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88 御母さん系エルフのハハ

 森林の上方に架けられた橋。

 それらが繋がる場所に家があった。



「お帰りなさい、ゼロちゃん」


「ハハさん!?」



 建物入り口を先に開けられて驚く。



「ふふ、歩いてくるのが見えちゃったから」



 ハハさんは長距離視野のスキルを持っている。

 魔王城の射手を先に狙撃できたのはハハさんのスキルのおかげだ。



「中に入ってゼロちゃn、シチューを作っているの」



 エルフのハハさんは、俺の事を子供の様に扱ってくる。



「よしよし、おかえりぃ」



 椅子に座ると、ハハさんは俺の頭を撫でまわしてきた。

 少しくすぐったい気持ちになる。



「あ、でも今は英雄様だものね。こういうのは良くないかなぁ」



 木々と会話できるエルフの情報網は早い。

 俺が魔王を倒した事も既に知っている様だった。



「でも私の彼が英雄かぁ、何だか不思議」



 そう言うが嬉しそうな声色で聴こえた。



「ゼロちゃん、今日は泊まっていけるんでしょう?」



 そう言ったハハさんの眼は潤んでいる。

 鈍い俺でも彼女が何を望んでいるかぐらいは分かる。

 でもだからこそ、言おう。



「今日は大切な話があるんです」


「あらぁ、何かしら?」



 少しソワソワした様子のハハさん。



「俺達、別れましょう」



 その表情が静止した。



「……貴方、誰?」


「え……」


「ゼロちゃんがそんな事を言うはずがないもの」



 それはいつも優しさを見せてくれたハハさんとは違っていた。



「あたしを独りにするはずが無いもの、ずっと一緒のはずだもの」



 ハハさんは認められないと呟き続ける。



「そうだわ! 混乱草でも食べたんじゃない? きっとそうよ!」



 信じられないと、認めたくないと呟く。


 ハハさんは以前家族を亡くした事がある。

 俺が離れて行くという事は、その時の恐怖を思い出させるのだろう。



「俺の能力恋愛バフは彼女が居るほど強くなれるんだ」



 だから今まで偽ってきた女の子達に清算しなければならない。



「なんだ、そういう事なの」


「え……」



 だがハハさんは予想外の反応を見せた。



「大丈夫よ、あたしは一人二人増えたとしても気にしないわ」


「残り87人居るんだ……」


「そ、それは想像以上の数ね。でも大丈夫よ! エルフのあたしは長命だから、皆が死んだあとは独り占めできるじゃない」



 その頃には俺も死んでいると思う。


 だがハハさんだってそんな事は分かっているはずだ。

 それでも言わずにはいられなかった。


 その気持ちを想うと胸が痛くなる。



「ごめんなさい……」



 だけど同時に、これまでの出来事が偽らせてくれない。



「今まで別れてきた皆と違う対応は取れない」


「……あたしを独りにするの?」


「ごめんなさい」


「そう、そうね……。こんな年増何て相手にしたって仕方ないわよね……」



 そうじゃ、そうじゃない。

 そう言いたかった。


 綺麗で優しくて暖かいハハさんの心には何度も支えられた。

 ハハさんのスキルのおかげで魔王城に安全に入れた。


 だけどそれを言ってしまうと、俺達は別れられなくなる。



「もう行きます」



 鈍い俺でも今となっては痛いほど分かる。

 魔王を倒す為に踏みにじってきた人達の想いが。

 そしてそれを更に踏みにじっていく俺の業が。



「……御願い、独りにしないで」



 そう呟いたハハさんの泣き声に振り返らない様に。

 想いの結びつきを引き千切っていく。



「ぁぁ……ぅぁ……ぃゃだよぉ……」



 建物の外で聴こえた悲痛な想いに、胸が締め付けられる。

 思わず泣きそうになった。


 だけどそんな事は俺には許されないから。


 ただ、黙って歩を進める。

 なすべきことを成す為だけに。



 ステータス更新


 恋愛バフ  870%

 削除スキル 長距離視野


一話目以外は即興で書いてます。


ライブ感を感じて貰えると嬉しいです。

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