戦国時代にタイムトラベル!?本当にあった俺TUEEEEEEを俺が記録する!
本来のタイトルは『コント「自分の夢」』です。でもそれだとのびないのでちゅう学生になりました。
コント『自分の夢』
ポケモンのキモリになりたい。
それが俺の幼稚園の頃の将来の夢だ。
高校生の夏休みというのは、なんとも虚しいものである。
世間一般では、高校の夏といったら、青春!海!友情!そんなものが浮かんでくるだろう。
俺こと後藤鈴平もそう思う。
だからこそ、授業の補修で夏休みの前半を潰され、後半はその反動で部屋でゴロゴロしているだけのこの夏がとても虚しい。
夏休みの課題もあるというのに、赤点をとった科目からの追い討ちを喰らったのだ。もはや残った選択肢は答えを写すということだけだった。
だがそれでは済まない課題もある。
自分の将来の夢を答えろ。
おそらく進路相談が迫ってきているのだ。面倒なこった。
思えば俺は今まで何者でもなかった。今から何かを目指しても、頭の悪さも相まってもうどうにもならないだろう。
そういえばと思い、幼稚園の卒園アルバムを引っ張り出し自分の夢を再確認したところ、どうやら俺はキモリになりたいというとんでもない夢を抱えていることが分かったのだ。
なんで俺キモリになりたかったんだろ・・・
写真に写ったアホヅラからは何も得るものはない。
俺はそっとアルバムを閉じると、課題のプリントをきれいに畳んでカバンの奥に封印した。
「眩しい・・・」
朝日が差し込む。
朝日?いや、俺の部屋には差し込まないはずだ。
「どこへ行った!!」
「絶対に見つけて殺せ!!」
なんかうるさくね?
俺の部屋はこんなに音漏れするようなところじゃなかった気が・・・
本能で起き上がる。
『どのぐらい気を失っていた!?』
なぜかそんなことを思う。おかしい、なんだかおかしい。
「後藤鈴平を探し出して殺せぇぇぇぇぇl!!!!」
なんか俺のこと殺そうとしてるんですけど!?!?!?
とにかく起き上がる。そして走る。
どうやら俺は道の途中で気を失っていた模様。なんだかやばい気がするから逃げる。
落ち着いて思い出せ。俺は昨日何してた?いや、普通に布団にくるまって眠ったはずだ。そりゃキモリになりたいなんて馬鹿げた夢を思い出してしまったが、それとこれはまったく関係ないだろう。
ってかここどこだよ!?渋谷!?渋谷じゃねぇ、渋谷はこんな田舎くさくねぇ!
家の屋根が石やんて!いや石じゃねぇ!いやわからん!ちょっと待て落ち着け俺!
とにかくここがどこだかわかんねぇ。周りを見ると城っぽいのが見えるからおそらくここは日本だろう。さっき日本語も聞こえたし。
そしてもひとつわかんねぇのはなぜか俺が殺されかかってるってことだ。こっちはマジで意味わからん、俺が馬鹿だからわかんねぇのか?それを考慮してもわからん!
「こっちだ鈴平!」
呼びかけられる。手を差し伸べるのは二十くらいのお兄さんだろうか、なぜか俺の名前を知っている。
「味方か!?」
思わず聞いてしまった。ギョッとした顔をしたが、そいつは確かにこう言った。
「俺は味方だ!!」
息を落ち着かせる。
冷静になってきたかって?なるわけねぇ。
追ってきているやつがどんなやつかもわからん、なぜ追われているかもわからん。そしてなんでこいつが俺のことを知り、助けたのかもまったくわからん。
「だ、大丈夫か?」
「あ、ああ」
お互い息を整える。
「ここはまだ敵が多い、ついてこい、安全なところまで逃げよう」
「ちょっと待ってください、ここどこです?あなたは誰です?」
「は?鈴平、お前まさか記憶ないのか!?」
大きな声を出しはっとした顔で口を塞ぐそいつ。
「まぁ、あれだけ酒を飲んだんだ、記憶がなくなるのもしょうがないか・・・だが俺のことまで忘れたか?」
酒!?酒飲んだの俺!?なんで!?
