エピローグ
今日は、もう【ビタミンカラー】は店仕舞い。
私は絞った照明のバーカウンターで一人カクテルを飲む。
何のカクテルかって?
それは、秘密ね……。
ひらり。
そんな私の手元に葉書が1枚、天井から落ちてくる。
訃報の、葉書だった。
「……マスター。ワタルさんが、天国へと旅立ったわ……」
でも、不思議ね。
あれからもう5年も経ったんだわ。
88歳。大往生だわきっと……。
もう一杯、飲もう。
これは、ワタルさんへの花向けの一杯だ。
自分用に、シェーカーを揺らしながら私は微笑む。
「……ねえ、マスター。マスターに憬れて、この道に入りバーテンダーとなって、こうして閉じ込められた空間のバーに勤めているけれど、私
ちっとも寂しくなんかないわ。不思議ね、本当に」
独り言には、もう馴れっこ。
だって、本当に寂しくなんかないんだもの。
此処には、素敵な恋話の思い出たちが、宿っているから。
「乾杯、素敵な恋物語達へ。それと恋焦がれているマスターへ」
私は、カクテルグラスを揺らして、そして。
至福の一杯を口に含んだ。
此処は、不思議なバー【ビタミンカラー】。
ある、恋の悩みを持った人しか辿り着くことが出来ないバー。
もしかしたら、あなたも恋の悩みで悩んでいたら、辿り着くことが出来る、かもしれないわね……。
〚おわり〛
この連載、お話を読み続けて下さったあなたに深く感謝します。
本当にありがとうございました。
また、どこかの物語でお会いしましょう。