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魔法主体のゲーム世界で魔力0

続×2【すぴんおふ】・魔法主体のゲーム世界で魔力0 〜副団長ロリコン疑惑〜

作者: 大貞ハル

「魔法主体のゲーム世界で魔力0」のジークフリートの話です

王城の一角に設えられた近衛騎士団の訓練所にて近衛騎士団副団長ジークフリート・ニーベリが素振りをしていた。時間はまだ早く、何人かの団員が準備体操をしているが、人は少ない。


「相変わらず精が出ますね」


話しかけたのは近衛騎士のマルグレット・イェフォーシュ。

騎士なので剣も使えるがどちらかと言えば魔法主体の女性騎士だ。

ちなみに、完全な魔法職の人たちは騎士ではなく王宮魔道士などと呼ばれる。

マルグレットの職業だと、どちらでも良い、と言う感じの適性だ。


「お前も相変わらず早いな」

「ええ、まあ」


ジークフリートが早くからいるからだ、とは言えないマルグレットだった。


ジークフリートは副団長ではあるが、戦闘力に関してはおそらく騎士団最強だろう。

ただそれは単独での戦闘力に関して言えば、だ。

兵を率いる能力と言う意味で言えば団長であるトゥーマス・ルーマンが適任だろう。


近衛騎士団副団長、などと言えば聞こえが良いが騎士自体は国王の所有物であり、団長は騎士団のトップと言うよりは部隊長くらいの感覚で、先頭に立って戦うこともあるため、その護衛をするのがジークフリートだ。トゥーマスとて戦闘においてもただ者ではないが。


息を整え振っていた剣を鞘に収めたジークフリートにマルグレットが問いかける。


「やはり、例の少女との勝負が気にかかってるのでしょうか…」


ちょうど王城を離れていたマルグレットは見ていないが、ジークフリートが結婚をかけて年端もいかない少女と勝負をしたと言う噂がまことしやかに囁かれていた。これまで女性に興味を示さなかった副団長の奇行に、勝負に乗り気でない少女をその気にさせるために言っただけだと言う意見と、副団長はロリコンと言う意見で二分されていた。


「少女と言っても彼女は成人済みだがな。外観は確かに君に比べたらだいぶ子供の様だったが」


マルグレットは長身で妖艶な女性だ。剣も使うため引き締まっているが、女性的な部分も強く表に出ている。対してその少女、ティナは長身で逞しいジークフリートと並んだら完全に犯罪だと噂だった。そもそもアラサーと15歳では倍近く離れているわけだが。

この世界の近接職はなんだかんだ言って魔法に頼っているため実際にはそこまで体格が良くなくても構わないのだが、近接職は身体強化魔法が必須で、どうやらその魔法には少なからず成長促進作用があり、能力に比例して体格が良くなる傾向があった。


ティナの様に見た目が子供のまま尋常ではない戦闘力を持つ、と言うのは珍しい。


「そんなに、その方を気に入ったのですか?」

「どちらかと言えば、彼女との戦いにおいて自分の力の曖昧さに気がついたと言うべきか」

「副団長の強さが曖昧、ですか?」


ジークフリートは努力の人だ。剣技も何もなくとも魔法を使えば達人級の動きが出来る様になるこの世界で鍛錬に励み、魔法の修行も続けてきた。誰もが認める分かりやすい最強の男だ。


「そうだな、ちょっと私に向けて訓練用の魔弾を撃ってくれるか? 追尾しないやつが良い」

「は? はあ」


訓練用の魔弾、と言うものが実際にあるわけではない。

要はしくじっても防御力を超えてダメージが入らない弱い魔法と言う意味だ。


とは言え、ジークフリート相手ではマルグレットでも相当気合入れなければどれも訓練用になってしまうわけだが。


マルグレットは渋々距離をあけると両手を広げていかにも当ててみろと言わんばかりのジークフリートに魔法を放った。


この世界の魔法は簡単な呪文を唱えるだけで即発動出来る。

物によっては唱え終わる前に出てしまう。


その代わり、リキャストが発生する。

1回目の魔法で大量の魔力を消費するが、魔法使用によって出来たフィールド内で唱えた魔法は消費魔力が少なくなり再使用までの時間や魔力回復にかかる時間も短くなるため、連続で使用するときはタイミング良く的確な魔法を選んで詠唱することでそれが出来ない人間とは圧倒的なパフォーマンスの差を得ることができる。


魔力の絶対量は術者の努力がそのまま反映される。簡単に言えばレベルが上がれば魔力量が増える。当然、上に行けば行くほど伸び代は減るが。ジークフリートに至っては、純粋な魔法職の一般的な量の3倍近い魔力量を誇る。


1人での戦いでは補助魔法などを自分で行う関係から、そこまで圧倒的な量ではないが、味方が居て、サポートしてもらえるのであれば剣で戦いながら攻撃魔法を使う、などと言うこともお手の物だ。


閑話休題


マルグレットは魔弾が放たれる瞬間に違和感を感じた。

3発の魔弾が右に逸れて行く。

ジークフリートの手前で魔弾ははじけて消えた。


「え?」

「いま、左手に魔力を集中させていた」

「魔力を?」

「そうだ」


マルグレットは魔力を何処かに集中するなどと言うことは考えたことも無かった。

そもそも魔法は勝手に出る物で、どうして使えるのかすら普通は考えない。


「いままで自分で狙って攻撃していたと思っていたのは、魔法が相手の魔力を検知して勝手に攻撃していたにすぎない。剣もそうだ。自分の腕だと思っていたのは実際には魔法によって補正されたことで得られた切れ味だった、としたら?」

「え? でも…」

「そう。これまで何も問題なかったし、これからも、気にするまでもない事かもしれない…」

「………」


『あの、私はもう、冒険者稼業に戻りたいんですけを』

『けを?』


引き留めようとする王女を振り切って逃げようとするティナを思い出す。


「そう言う意味で言えば、彼女とずっと一緒に要られたら、それはそれで良かったのかもしれないな」


ジークフリートは脳筋気味なので騎士と言う役目がなければ冒険者になって、より高みを目指しても良かったかもしれない、と言う妄想をしていたが、マルグレットはその横顔を違う意味にとって焦りを感じるのだった。





思いは届くんですかね(オ

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