが坊っちゃん。」
その声の先にはアイスをくわえながら歩いてくるナイスミドルな中年男性が。
「だ、誰だ!いつからそこに!」
四人とも気づいていなかった存在にレンは驚き、声をあらげる。
「ただの通りすがりの優しいおっさんさ。子供の喧嘩なら見逃してやったがそこまでいくと見逃せねぇなぁ。」
「な、この感じ!お前もセカンドコントラクトを!?」
「やってや...チッ!」
再び槍を出そうとしたその時、電話がなる。
「あぁ!?帰投しろだと!?そんなもん無理に!
命令!?わっーたよ。帰還する。」
レンは吹雪を止めて槍も消し、臨戦態勢を解除する。
「てことで決着はまた今度だ。お前名前は?」
隆一の方を見て、名前を聞くレン。
「な、中川隆一。」
「隆一な覚えたからな。俺の名前はレン。次は本気でやらせてもらうぜ。」
レンが名乗って去ったと同時に二人は糸が切れた人形のように倒れこむ。
「なん...とか...」
「大..丈..夫」
「二人とももう限界か。無理もない。セカンド相手にここまで善戦したんだ。」
おじさんは二人を肩に背負い移動しようとする。
「どこに連れていく!?」
メドピアは突然背負いはじめたことに驚き質問する。
「おめぇもついてくるだろ?女神さんよ。」
「!?我の正体を!」
「あぁ、なれてるから感じで分かるんだ。安心しな悪くはしねぇよ」
(逆らえる相手じゃなさそうだしのぉ)
こいつはさっきのやつより数倍強い。
そうメドピアの感が告げていた。
それに自分も二人ほどではないがさっきの戦いで消耗している。
「おいてくぞ。」
どうするか考えているメドピアを置いて先にいこうとするおじさん。
「こら待て!」
「セカンドランクとマスターランクを感知しました。」
目を機械で隠された少女が博士風の男にそう淡々と告げる。
「マスターだと!?あの爺が動いたというのか!?
社長も感じただろうし、どうすれば...穏便に回収を命令したのに戦闘などしおって!」
予想外の出来事に苛ついたのかテーブルを叩き、怒る。
「ほぉ、アラヤが久々に動いたか。」
黒井はワイン飲みながら嬉しそうな顔をする。
「嬉しそうですねマスター。」
その黒井の嬉しそうな様子を見て、ワインの追加を注ぐメイド風の女性がそう呟く。
「マスターではなく社長と呼べと何度も、まぁ、久々に莫逆の友が元気にしていると分かったからね。」
「友...ですか?敵同士なのに?」
メイドはよく分からず?をかかけでいる。
「あぁ、おかしいだろ?」
そういいながら笑い声をあげる黒井。
「いえ、そんな。」
「君も少しは感情を学びたまえ。嫌、これは難しいか。」
社長室には男の笑い声が一晩中木霊したという
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