66 ロロとロリ 67
俺は研究塔がある街に来ていた。
「御兄ちゃん!?」
「御兄様!?」
二人の少女がこちらを見て驚きの声を上げた。
「久しぶり。ロロ、ロリ」
ロロとロリは人造人間ホムンクルスだ。
その為、見た目が幼い。
それは数年が経った今でも変わりなく見えた。
街で研究されていた人を生み出す禁忌で生まれたらしい。
俺が研究塔を破壊した後、街の料理屋で面倒を見て貰っていた。
「御兄ちゃん御兄ちゃん!」
活発そうに俺を呼ぶのがロロだ。
子供の様に愛情が欲しいのが見てとれる。
彼女の持つ念波遮断のおかげで、魔王軍が有する洗脳波を無効化できた。
「……御兄様」
少しだけ大人びて見えるのがロリだ。
だが以前ロロの頭を撫でていたら、ロリが羨ましそうな顔をしていた。
彼女の持つ念波操作で、洗脳波を逆に利用する事もできた。
「ありがとな、二人とも」
「えへへ……」
「べ、別に何も……」
やはりまだまだ幼いのだろう。
頭を撫でてやると二人は嬉しそうに笑った。
俺達が付き合っている形になっているのには理由がある。
『おっきくなったら御兄ちゃんの御嫁さんになるの!』
『御兄様の御嫁さんは譲れない……!』
『分かった分かった、大きくなったらな』
そう言った途端、二人が恋愛バフの対象に選ばれてしまった。
だから二人は付き合うとか、そう言う事の意味は分かってないと思う。
子供が御父さんと結婚するというレベルの話だ、だからだろう……。
「二人に大切な話があるんだ」
「何々御兄ちゃん?」
「御兄様の話、楽しみ」
今までと違って軽く言ってしまった。
「ごめん、二人とは結婚できないんだ」
「……」
「……」
それを後悔した。
「……」
「……」
二人は黙り込んでしまった。
「ロロ、ロリ?」
「……嘘つき」
「御兄様の嘘つき!!」
明るかったロロが消沈して、大人しかったロリが声を荒げた。
その様子に気圧されてしまう。
だが同時に、ちゃんと説明するべきだと思った。
「俺には恋愛バフという能力があったんだ、女の子と付き合えば付き合うほど強くなる」
「……」
「……」
「だから二人が俺に持っている好意を利用してしまった。本当にごめんな」
「だったら何で来たの!?」
それに答えたのはロリだった。
「御兄様がここを去ってから、もう帰って来ないんだと諦めようとしていたのに!!」
俺は二人を料理屋に預けた後、黙ってこの場所を去った。
この時の俺はスキル”闇の適応”の効果で瘴気を撒き散らしており、長居するのは危険だったからだ。
「ロロだってずっと元気が無くて、やっと明るくなってきた所だったのに」
「……」
言葉を失くしたロロは俯いたままだった。
「そん、な……」
「わたしだって、ずっとずっと忘れられなかったのに……!?」
ロリが泣き出してしまう。
俺の中の面影とは逆で、二人は失くしたモノをかき集めている途中だった。
それなのに俺が来た事でまた心に風穴を開けてしまった。
俺は既に二人を傷付けていたのに。
「帰って……」
ロリが言う。
「もう来ないで……」
それはきっと、ロロの為に呟いた言葉だった。
自分の過ちに心が砕かれそうだった。
「御兄ちゃん」
だけどそれを救ってくれたのは、他でもないロロだった。
「今まで有難う」
傷付けてしまった俺を励ます様な言葉をくれる。
自分が辛いのに、それでも俺の事を想って言ってくれる。
二人を子供だと思っていた自分が酷く情けなく思えた。
こんなにも優しくて強い子達をどうしてそう思えるだろう。
「ごめん……、ごめんな……」
崩れ落ちて謝る事しかできない。
その俺の頭をロロが撫でてくれる。
やはりそうだった。
俺が魔王を倒して世界を救ったんじゃない。
俺が皆に救われていたんだ……。
ロリも俺の頭に手を置いて、わしゃわしゃと搔きまわした。
「これでおあいこです」
「あぁ、ありがとう。二人とも……」
そう言った俺に、無理して笑った様な二人の笑みが刺さる。
其処から零れ落ちそうだった涙を、俺は絶対に忘れられない。
立ち上がった俺は御辞儀をすると、街を離れて行く。
二人が手を振っていたから、手を挙げて返した。
もう出来る事は無い。
振り返らずに俺は進んで行く。
更なる業の世界へと。
ステータス更新
恋愛バフ 650%↑
削除スキル 念波遮断
念波操作
活発だったロロが曇って。
大人しいロリが激情を表した形です。
先生は大人っぽいロリが好きです。