「すいません、これっぽっちもわかりません」
「わかった、いい。とにかく今はここから逃げ出す。これはわかるよな」
まぁわかるけど、俺からすれば今目の前にいるやつの名前もわかんねぇんだよ。
「あ、そうか。俺の名前は多田国広、味方だよ」
あ、名前は分かりましたわ、はい。
俺は多田国広と名乗った人物の跡を追って、三日間かけてようやく安全なところまで逃げた。
車を使わなかったのは目立つからとわかるが、電車なども使わなかったというのはどういうことだろう。それだけ田舎なところなのか?
「はぁ〜・・・もう大丈夫だ、ここは安全だ」
どさっと座る多田国広。整備されてない道を歩き、なんの草かもわからない草を食った。
涙が出る。
「すいません、やっぱりなんも覚えてないっす」
ここにくるまでに幾度か多田に何が起こったのかを聞いたが、そのうち思い出すだろうとのことでまったく教えてくれなかった。
しかし時間が経っても俺は覚えてないまんまだ。
「ああ・・・できればお前自身に思い出して欲しかったんだがな・・・」
え?何したの俺?流石に聞くの怖くなってきた。
「お前はあの追ってきた奴らのボスを殺したんだよ」
そういえばだった。
俺が目覚めた時、その場には見慣れないものがあった。見慣れないが、知っているもの。
日本刀だった。今思えば、あの刀は血に濡れていたような気がする。怖すぎて置いてきてしまったが。
考えてはいた。
あの追ってくるものはまず間違いなくヤクザだ。怖いもの、そりゃヤクザだろう。
彼らのボス、つまりヤクザの親父さんを俺が殺した!?流石に信じたくはない、だがなんだか辻褄が合う。
あそこにあった日本刀、あれはヤクザのものだったのだろう、そしてその刀で俺はボスを殺してしまった。
「なんで・・・?」
当然の疑問。なぜ俺は人を殺したんだ?
「そりゃお前、あいつのやり方が気に食わないからだろ?」
いやそんな当然みたいな言い方せんでもいいやん。何キョトンとした顔で言ってんだ。
まったく実感がない。俺が?人を殺した?ありえん。
だが殺してなかったらあんなにヤクザは怒ってないだろ。殺したからあんなに怒ってんだろ。ってことは殺したってことで・・・
ああもうわかんね。
「とにかく無事に逃げれたってことだよな!」
俺がそういうと多田はぽかんと顔をし、にかっと笑った。
「そういうこった!お前の細かいところを気にしない性格、俺は好きだぜ!」
バシバシと肩を叩かれる。
「ってかお前はなんで俺の味方なんだよ」
「おいおい、それも忘れてたのか?いや、そうだったな。じゃあもう一回自己紹介しとくか!」
「いや、お前の名前は多田国広だろ?それは知ってるよ」
「じゃあ殺したやつが俺の父さんってのは?」
「いやしらねぇよ!」
「やっぱ覚えてないのかよ!あの時酒を交わした約束は!?」
「まったく覚えてない」
「ふざけんなよー!お前俺の部下になるって言ったじゃねぇか!」
「言ってねぇ!」
見るからに同年代、いや、それより上の20代。こんなパッとしないの部下になっているだと?ありえん。
「流石に嘘だ!なんか騙してんな!」
「騙してねぇよ!じゃあお前あいつらの元に戻るか?きっと親父を殺した罪で死より恐ろしいことされるぜ」
背筋が凍る。
「・・・俺はどうすりゃいい」
「は、しんぱいすんなって。もう計画は始まってんだ」
計画!?なんか勝手に始まってるけど!?
「親父を殺した、後は俺が当主になるだけ。そうしたらお前の罪は、栄光に変わる。そういう計画だったろ」
「だったろと言われても覚えてないって」
「うるせぇ!男ならごちゃごちゃいうんじゃねぇ!!」
喝を入れられた。思わずビクッとなる。
「いいか、泣いても笑ってももう親父は死んだ。死んだんだよ!お前が殺したんだ。かわんねぇ事実なんだよ!覚えてないって逃げんじゃねぇ!」
・・・・・・でも覚えてねぇもん!
