力の代償
あ
「それにしてもすごいな、勇者クロムは。」
「リエ様、今後は気をつけてくだたさい。出来ればあまり関わらない方がいいと思いますよ。彼は人間ではなく、魔王を超えた何かです。」
金髪の少女、『リエ』は従者『カインズ』を連れてまつり騒ぎの村を歩いていた。
「しかし、今後は彼の力が必要になる。」
「だからって、片っ端から性格変えて接しても彼からすれば鬱陶しいだけだと思いますよ。」
「うっ」
図星で何も言えない。
「リエ様。」
目で合図を受け、無言でうなずき、路地裏に入ったカインズに続いた。
先ほど歩いていた大通りに青いマントを身に着けた騎士たちが現れ、周りを見渡していた。
何かを探しているようだ。
「西国の騎士ですね。」
「私を探しているのか?」
「わざわざ、こんな町外れの村まで来てるとなるとその確率は高いたと。」
しばらく身を隠し、騎士が去っていったのを確認してから路地裏を出る。
「どうしますか?」
「いつまでも隠れられるとは思えないからなぁ。」
「となると」
「こちらから乗り込んで話わつける。」
「って事で私についてきなさい!クロム!」
エルフのバカを追い出せたと思えば今度は、金髪のバカが現れ「私は一国の王女だった。」と語りだし、「分け合って命を狙われているから護衛をしてほしい。」と言い出す始末。
御大層に従者までつけてやがる。
王家だかなんだかしらないが
、俺からすればだから何?って話だ。
王だろうが、貴族だろうが、金がなきゃただのサルという認識しか持てない。
「え?」
目の前の、サルを無視して酒場へ向かった。
「無視?私は王女だよ?普通なら助けるよね?他のなろう系見てみてよ!」
「まずは、普通の話し方してくれねぇか?合うたんびに話し方が変わってんのは正直、気色悪い。」
「…分かった。では、もう一度話を聞いてもらってもいいか?」
「偉そうだから却下。」
「どうすりゃいいの?」
結局クロムは、こちらの話をまともに聞居てくれなかった。
国一つ敵にまわしている以上、たった二人ではどうにもならない。
魔王やドラゴンをここら一帯からたった数ヵ月で駆逐した勇者クロム。
彼以外に頼める人物がいない。
「まぁ、予想通りでしたけどね。」
「そうだな。」
クロムはあの性格上、多額の金が無ければ雇えない。
「では」
「プランBだ。」
「おやっさん。予約しといた酒はあるか?」
酒場に到着し真っ先にカウンターへ向かう。
酒場は、まだ昼間だからだろう、客は一人もいない貸切状態だった。
この酒場は俺に取って唯一の娯楽であり、生きがいでもある。
「アル中が、昼間っから来やがって。」
めんどくさそうに対応する大将。
「夜はうるせぇからなぁ。」
「酒場ってもんはそういう物だ。ったく。」
ため息をしながら、一つの瓶を取り出した。
「ほらよ。」
「あーこれこれ!!……あ?」
瓶の中には旨そうな液体が入っていて、ラベルには日本語で、「日本酒」と書かれている。
だが、それらの前に気になる数字が書かれていた。
「おやっさん?これは?」
「あん?知らねぇのか?西国の連中が今月からまた、増税しやがったんだぜ。」
「……」
俺を支配したのは怒りでも悲しみでもなく、殺意だった。
「おやっさん。来月までこの酒おいといてくれねぇか?」
「あ?いいけどよぉ。どうしたんだ?」
「減税してくる。」
「おい!いたか?」
「いや。そっちはどうだ?」
「いなかった。」
騎士たちは必死になって村中を探しているが目当ての「王女」は見つけられるにいた。
「クソが。早く帰りてぇよ。こんなど田舎に派遣しやがって。」
苛立つ、騎士の肩を一人の青年が叩いた。
「ちょっといいげすか?もしかしたらあなたがたが探している人物を見たかもしれません。」
「本当か?助かる!」
騎士が振り返った瞬間、青年はナイフで騎士の首を切り裂いた。
「貴様!?」
すかさず、その場にいる騎士達の喉を切り裂いていく。
騎士達は剣を抜き、応戦したが青年の動きについていけず、あっという間に全滅した。
周囲の村人達は、悲鳴を上げてその場から逃げてしまったので、その場には死体と青年、そして金髪の少女しかいない。
「さすがだな。『元騎士団団長』カインズ。」
「いえいえ。コイツラはろくに実戦経験も積んでない下っ端ですから。…それより、本当によろしいのですか?」
「血で汚れた鎧を着るなどどうということではない。」
「違いますよ。こんな古典的な方法で上手く行くのかって話です。」
「安心しろ。失敗したら死ぬだけだ。」
死体から鎧を剥ぎ取り、身につける。
準備は出来た。後は行動あるのみ。
「行くか、我らが祖国。西国へ。」
馬車に揺られながら目的地を目指す。
急遽西国に行きたいと言われ村長は「急に言われても困るんだょ~そう言うのは前もって言ってくれないと~」とブラック企業の上司みたいな反応をされたので、「村を燃やしてやろうか?」と脅してみると青ざめながら許可をだし、馬車を手配してくれた。
「歳を重ねるたびに荒んで行くものはなーんだ?」
「人間」
「正解」
「目の前の利益のために後先考えずに環境破壊を繰り返す無能な生き物はなーんだ?」
「人間」
「正解」
「命を大切にしろとか言いながら雑草をむしると言う矛盾した暴挙に出る生き物はなーんだ?」
「人間」
「正解」
「ねえ?やめよう。こんななぞなぞもどき。これ以上やったら鬱になるよ。」
あ