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幸運値999の私、【即死魔法】が絶対に成功するので世界最強です  作者: 万野みずき
第三章

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第六十二話 「注目の代償」


『またしても一年A組が一位を獲得! 今年の星華祭は、期待の新星が上級生たちを飲み込んでしまうのだろうか!』


 魔球入魂(モンスターバッグ)が終わった後のこと。

 マイス・グラシエールは二年C組が集まる応援席の隅で、そんな放送を聞きながら舌打ちを漏らしていた。


「…………チッ」


 明らかに不機嫌なその様子に、クラスメイトたちは萎縮してしまう。

 すると先ほど一緒に魔球入魂(モンスターバッグ)に出場した生徒たちが、恐る恐るといった様子でマイスに声を掛けた。


「あ、あの、ごめんねマイス君」


「俺たち、マイスの足を引っ張ってばっかで……」


「……」


 マイスは何も言わずに頭を掻き、憤りが滲んだその行為を見てさらにクラスメイトたちは腰が引ける。

 最後にもう一度頭を下げて、彼らはその場を去っていった。

 マイスが所属する二年C組は、これまで数々の競技で好成績を収めてきた。

 しかしどの競技もあと一歩のところで一位には届かず、悔しい結果が続いている。

 代表者に選ばれたマイスは、その名に恥じぬ活躍を見せて、クラスメイトたちもそんな彼の補助を徹底している。

 それでも結果が振るわないのは、それ以上にあるクラスの活躍が目覚ましいからである。


(一年A組……)


 どの競技においてもこちらの上を行く、まさに期待の新星一年A組。

 すでに何度も二年C組の一位獲得を阻止してきた、宿敵とも言える存在だ。

 まだ一学年でありながら、二年生や三年生にも劣らない優秀な生徒たちが揃っている。

 魔球入魂(モンスターバッグ)でもその才覚を知らしめた、一学年特待生のミルティーユ・グラッセ。

 平民でありながら当学園において歴代でも指折りの魔力値の持ち主であり、強力な氷結魔法を得意としている。

 そして一つ前の競技で一年A組を首位まで押し上げた功労者ポワール・ミュール。

 こちらも魔力値250超えの逸材で、珍しい(おう)魔素を持っている凄腕の雷魔法使いである。

 この二人が出場している競技では、どのクラスも大差をつけられて大敗を喫した。

 他にもあのクラスには腕のいい魔術師が揃っており、どの競技においても高得点を叩き出している。

 そして何よりも、厄介な人物が……


(……マロン・メランジェ)


 一年A組代表者、マロン・メランジェ。

 彼女の功績は凄まじく、代表者として出場した競技ではどれも一位を総なめしている。

 魔力値それ自体は特待生のミルティーユには及んでいないけれど、随所の判断力と知識量が恐ろしい。

 的確に状況を見極めて、最適な魔法を繰り出し、仲間たちの手助けも完璧にこなして一年A組の支柱になっている存在。

 今のところ、今回の星華祭において最も注目を集めている生徒だ。

 代表者同士であるため、マイスは度々マロンと競技でぶつかっている。

 実際に近くで実力を見た者からしても、他の生徒たちとは一線を画する存在というのは直感できた。

 マロン・メランジェが健在な限り、一年A組を崩すことは困難である。


(どうすれば……)


 マイスは頭を抱えて、現状の打開策を考え始めた。

 するとその時、数人の生徒が二年C組の応援席まで戻って来る。


「あっ、訓練場の人たち戻って来たよ」


 訓練場の方で競技をしていた生徒たちが帰って来たらしく、皆はげんなりしている彼らに労いの声を掛けた。


「お疲れ、どうだった?」


「いやぁ、無理無理。やっぱ三年は強えわ。ほとんどの競技の点数、三年に持ってかれちまったよ」


 それを聞いていたマイスは不意に立ち上がり、前のめりな様子でその彼に問いかける。


「一年A組は?」


「えっ、一年? さ、さあ……? 何人かすげえのはいた気がするけど、結局最終的な総合成績は、三年が上位を占めてたからなぁ」


「……」


 どうやら訓練場の方ではそこまで目立った印象はなかったらしく、貫禄の強さを発揮した三年生の方が注目を集めていたらしい。

 確かに結果を聞いても、どの競技も三年生のクラスが上位を独占している。


「一年A組は確かに脅威だけど、やっぱ代表者のマロン・メランジェがいる時が一番やばいってことだろ」


「ここまで出て来た競技、全部一位らしいからな」


「逆に言えば、訓練場の方の競技なら得点差を埋められるってことだろ? そこで取り返していけば、三日目はAグループに進出できるんじゃねえか?」


 その時、一人のクラスメイトが前に出て来て、たった今思いついたように言った。


「じゃあ、マイスとマロンの出る競技を被らせないように、今から変更の手続きするか……?」


「……」


 それを聞いたマイスは、ピクッと眉を動かす。

 ふつふつと沸いてくる憤りに任せて、彼はクラスメイトの一人に食ってかかった。


「それはつまり、私に逃げろと言っているのか」


「あっ、いや、そういうつもりで言ったわけじゃねえよ……! マロンのいる一年A組に点取られるくらいなら、マイスには別のところに出てもらって、確実に点数を獲得した方がいいんじゃねえかって思っただけだ」


 その彼は慌てて補足する。


「俺らがマイスの足を引っ張っちまってるから、マロンのいる競技には勝てないってだけで、マイスがマロンに劣ってるとは微塵も思ってねえよ」


「……」


 不穏な空気が二年C組のクラス内に漂う。

 そこをまた別の生徒が声を上げたことで、なんとか嫌な雰囲気を打ち消すことができた。


「ま、まあ、“やむを得ない理由”がない限りは、参加競技の変更はできない決まりになってるからな。それも難しいんじゃないか」


「そ、そう……だよな」


 結局、競技は今の編成のまま参加することになり、この話は落ち着きを見た。

 その後、マイスは再び端の席に戻って頭を抱える。

 このままでは星華祭の優勝を勝ち取るのは難しい。

 マロン・メランジェ率いる一年A組が脅威なことに間違いはないが、それ以外にも熟練の三年生たちが各競技で上位を連取している。

 下手をすれば、三日目にAグループの進出が叶うかどうかも危うい状況だ。


(優勝は、必ず私が勝ち取ってみせる……!)


 それから競技が再開されて、星華祭の一日目はつつがなく終了した。

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