「俺が当主になったらどうなる?今、親父についてた部下たちはみんな俺のところには来ないだろう。一気に戦力が減るんだよ」
そうか、俺たちを追っていたのは親父さん側のヤクザだったってことか。
「そうすると、こんどは周りの奴らが一斉に牙を剥く。そしたら俺はあっさり負ける。圧倒的な人数差でな」
いま、こいつの元には何人の部下がいるのだろうか。周りの奴というのは、抗争している他のヤクザの組みのことだろう。
「そうなる前に俺は強い奴に尻尾を振る。そもそも親父を殺したのはその強い奴への手土産だ、つえぇやつの背中に隠れんだよ」
「ちょっと待てよ!俺は一般人だぜ!?酒に酔ってたかしらねぇが流石にそんな話には乗れない!」
「ここまできて何言ってんだテメェは!!もうそんな話は通用しねぇよ!!今やどこもかしこも戦争だよ!戦をしなけりゃお前は死ぬんだ!」
「いやだよ!俺には帰る家がある!こんないたいけな17歳に頼む内容じゃねぇ!!」
「だがお前は親父を殺したんだ」
「覚えてねぇよばか!!!」
「はぁ〜!?!?!?あーもうわかった。そこまでいうなら見せてやるよ。これ見たら思い出すだろ」
そういうと多田はここにくるまで大事そうに抱えていた箱を開ける。
「ほら、親父の首だ。お前が取ってきたんだぞ」
箱に入っていたのは紛れもなく人の首だった。
「・・・いや、悪かったって。見せないようにしてたんだ、混乱してたしな。だがあまりにもいくじがないから」
口元を拭く。背中をさすられる。
「やめろ・・・思い出させないでくれ・・・」
俺はただにそういうとまたお腹の奥から何かが込み上げるような感覚に襲われる。
「我慢すんな、吐いちまえ」
「ふざけんな、お前が見せたくせに」
証拠が必要なのだそうだ。それを見せられた瞬間、俺は当然吐いてしまった。
「・・・わかった。お前が覚えてないのも、計画に乗り気じゃないのもわかった。だが俺はお前の主人として、お前を守る義務があるんだ」
主人じゃねぇけどな。
「お前が1人で歩いていたら、すぐにあいつらに見つかって死んじまうよ。ここがどこかもわかんねぇなら、帰り方もわかんねぇだろ?」
言われて気づく。帰ると言ったが、俺はどうやって帰るんだ?
「行く当てがないなら、俺のところに来いよ。匿いつつでもいいさ、せめて目の届くところにいてくれ」
あの首を見せられて、やっと自分が人を殺したっていう現実味が出てきた。なぜだかその顔に見覚えがあったからだ。
行く当てがない、当たりだ。帰る場所どころか、ここがどこかもわからない。
世話になるしか、ない。
こいつは・・・多々国広はいい奴だ。ヤクザの息子だが、ゲロ吐いた俺の背中をさすってくれる、優しい奴だ。
「すまん・・・悪かったよ」
俺は多田国広と過ごすことにした。
しかしそんなことはなかった。
すぐに状況は変わった。いや、俺が思っていたより状況が悪かった。
どこもかしこも戦争状態、道も街も整備されていない。ここが田舎だからと思っていたが、それにしては人が多い。
ばかな俺でもわかった。ここは日本じゃない。だが日本語が通じる、不思議な世界だ。まさか俺なんかが異世界転生するなんてな、ありえねぇ〜。
いや、俺が人を殺したって話の方がありえねぇか。しかし、俺はこの世界ではどういう役回りなんだ?
この世界の人間は割とひもじい思いをしているようだ。見るやつ全てがみすぼらしい、多田くらいだこんなにしっかりした服を着ているのは。
だが俺はそれらこの世界の状況を見ても多田の元で安全に暮らせると思った。逆にそいつらを見て俺は運があったと思った。
全然なかった。
多田の元で暮らして数日しか経たない間に、多田は俺を連れて歩いた。歩いた先は、多田が言っていた強い奴の元。彼は自分を六谷高太郎と名乗った。
多田は自分たちを孤児だとし、自分の親の首を見せることで六谷の機嫌を伺った。
その結果、その首を実際に切った俺と自分の親の首を見せた多田のその何が何でもな姿勢に感心し、部下になることを許した。
しかし・・・
「お前、名前を後藤鈴平といったか。気に入った」
俺は気に入られてしまった。
「首を切ったその力、俺のために使うとしろ」
六谷は俺にそんなことを言ってきた。
拒否、できなかった。そいつの腰には刀が引っ付いていたんだからな、あれは飾るもんじゃねぇのかよ!なんで持ってやがるんだ!?
