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幸運値999の私、【即死魔法】が絶対に成功するので世界最強です  作者: 万野みずき
第三章

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第七十七話 「真相」


 保健室での話を終えた後、私は学園長室に向かっていた。

 学園長さんから受けた呼び出しに従って、その場所に辿り着くと、そこには……


「えっ……?」


 金髪幼女姿の学園長さんがいた。

 これはまあ予想通り。

 しかしもう数名、学園長さんの他に先生たちも待っていた。

 これは想定外である。

 おまけになんだか物々しい雰囲気が漂っていて、私は思わず足を引いてしまった。


「よく来てくれたなサチ・マルムラード。急に呼び出してしまってすまぬ」


「あ、あの、私って何か悪いことしましたか?」


「んっ? いや、別にそんなことはないが……」


 あぁ、よかったぁ。

 てっきり何か叱られるようなことをしてしまったのかと思った。

 数名の先生たちが学園長室で待っているのだから、生徒としてはそう危惧するのも無理はない。

 しかしだとすると、どうして私はここに呼ばれたのだろうか?

 そう疑問に思ったその時……


「んっ……?」


 学園長室の中心。

 先生たちが囲んでいるそこに、もう一人隠れている“人物”がいるのを見つけた。

 それを目にした私は、思いがけずドクッと心臓を跳ねさせる。


「な、んで……」


 金髪金眼の、二学年の制服を着た男子生徒。

 実の兄である“マイス・グラシエール”が、そこにはいた。

 星華祭本番で暴れて、中止にまで追い込んだ渦中の人物。

 私が拘束魔法で暴走を止めた後、先生たちに連行されていくのは見ていたけど、まさかここに連れて来られていたなんて。

 拘束椅子に座らされて、体全体をがっちり固定されている兄を見ていると、学園長さんが話を始めた。


「サチに来てもらったのは他でもない。今回の暴走の件について、この生徒から少しでも情報を聞き出せぬかと思ってな。他の暴走者たちは意識を失ったままじゃが、なぜかこの者だけは意識がはっきりと残っておるからの。そして万が一にこの者が暴れ出した時、また例の拘束魔法を使って大人しくさせてほしいと思ったのじゃ」


「えっ? 私がですか……?」


「ワシらの魔法でも拘束することはできるが、なにぶん体への影響がそれなりに出てしまう魔法ばかりじゃからな。その点サチの拘束魔法は対象者への負担がまったくと言っていいほどない。加えて拘束時間も意のままじゃ。だから手を貸してもらえたらありがたいと思ったのじゃよ」


 なるほど、それなら確かに私が呼ばれたことも納得ができる。

 ようはマイスの尋問を滞りなく行うための拘束要員ということだ。

 しかし、そんな学園長さんの狙いは……


 むしろ、逆効果に働くことになったのだった。


「サ……チ……!?」


 拘束されて項垂れていたはずのマイスが、私を見た瞬間カッと瞳を開いた。

 直後、手足をガタガタと激しく揺らす。


「サチ! 貴様よくも……! よくも私の邪魔をしたナ……! 才能なしの落ちこぼれがァ……!!!」


「なな、なんじゃなんじゃ!? 急にどうしたというのじゃ……!」


 突然暴れ出したマイスを見て、学園長さんはビクッと華奢な肩を揺らす。

 先生たちも驚いて、急いでマイスの手足にしがみつこうとした。

 一方で私は……


「【賽は投げられた――神の導き――恨むなら己の天命を恨め】――【運命の悪戯(フォル・トゥーナ)】」


 指先をマイスに向けて、拘束魔法の詠唱を行った。

 黄色い光が指先から放たれて、パチンッとマイスの額にぶつかる。

 瞬間、彼の体は痺れたように硬直して、バタつかせていた手足をピタリと止めた。

 これでひとまずは安心だ。

 皆がほっと胸を撫で下ろす中、学園長さんが額の汗を拭いながら問いかけてくる。


「サ、サチと面識があるような反応ではあったが、まさか旧知の仲じゃったのか?」


「うーん、まあ、なんと言いますか……」


 どう説明したらいいだろう?

 別に隠すようなことではないので、言ってしまっても大丈夫かな?

 と考えている私の思考を代弁するように、マイスが辿々しい声で言った。


「サ……チ……! 貴様が、なぜ……ここにいる……! グラシエール家を、追放された愚妹が、なぜ魔術学園に……!」


「……まあ、今お兄ちゃんが全部言ってくれたみたいな感じです」


「な、なるほどな。複雑な家庭事情というやつか。不躾に聞いてしまって申し訳ないの。この場にいる全員、聞かなかったことに……」


「あっ、いや、それは別にいいんですけど」


 今さら実家を追い出されたことなんてどうでもいいし。

 まったく気にしていないというわけではないが、この際みんなには知っておいてもらった方が話が早いだろうからね。

 そんな私の話はどうでもいいとして、話を先に進めてもらうように学園長さんに促した。


「こちらのことは気にせず、どうぞ始めてください」


「そ、そうか。では、改めて事情聴取を執り行う。この者の供述によっては暴走事件の真相が明らかになるやもしれぬしな」


 そう言った学園長さんは、小さな右手を構えてマイスに向けた。


「【不要なる審問――開かれた心の扉――ここは嘘吐きのいない世界】――【忘却された偽りウーブリ・ファクティス】」


 ポワンッと青白い光が学園長さんの右手に灯る。

 それはふわふわと頼りなく空中を漂い、先刻の【運命の悪戯(フォル・トゥーナ)】と同様、マイスの額にパチンッと当たった。

 じわりと青白い光がマイスの体に溶け込んでいくのを見ながら、私は首を傾げる。


「い、今の魔法は……?」


「まだ習ってはおらぬか? 今のは簡単に言えば“自白魔法”じゃな。思っていることが口をついて出てしまうようになるという、聴取には欠かせない魔法の一つじゃよ」


 うわっ、何その魔法……

 色んな意味で怖い魔法なんですけど。

 便利である反面、悪用しようと思ったら色々なことに使えてしまいそうな魔法だ。


「さて、マイス・グラシエールよ。貴重な情報提供者になってもらうぞ。まず最初に聞きたいことは、暴走してしまった原因について何か心当たりはあるか?」


 この場にいる全員が緊張したように息を飲む。

 頻発している魔術師暴走事件の真相。

 今まで謎に包まれたままだったそれが、今回ようやく明らかになるかもしれない。

 もし暴走者本人に原因の心当たりがあればの話ではあるが……

 その可能性に賭けて、事情聴取を始めた学園長さんは、じっとマイスの顔に真剣な眼差しを送る。

 すると、マイスはゆっくりと唇を開けて……


 驚愕の一言を、学園長室に響かせた。


「……ミストラル」


「えっ……?」


「反魔術結社『ミストラル』。連中から、渡された“薬”で、私は強くなった……」


 ミストラル。

 聞き覚えのあるその名に、私の心臓は再び嫌な音を立てた。

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