(6)
「……衛? 帰っていたの!」
「ん……。あれ?」
僕は、重たい瞼をこする。
気付くと家のソファーに座り込んで転寝をしていた様だ。
目をぱちぱちとさせると、ぼんやりとした景色の中に彼女の姿も映る。
「うさ美……?」
「衛、どうしたの? 連絡も無しに。でも今回も無事に帰ってこれたのね、良かった。お帰りなさい」
彼女・うさ美は嬉しそうに僕の手を握って言う。
思わずその手を引き寄せて抱き締める。
「ま、衛?」
突然の行動に腕の中のうさ美が驚いた様に僕を見上げる。
こうしてよく見ると、本当に睫毛が長い、美人だ。
「ごめんな」
唐突に謝る僕に、
「……いいよ。私は、大丈夫だから」
うさ美は笑っていつもの様に答える。
その笑顔に胸が苦しくなった。
だが、誰かがアドバイスしてくれたことを僕はきちんと覚えていた。
「いや。うさ美は自分の心を閉じ込め過ぎだ。もっと話してくれ。お願いだから。僕ももっともっと君の話をちゃんと聞くから」
うさ美の肩が震えてきた。
わあっと声が上がる。
「寂しかったんだから、寂しくてもうもう……!」
彼女が思いっきり泣き静かになったところで僕は切り出した。
「うさ美」
「……はい」
真っ赤な目のうさ美をさらに抱き締める。
「一緒になろう。今度はもうそんな思いをさせないくらい、マメに仕事先からも連絡する。約束だ」
「…………はい!」
笑顔になった、彼女が最大限に大きな声で頷いてくれたのだった。
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