とまぁそんなこんなで俺は多田の家から六谷の家に引き抜かれてしまったのだった。
「はっはー!改めて俺の名前は六谷高太郎、よろしくな!」
「よよよ、よろしくお願いします・・・」
「おいおい、硬くなるなって!俺はお前らの気軽な関係を気に入ったんだ。彼にもお前自分の主人に敬語なしってよぉ!」
「いやいや、ははは・・・」
じょうだんじゃねぇぇぇええええ!
腰に刀ぶっ刺してる奴だぞ!?こんな奴とこれからずっと一緒!?死んじまう前に気が狂っちまうよ!
「なので、お前も俺に敬語なしで突っかかってくるがいい、ほーれほれ」
「冗談じゃねぇぇええ!」
「おーよしその意義だ!それゆくぞ!」
思わず心の声が出たが、六谷はそれを許した。いや、マジで冗談じゃねぇよ、なんでこんな奴のところに・・・
「じゃ、とりあえず戦やるぞ」
「は?」
「あー、なんだかな?お前が殺した多田克己の弔い合戦をやるらしいんだと。お前も出ろ」
「はぁ!?い、いやいやいや!無理に決まってんだろんなこと!」
それをいうと六谷は先程のヘラヘラとした態度と一転し、急に冷徹な印象になった。
「てめぇ・・・テメェを今ここで殺してもいいんだぜ」
「・・・は?」
「俺にとってお前はまだ、役に立つ奴じゃねぇんだ。首を取ったって言われたが、首を見せられただけさ。お前がやったなんて証拠はどこにもない」
確かに、そうだった。
その瞬間を動画に取ったわけでもあるわけでもないし、写真にとって動画サイトにアップロードしているわけでもない。
「それに、お前が殺した奴の弔い合戦だ、お前が参加しないでどうするんだ」
「それは・・・まぁ、確かに・・・」
この世界に来て一つ、わかったことがある。
義理。
この世界には義理がある。そしてそれを、大切にしている。
俺が流されて生きてきたからと言って、その常識をこの世界に押し付けてはいけない。俺の世界は俺の世界の中だけにした方がいいと思った。
でなけりゃ死ぬ!!
少なくともこの目の前のやつの問答に誤答をしてしまったらその場で死ぬだろう。現に今刀に手を握ってやがる!
こいつは躊躇なく人を殺す!まるで砂糖のかけらを口に運ぶかのように殺すのだ!
そこに面白みも悲しみもない!何もないのだ!
「わかった、やるよ。あんたもいくさに出るんだろう?せめてあんたが出てくれりゃ勝ちそうな気がするよ」
「あ、俺はでねぇよ」
「へ?」
「ち、な、み、に!お前に与えるのはこの弓だけだ。金がねぇんでな」
「はぁー!?せめてその刀をくれよ!」
「てんめぇ、俺の魂を欲するか!ふはは!強欲だねい、いいことだ」
ガハハと笑い手を腰につける六谷。俺が戦に出るとか・・・しかもその武器が弓とはね、俺死んじゃうんじゃないの?
その戦は六谷に引き取られてからわずか5日後に行われた。
戦果だけ見れば、我々の勝利。俺はなんとか生き延びていた。
なぜだろう。
俺は時々、この世界に来てから本能で動いてしまう時がある。今回の戦いもそうだった。
すぐ隣で、人が死んでいるのに、俺は狂気に満ちなかった。俺は味方の1人が死んでも、さっきまで会話をしていたやつが死んでも、淡々と弓を引いていた。
「すごかったじゃないか!!」
とーおくから声が聞こえる。六谷だ。くっそ、あんのやろう、今までどこほっつき歩いていたんだよ!
「見ていたぞぉ〜、貴様、めたくたに弓が上手いなぁ!ポンポン敵に当たるじゃないか!」
そう。実は俺の弓が放つ矢は百発百通、まるでワンピースのウソップのようにポンポン当たるのだ。
当たってたらしい。
「はっはっはー!やはり俺の見る目は正しかったようだな!お前にはなぁにかあると思ってたんだよなぁ〜!」
いや〜。
なんでなん?
なんで俺の弓の矢当たってしまうん?
冷静ではいた、人が死んでいるのに。だがそんなの、適当に引いた結果だ。
俺はこんなことになるとは思っていなかったんだよ!だから戦果もいらない!
