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44 物理至上少女シシ

 竹林の中にある小さな小屋に彼女は居た。



「勝負だゼロ!!」



 出会いがしら、シシは鋭い一撃を放ってきた。

 それを受けて俺は吹き飛んでしまう。



「どうしたゼロ! お前の強さはそんなものじゃないはずじゃ!!」



 以前シシと闘った時よりも、300%以上恋愛バフの効果が下がっている。

 シシのスキル『剛力』は普通の人間以上の力を発揮する技だった。


 それに鍛錬で培われた技量が重なれば、下手な相手では身が持たないだろう。


 剛力は俺も使えるが、今はよくて互角の力しか持っていない。

 以前は身体能力で圧倒的に優っていたから抑え込めたのだ。


 俺とシシでは元々の身体能力が違い過ぎる。

 そのうえ技量の差が圧倒的に負けている以上、俺が勝つ手段は無かった。



「オレが惚れた男はこんなに軟弱では無かったはずだ!!」



 そうだ、シシは俺に惚れたのでは無い。

 俺の強さに惚れていた。


 それならばきっと、あまり傷付ける事も無いだろう。



「シシ、俺と別れてくれ」


「……ふぇ?」



 不意を突かれた様に、見た事の無い表情をシシが見せた。



「え、や、ま、待て、待ってくれ……」



 急に現れた怯えた様な表情に驚く。



「な、何の冗談じゃ? 別れてくれなどと、そんな……」


「俺のスキル恋愛バフは、恋人が居るほど力が増すんだ」


「そ、それなら他にも相手がおったのか……?」


「あぁ、そしてその半分以上と別れを告げてきた」


「うぐっ……」


「すまないシシ」


「嫌じゃ……嫌じゃ嫌じゃ……!?」



 シシは子供の様に泣きじゃくる。



「何でじゃ? オレが悪い事をしたか?」


「何にも悪くない」


「なら何故じゃ、何故オレを見捨てるのじゃ!?」



 その声は震えていて、泣きそうなのが見てとれる。


 鈍すぎる俺は其処で気付く。

 弱さを見せた俺を引き止める理由は他に無い。


 シシは、こんな俺を好きでいてくれたのだ。


 いつもいつも自分に呆れ果ててしまう。

 俺を好きになってくれた皆の気持ちが何一つ理解できていないのだから。


 でもだからこそ言わなければならない。

 これまで踏みにじってきた想いを無駄にできない。


 其れこそがシシ好きだった強かった俺だと思うから。



「別れよう、シシ」


「……ぅぅっ」



 涙を堪えるシシのこんな顔を見たことがない。

 あれだけの強さを持ったシシがただ震えている。



「良いのか、オレと別れたらまた弱くなっちまうのじゃぞ?」



 剛力が無くなったら、これまで以上に俺は弱体化するだろう。

 そしてそれでもシシは俺を好きなままで居てしまう。

 だからちゃんと別れを伝えなければいけない。



「ごめんな、シシ」


「……っ」


「お前とはもう、闘えないんだ」


「ぅ……ぅぁあああああ!!?」



 シシは拳を振るう、竹林がさざ波、岩が砕けた。

 泣きながら竹林で拳を振るい続けるシシ。


 大地が抉れ、雲が吹き飛んでいく。


 こんなに凄い女の子が俺の事を好きだった。

 それなのに俺は傷付ける事しかできなかった。



「ふぅううっ、ぁああああっっ!?」



 シシが武を振るう様が泣き声に聞こえてくる。

 鈍すぎる俺でも、痛いほどに其れが分かった。


 胸に突き刺さる様な咆哮を背に、俺は次の街へ向かう事にした。

 痛みを刻み付ける様に。



 恋愛バフ  430%↑

 削除スキル 剛力

ポイントとブクマありがとー!


本日はここまでです。

お休みなさい!

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