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幸運値999の私、【即死魔法】が絶対に成功するので世界最強です  作者: 万野みずき
第三章

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第七十四話 「治癒魔法の可能性」


 ポム先生は寝ている人がいる保健室で大笑いをする。

 幸いマロンさんが起きる気配はなく、他に休んでいる生徒もいなかったので咎められることはなかった。


「あぁ、とにかく納得したよ。確かにその魔法ならマロンが綺麗さっぱりな体してんのも不思議じゃねえな。ウチじゃぜってぇ真似できねえことだ」


 ポム先生は再びバンッとこちらの肩を叩きながら、深い笑みを滲ませた。


「ごめんなさい。あまり参考にならなかったですよね」


「いいや、んなことはねえよ。完全治癒魔法の存在を知れただけでも充分さ」


 そう言いながら彼女は自分の両手に目を落として、それをぐっと握りしめる。


「魔法にはまだそれくらいの可能性が残されてる。このまま治癒魔法を突き詰めていけば、いつかは同じことができるようになるかもしれねえ。そんな希望をサチには見せてもらったってわけだ」


 見習いたい前向きさだと思った。

 確かに魔法にはそれだけの可能性があると、示してあげることはできたかもしれない。


「最近は触媒研究の方とかもかなり進んできてな、魔素の色に合わせた触媒とかが開発されてんだ」


「魔素の色?」


「魔素は光物を好む性質があるだろ。それが色によって好みの差異があることが最近わかったみてえでな。赤魔素にはこの宝石、青魔素にはこの宝石、って感じで色に合わせて触媒開発が進められてるって話だ」


「へ、へぇ……」


 魔素にそんな秘密があったんだ。

 でもまあ確かに言われてみると、魔素はそれぞれ性格も違うという話なので、好みに差異があっても違和感はない。

 自分の持っている魔素が、どんな光物が好きなのかを理解することができれば、最も適した触媒を作ることもできるということだ。


「まあ、ウチの白魔素と相性がいい触媒はまだ作られてねえみてえだがな。でもいつかそれが完成したら、さらに強力な治癒魔法が使えるようになる。治癒魔法にはまだまだ色んな可能性があるって教えてもらったしよ、ウチもすげえやる気が出てきたよ」


 ポム先生はそう言うと、改まった様子でこちらを振り向いた。


「だからあんがとな、わざわざ教えに来てくれて。あと、ウチら教師の代わりに生徒を救ってくれて、本当に助かった」


「い、いえ。私はただ、友達を助けただけですから」


 とりあえずは納得してもらえた、のかな?

 保健室の先生に呼ばれていると聞いた時は、いったい何事だろうと少し不安に思ったが、先生の役に立てたのならよかった。

 私もマロンさんの寝顔を見られて安心できたし、保健室に来た甲斐はあったというものだ。


「ところで、なんだけどよぉ……」


「……はい?」


「サチ、おめぇここでウチの“助手”やるつもりはねえか?」


「はっ? 助手?」


 いきなり突拍子もない話を持ちかけられてしまった。

 助手って、保健室の手伝い的なことだろうか?


「サチがいりゃ人手が増えて、ウチも楽できるかもしんねえからな。治癒魔法が得意な白魔素持ちなんてウチくらいしかいねえし、治療活動の手伝いがまともにできる奴なんておめぇくらいしかいねえんだよ。だからウチの助手になってくれ」


「えぇ……」


 いや、学園の助けになるのなら手を貸したいところだけどね。

 でも私には学園依頼とか研究会とか、色々とやることが山積しているのだ。

 保健室の治療活動にまで着手している余裕は、残念ながらない。

 だというのにポム先生は、非行に勧誘する悪い先輩のように、おらおらと私の肩に腕を回して来た。


「ウチの手伝いしてくれたらよ、いつでも保健室のベッドで昼寝させてやるよ。最高のサボり場だぜ」


「ひ、昼寝は確かに魅力的ですけど、授業をサボってまでは来ませんよ」


 なんとも断りづらい雰囲気である。

 と、その時――


 コンコンコンッ。


 やや強めに扉が叩かれて、それが私を助ける救いの手となった。


「あっ、ほらポム先生。お客さんが来たみたいですよ」


「チッ、今いいとこだったのによぉ」


 ポム先生は私の肩から腕を離して、赤髪を掻きながら扉の方に歩いて行く。

 なんとか勧誘から逃れることができて、私はほっと胸を撫で下ろした。

 その流れで、ポム先生がお客さんの対応をしている隙に保健室を後にしようと考えていると……

 ポム先生が面倒くさそうに扉を開けた瞬間、来訪者が慌てた様子で保健室の中に飛び込んで来た。

 その人物を見て、思わず私は足を止めてしまう。


「あっ……」


 鋭い目つきをしている、二十代後半に見える茶髪の美女。

 見覚えのあるその人物は、マロンさんの“お母さん”だった。

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