「ようし、今日は鈴平の戦果を肴に酒を飲もうぜ!!」
「うおおおおおお!!!」
野太い声が上がる。勝利の美酒だ、俺は飲むのはやめておこう。
「そういや六谷さぁ〜ん、あんたどんだけ強いんすかぁ〜」
「うお、話にゃ聞いてたが鈴平お前、酒を飲むと人が変わるなぁ〜」
酒には勝てなかったよ……、俺は何だかその時どうにかなっていたんだろう。
「んなこといいからぁ〜〜!はい!六さんのいいとこ見てみた〜い!ほい!」
俺はそんなことを言った。
「たく、しょうがないなぁ〜、空振りになっちまうぜ?」
六谷は立ち上がる。
「よし、じゃあお前も立て」
「へ?」
–フォン。
酔いがすっと無くなった。
「何が起こったかわかってないっぽいな、んじゃもういっちょ!」
「ひ、ひぃぃぃいいい!!!」
俺はビビって腕をブンブン振り回す。
六谷はそれを、その腕の間を縫うように刀を振ってきた。
俺が訳のわからない攻撃、挙動をしているのに、六谷はその動きを全て読んだのだ。
「帯が切れてるぜぇ!おっとっと」
六谷は酒でふらつきながら刀を収める。
どすっ。
なんだとおもったら俺の腰が抜けた音かよ。
てが・・・・・・震えてエグいことになってるぞ・・・・・・
外的ダメージは全くないが、俺は心に恐怖を植え付けられたような気がした。
怖すぎてちびるが?
てか六谷さん強すぎるだろ!?なんだよこいつ、怪物じゃねぇか!
今なら多田の言っていた、強い奴に尻尾を振るというのがわかった。こんな奴がいるのだ、守ってもらった方がはるかにいい。
こいつはしなねぇ。
どんだけ今この世界が戦で血塗られようと、この男だけは負けないだろう。
俺は恐怖と共にそれを思い知らされた。
六谷はその後もすごかった。どれだけ不利な戦争をふっかけられても、必ず勝利した。
どれだけの敵に囲まれようが、絶対に逃げはしなかった。それどころか、全ての敵をその刀で斬り伏せたのだ。
なんだよあいつ。
あんな強い奴に、俺は認められたっていうのか?
なんだか、虚しい。
嘘っぱちに感じてしまったのだ。あの言葉が。
俺の弓がうまい?はっ、よくいうぜ。どうせ六谷の方がうまいに決まってんだ。
そうだ。
俺は何にもできなかった。
何も果たせなかった。
何者にもなれなかった。
首を切ったのは俺じゃない、俺だとしてもその記憶は俺にはない。
弓矢が当たったのだって、絶対に偶然だ。俺の意識でやったことじゃない。
俺は何もできない。
俺はなんの力はない。
「おい、どうした鈴平」
「ろ、六谷さん」
「こーんな顔しておったぞ貴様。はははっ、道化師になるつもりか?」
・・・・・・
なんだかこいつをみていると悩んでいるのがばからしくなる。
「なぁ、六谷さんよ。あんた、夢とかあるのか?」
「ほほーう。夢、ねぇ・・・」
お前そんなことで悩んでおったのかぁ!んなっはっはっは!ばかだなぁ!と返ってくるに1000円。
「俺の夢はこの世界から戦を無くすことだ」
俺は目を見開く。
「戦を無くすため、俺はこの国を統一する」
「はぁ!?この国をか!?こーんなでっかい国丸一つを統一!?」
な、何を言ってんだこの野郎は!?こいつばかだろ!この国がどんだけ広いかわかってねぇんだきっと!
「な、なぁ、あんたさぁ、この国がどんだけ広いかわかるか?言っとくがどんだけ取り締まっても必ず悪さをする奴は出てくんだよ。しかもこの世界は戦が全て。結局は暴力ってことだぜ?戦を無くすなんて無理だよ」
「なぜやる前から無理だと決める?」
「いや、常識的に考えて・・・」
「常識ってのは壊すもんだよ」
「んなっ」
「おまえさ、そんなんで生きづらくねぇの?」
「え?」
六谷はまっすぐこちらを見つめてくる。
「やってみる前に諦めてちゃなーんもできないぜ」
「簡単に言ってくれるぜ・・・それができてりゃ世話ないぜ全くよ・・・」
俺はその眩しさから目を逸らした。
「今度、大きな戦をする」
「また戦!?」
「相手は2万五千人、今国道隆って奴だ」
「ええええ!?!?!?あの今国道隆ですか!?あそこにゃ東と西のバケモンがいるんでしょ!?あまりにも有名な話ですよ!」
「父が死んだ。奴らはこれを狙ってくるだろう」
「だから二万五千・・・いや、逃げましょうよ流石に」
「俺らは4千人でこれを相手する」
「バカ言ってんじゃねぇよバカ!!無理に決まってんだろ!!単純に考えて1人に対して五人が襲いかかってくるんですよ!?無理でしょ!!」
「六人だばか。無理じゃねぇよ、ここで勝てなきゃ俺らはどうせ死ぬんだぜ?ならば争ってみるのも一興だろう?」
「興!?興だと申すか六谷高太郎!!人が死ぬんだぞ!!お前も死ぬかもしれないんだぞ!!お前のいう、戦を無くすという夢も叶わないかもしれないんだ!!」
「その戦に勝てば叶うだろうさ」
簡・・・・・・っ!
