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1 ただの村人じゃない大切なヒト

 田舎にある故郷に帰ってきた。

 小さな村だ、人も少ない。



「ゼロ!?」


「やぁ、ヒト」



 ヒトは俺に出来た初めての恋人だった。

 幼い頃、ヒトから告白されて良く分からずに了承していた。


 だがその御蔭で恋愛バフの存在に気付けたんだ。


 彼女は俺にとっての全ての始まりであり。

 全ての終わりだった。


 実家に帰ると天井を見た。


 俺に家族は居ない。

 幼い頃、魔族に殺されてしまったからだ。


 その為、近所に住んでいたヒトの家族には世話になった。


 心を閉ざしていた俺を、献身的に世話をしてくれたのもヒトだ。

 俺が立ち直る事ができたのヒトのお陰だろう。



『ゼロの事が好きなの……』



 ヒトの気持ちに応えようと思ったのは、感謝の念からだった。

 その結果『恋愛バフ』の能力を知る事になった。


 だが俺は、魔王を倒す事しか頭に無かった。

 もう何年も前の話だ。



「もぉ、帰ってくるなら言ってくれれば良いのに」


「手紙は一応送ったんだけど」


「え、嘘!? うぇえ何処だろぉ!?」


「はは、ヒトは相変わらずだな」


「もぉ、ゼロの意地悪!」



 俺達は幼馴染であり、家族の様な存在だった。

 だからあまり遠慮をする事も無かった。



「ふふ、でも嬉しい。無事に帰ってきてくれてありがとう」



 俺の隣に寄り添うヒト。

 その親愛は、家族の情だけじゃない。



「ヒトに大切な話があるんだ」


「ん-? なぁに?」



 愛情を持って見つめてくるヒト。

 共に”時を重ねてきた人”の。



「俺と別れてくれ」



 時が止まった。



「……」



 触れた手の平から、震えが伝わってくる。



「嘘、……だよね?」



 その声も震えている。


 家族を殺されて怯えていた俺を救ってくれた人。

 その人が俺のせいで怯えているのだ。



「ヒトには俺の能力を言ってなかったな」


「ゼロの能力……?」


「恋愛バフ、彼女を作れば作るほど強くなれる」


「それってもしかして……」


「あぁ、お前の他に99人の彼女が居た」


「ぐっ……」



 俺が旅立った後の話をヒトは知らない。

 俺を信じて故郷で一人待っていたのかも知れない。


 その心を踏みにじる様な行為だ。



「居たって……?」


「全員と別れてきた、ヒトが最後だ」


「何で私が最後なの……?」



 特に大した理由は無い。

 多分始まりはヒトだったから、終わる時もヒトにする。

 そんな酷い理由だった。



「……ごめん」



 俺には何も言えない。

 傷付いたヒトをより傷付けるような事はできない。



「けど良かった」


「……え?」


「私が最後なら、このまま私と一緒って事でしょ?」


「それは……」


「ゼロもそのつもり……何でしょう?」



 それはヒトが縋った言葉だった。


 そうじゃない事に薄々気付いている。

 それでも聞かずにはいられない。


 それを俺は痛い程に知っている。


 何度も、何度も繰り返してきた事だ。

 だからこそ、想いを込めて言おう。



「俺と別れてくれ」


「……そっか」



 ヒトは何も言わずに家から飛び出す。

 その後を追ってしまいそうになった。


 けれど、それは何も出来ない、俺の役目ではない。

 傍にいてあげられない相手に優しくするのは、優しさなんかじゃなくて。


 ただの邪心でしかないのだから。


 俺は実家の荷物をまとめると、故郷を後にした。

 ここに居る事で傷付けてしまう人が居る。


 その事実だけを胸に、宛ての無い旅に出る。


 もう向かう先は無い。

 後は野垂れ死んでしまっても良かった。


 こうして俺の贖罪の旅は幕を下ろした。

 だけど……。


 一つだけ残された想いがあったんだ。




 ステータス更新


 恋愛バフ  0%

 削除スキル なし


次回で完結です。


ここで重大ニュースです。


何と、次話で勝ちヒロインが誕生するそうです。


良かったら予想してみて下さいね!


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