「簡単にいうじゃねぇか・・・そこまでいうなら勝機はあるんだろうな!!」
「あったら許すのか?そういう話じゃねぇ」
「そ!それは、そうだが・・・」
「いいか、よく聞けよ後藤鈴平。無理だろうがなんだろうが、やってみないことにゃあなんもおきねぇんだ。無理だったらその時考えりゃいい」
「でも死ぬかもしれないし」
「しなねぇよ、俺は」
「無理だ、絶対」
「無理じゃねぇ、誰がんなこと決めた」
「どうせ出来ねぇ・・・」
深いため息。六谷は俺の肩をガシッと持つと、なんの考えもなくこう言った。
「無理っつってんのお前の頭だけだぜ!」
「は?言ってる意味が・・・」
「それになぁ、結局その時は必ずくるんだ。逃げられねぇよ」
俺はハッとした。
進路選択からは、逃げられないことを思い出した。いつか必ずやってくる。時間は進み続けるのだから。
あれ、何で今そんなこと、思い出したんだ?進路?進路って何だっけ……
「俺はやるぞ、やるんだぞ!!絶対絶対、ぜっっっったいにだ!!!!」
「・・・・・・でも」
「ごっちゃごちゃウルセェなぁ!!やるぞぉぉぉぉぉぉおおおお!!!」
でっけぇ声だな・・・
「オラ、お前もやってみろよ。声に出してみろ」
「や、やるぞー・・・」
「ちいせぇよ!!!」
「だぁぁぁあああ!!!!やるぞぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!」
「しゃあ!その意義だ!ぶわっはっはっはっはっはっは!!!」
はぁ・・・・・・
こいつ、こんなだけどまだ27歳なんだよなぁ・・・
だが、なんだができる気がしてきたような・・・はぁ・・・・・・
俺はその戦で戦果は上げなかった。
ただみていた。
生き様を。
「なんなんだ・・・あいつは・・・」
ばかだ、できる訳ねぇと思っていた。
「取りやがった・・・!今国の首を・・・!」
俺の弓を褒めた奴は。
俺の無理だという絶対をひっくり返した奴は。
六谷高太郎はこの4千人と二万五千人の戦いで、見事に勝ったのだ!
「すっげぇ・・・」
俺は確かに胸の奥が熱くなるのを感じていた。
俺は寝床で一人考えていた。
あんなにすごい奴、みんな知ってるのか?
知ってるだろうが、どんな奴も時代が経てば記憶からなくなる。戦で勝った人殺しが、名誉ある賞を取れるはずはない。
じゃあ、誰が記憶するんだ。こんなにすごい奴なのに、誰にも知られないまま消えちまうのか?
そんなのダメだ!
「伝えなければ」
おれは彼と出会ってからの全てを描いた。
賢明な読者ならもうわかると思うが、これは実際にあった事実だ。この戦いについた名前は、誰もが知っているだろう。
桶狭間の戦い。
六谷高太郎、というのは。
織田信長のことである。
そしてこの記録したやつの名前は後藤鈴平なんて名前ではない。
太田牛一。
この戦いが今も鮮明に残っているのは、彼がいたからだ。
これらは全て調べればすぐに出てくることなのだ・・・・・・
適当な年代をもとに小説を書こう!あんど、コントってタイトルつけて全てを笑い話風にしよう!元の発想はその二つを合わせたものでした。
そしたら1625年に行くことに決まった(確か)ので、そこら辺にあった事件と関連する人名を調べたら、こんなのできました。
こんなんできました!